フクリパは福岡市の「一人一花運動」のメディアパートナーをさせていただいています。様々な角度からこの活動の魅力をお届けしていますが、今回は、大学生ライターの樋口純玲さんが、ふと気になったことをきっかけに、「一人一花」の魅力をひも解いてくれました。
こんにちは。福岡大学商学部・飛田ゼミ所属の3年生、樋口純玲です。社会人の皆さんは新型コロナウイルスの影響で仕事がリモートワークになり、おうち時間が増えてきたことと思います。私も今年度は授業がすべてオンラインになり、一日の半分以上はパソコンの前に座っている状態でした。
そんな中で、おうち時間を快適に過ごせるように植物や花に目を向けた人は多いと思います。おうちにいる時間が長くなればなるほど、気になるところを片付けたり、お花を買ってきて活けてみたり。私もその一人です。 そこで、お花に興味を持つ人がコロナ以降に増えたのかを調査すべく、「元気で活きのいい植物&マルシェオニヅカ」代表取締役社長の井上盛博さんにお話を伺いに行ってみました。
「元気で活きのいい植物&マルシェオニヅカ」は朝倉郡筑前町の田んぼの真ん中にあり、店内はまさに植物とお花のテーマパークのようでたくさんの植物であふれていました。そんな華やかな店の店長を務めていらっしゃる井上さんに話を聞くことができるということで、ワクワクしながら早速井上さんが園芸に携わるようになった経緯から花によって与えられる効果までたくさんのお話を伺いました。
新型コロナウイルスの影響で園芸の需要は増えたのか?
―まず、井上さんがなぜ園芸のお仕事をしようと思われたのか、きっかけを教えていただきたいです。 井上さん 「高校の時に親戚が花屋さんで働いていて、サポートに入ってくれと言われてアルバイトにいったんです。当時はなにも答えられなくて、やれと言われたことをやるだけだったけどなんか楽しくて、花の知識を答えられる人ってシンプルにかっこいいなと思うようになったんですよ。 それが花に関わることをしたいと思うようになったきっかけですね。そこからは花に関係する大学に行きましたが、ゴリゴリの理系の大学だったので、花の仕組みなどの研究がメインで、花を売ったり加工したりという勉強は大学ではしてないですね。 就活で花を作っている農業生産法人が集まる説明会が東京・大阪・福岡であったので、そこで探しました。福岡の説明会に行ったときに「オニヅカバイオシステム」という社名だったので、ひと際目立っていたんです。今から会社を一緒に作ってくれる元気のいい人を探しているということで、何も花について知らないから自分に合っていると思い、第一号の社員として就職しました。アメリカに1年海外留学をして農業研修を受けたのちに就職という形でした。」
―アメリカではどのようなことをされたのですか? 井上さん 「国際農業者交流協会という50年近くの歴史ある交流だったんです。アメリカに行って、1か月は大学に行って英語を学んで、そのあと全米の各地に行って自分たちが思う研修先で学び、最後の2か月はカルフォルニアに集合してホームステイしながら学校で、今後の農業計画をプレゼンして卒業するというなかなかタイトでスリムな経験でした。」
―なかなか大変な研修ですね。そのときの経験が今生きていると実感することはありますか? 井上さん 「そうですね。まあ自分から意見を言って、行動してということは大事にしていますね。この経験から、アメリカの農業精神を学んできてほしいというオニヅカさんの想いがあったみたいですよ。帰ってきてからは、朝倉で花を育てたり生産したりして卸業者として運営をしていました。そのうち近所人がお花を買いに来てくれるようになりました。直売できるのは作っているお花だけだったので、少しでも良いものにみせて価値の高いものとして見られるようにする手法として寄せ植えを考え出しました。」
―それで寄せ植えを始めたんですね!! 井上さん 「私は、決してセンスが良いというわけではないです。誰よりもたくさん植えているし、植物を触っているという自信があります。だからよりよい見せ方を知っているというだけなんです。結論、志とやる気と継続が大事なんです。」
―長く植物に触れてきた井上さんにとって、花にはどんな魅力があるのか教えてください。 井上さん 「そうですね。一人ひとりの生活スタイルや個性にあった花や植物って絶対あると思うんです。育てるのはもちろん、鑑賞するだけでもいいのですが、「好きだな」と思える植物は誰にも一つはあると思っていて、植物には何億という種類があるからこそ、その一つが見つかると思っていますし、暮らしをサポートしてくれる存在だなと感じます。 コロナ禍になってみんながそのことに気づいてきて、「なんだか家が殺風景でさみしいな」と思うようになって植物を買いにくるお客さんは増えましたね。」 ─体感としてはどのくらい増えましたか? 井上さん 「初めてきてくれるお客さんは二、三割増えました。あとは、前からきてくれている人の頻度が増えて、久しぶりの人も来るようになりましたね。あと、たくさんの人に知ってもらうようにYouTubeを初めたので、YouTubeを見てから来てくれる人も増えて、よく話しかけられるようになりました。狙っている客層は地域のみなさんですね。せっかくコロナで需要があがったので、花を育てることは楽しそうだなと思ってもらえるようにする必要があると思うので、店内では笑顔でいるなど雰囲気づくりをしています。あと初めて花を育てる人に視点を合わせて店内づくりも行っています。」
―コロナ禍で、お客さんが増えたと思うのですが、花によって与えられる効果は何だと思いますか? 井上さん 「まずは、癒しですね。花を見ているときって、気持ちが華やかになると思うんです。花をみて「きれいだな」と思っている瞬間っていやなことを忘れているんですよ。だから、植物は人の暮らしを豊かにするんだということを再発見しました。」 たしかにお花畑に行ったときは、心も豊かになって非現実な世界を味わえますよね。「地域の人に愛されるお店づくりをして、植物の魅力をもっといろいろな方に知ってもらいたい。」とおっしゃっていた井上さん、ありがとうございました。
元気で活きのいい植物&マルシェオニヅカ 本店
〒838-0214 福岡県朝倉郡筑前町東小田1291
オニヅカさんの福岡市内のショップにもお邪魔しました!
