年末年始などには遠方の義実家に帰省をする方も多いのではないでしょうか。結婚して親子の関係になったとはいえ、やはり元は他人なのだな… と認識の違いを感じることもありますよね。今回はそんな義母との出来事をお話します。
義母からのプレゼント
息子が8カ月の頃、遠方に住む義実家に、私・夫・息子の3人で帰省をしました。到着後、夫は渋滞疲れのため別の部屋に仮眠をとりに行き、私と息子・義母で過ごしていました。
とても嬉しそうな表情をした義母が、息子に小さな箱を渡します。眉間にしわを寄せながらも、手を出してそれを受け取る息子。見ると、10本ほど入ったクレヨンでした。原材料が食品由来のものでできていて、『赤ちゃんが口に入れても安全』なのだそう。
「これすごいのよ! 今はこんなものがあるのねぇ!」と義母は得意げでした。8カ月の息子はまさになんでも口に入れてしまう時期。このようなクレヨンがあることを知らなかった私は驚きながら、息子のことを考えてくれている義母に感謝したのでした。
クレヨンに興味をもつ息子
義母は早速画用紙を用意し、クレヨンを取り出しました。息子も興味があるようで、少々警戒しつつも義母の膝の上に座りました。人見知り中の孫をすぐに抱っこできた義母は大喜び。
「買ってきてよかったわぁ!」とニコニコでした。
まずは青いクレヨンを息子に握らせ、義母がその手を上から包み込む形で何か描かせようとします。しかし、描くということがまだわからないため、クレヨン本体に興味津々。右、左と持ち替えたり、口に入れようとしたりします。
「ふふ、かじらないよ! こうやって、ぐるぐる描くんだよ!」私はそう言って、お手本を見せながら描き方を教えてると、
「あらあら。止めなくてもいいじゃない。食べても大丈夫なクレヨンなんだから!」義母の言葉を、そのときの私は聞き流してしまったのです…。
義母がクレヨンを食べさせている?!
抱っこをしていた息子が離れたので、私は我慢していたトイレに行きました。しばらくして部屋に戻り、ふと息子を見るととんでもない光景が!
なんと、息子がクレヨンを両手に掴み、まるで大好きなベビーせんべいを食べるように夢中でかじっているのです。既に他の色も食べているようで、テーブルの上には砕けたクレヨンの破片が散乱。口の周りは黒く汚れ、生えたばかりの歯の隙間には赤と緑のクレヨンが挟まっています。
私は部屋の入口で立ったまま唖然。隣には嬉しそうな笑顔で見守る義母の姿があり、止めるどころかまだかじっていない別の色を渡したり、
「どう? 美味しいかな?」なんて話しかけたりしているのです。
「ちょっと…! お義母さん!?」
慌てて止めに入ると、
「大丈夫よ。食べられるクレヨンなんだから!」と義母は言います。食べられるって… ムシャムシャ食べられるわけじゃないでしょう!? と、食べやすいように紙まで剥がしている義母に対して思いました。
焦りながらも言葉を選びつつ、
「“万が一口に入っても害はない”のであって、“お菓子のように食べられる”のではないと思います」と伝えましたが、義母はピンと来ないようです。思い切って、
「食べてしまっても大丈夫かもしれませんが、積極的に食べさせたくはないです」と言うと、笑顔だった義母の表情はみるみるうちにこわばり…。
「食べても大丈夫って書いてあるじゃないの! 神経質ね!」と言われました。
結局、怒ってしまった義母がクレヨンを全て片付けたのでこれ以上揉めることはなかったのですが、帰省中の数日間、気まずい雰囲気が続いたのは言うまでもありません。
安全とはいえ結構な量を食べてしまったため、体調を心配しましたが、いつもと変わらない様子の息子にホッとしました。しかし次の日に出たウンチは、カラフルとまではいかないものの、様々な色のクレヨンの残骸が混ざった異様なものでした…。
“口に入れても安全”という部分の認識のズレが招いてしまった今回の出来事。友人に話すととても驚かれるので、私は間違っていなかったのだな、と思えたことがせめてもの救いです。
(ファンファン福岡公式ライター/さとう なつこ)