「元気で活きのいい植物&マルシェオニヅカ」はMARK IS福岡ももちの2階TSUTAYA BOOKSTORE内にも「IDEAL 植物生活oniduka-style」という支店があるということで、そちらの店長の山下さんにもお話を伺ってみました。
緑あふれる店内で、おしゃれな観葉植物がたくさんあって360度楽しめる空間でした。 ―今日はよろしくお願いします。早速なのですが、このショップに来るお客さんはどのような人が多いですか? 山下さん 「20代ぐらいの若い方から60代まで幅広い層の方に来ていただいていますね。」 ―人数的に新型コロナウイルスの影響で増えたという印象はありますか? 山下さん 「そうですね。おうち時間ということで家の中で趣味を始めようと来られる方が多いですね。テーブルサイズの小さな観葉植物やおうちに飾る雑貨としてのお花を買いに来られます。すぐに飾ることのできる鉢に入った観葉植物やドライフラワーがよく売れます。」 ―このお店はどのようなコンセプトなのですか? 山下さん 「『理想的な生活には植物を』をテーマにして、お庭でもおうちの中でも楽しめるような観葉植物を中心に置いています。」
―植物の魅力はずばり何であるとお考えですか? 山下さん 「植物は育った環境とかでも変わってくるので、形や色が一つひとつ違います。その植物の個性の違いを見て楽しめるところですかね。どの鉢に入れるかによって雰囲気がガラッと変わるので、自分の家にあった好みの植物にすることもできるのでとても良いなと思います。」 山下さんありがとうございました。
IDEAL 植物生活oniduka-style
〒810-8639 福岡県福岡市中央区地行浜2-2-1
福岡の街には最近花がたくさん植えてある、その理由とは?
井上さん、山下さんにお話を伺って、花を見ている時間は嫌な事を忘れているし、植物によって暮らしが豊かになるということから「植物ってやっぱりいいな」と感じました。そう思うようになって、改めて天神や渡辺通を通った時に周りを見ながら歩いていると、花がやたらと植えてあるなということに気づきました。 また、大濠公園に行ったときにボート乗り場前の花壇が普通の花壇とは違ってたくさんの種類の花と草が植えてあり、誰がデザインでされているのかが気になりました。そこで、花壇を整備している大濠公園ガーデニングクラブの花栗美百合さんにお話を伺いました。 花栗さんがこの活動を始めたきっかけは、平成14年頃大濠公園を訪れた際、園内の花壇が全て雑草に覆われたまま放置されていて、手入れがされていない状態だったことにはじまります。「福岡県を代表する公園がこのような状態で良いのか」と疑問を持ち福岡県に話に行き、花壇整備のボランティア活動を始めることとなったそうです。
―大濠公園の花壇づくりでこだわっている点を教えてください。 花栗さん 「花壇に何を植えるかを決めるときには、真ん中からベースグリーン、ベースフラワー、グランドカバー、サイドフラワーの順に考えています。その花壇の主体となるベースグリーンの植物を決めたうえで、ベースフラワーを決めています。これは多年草だから、枯れた葉を切ったり、花がでて見栄えがよくなるように上にかぶさっている葉を切ったりして手入れをするだけで、四季を通じて全体が大きく崩れることなく、花が咲き続けることができる。 そして、それぞれの花壇にあったグランドカバーを絨毯みたいになるように植えて、時期にあった一年草の花をサイドに植えていっているんです。」 ―なるほど。順番にバランスを考えながら、なにを植えるのか決めているのですね。テーマとかはあるのですか? 花栗さん 「B花壇とD花壇はおしゃれなお姉さんをコンセプトにしていて、C花壇は伝統的な昔ながらの田舎のコテージガーデンをコンセプトにしています。A花壇とE花壇は、ビビットカラーのお花を植えたカラフルガーデンになっています。だから、植物を買うときはそれぞれのコンセプトにあった花を買って植えていますね。 全部同じような花壇にするのではなくて、それぞれの花壇に物語があってそのためにコンセプトがあるということなんです。」
花栗さん 「花を植えて育てて終わりではないと思っています。そこに自分の思いも入るし、花の育て方がどういうものなのか、同じ植物ですが、多年草は毎年毎年逢えるから思い入れが積み重なっていく。そこが多年草と一年草のちがいで、この多年草の育て方が楽しいから、私はこのような花壇のデザインでやっているんです。」 毎年逢うからこそ、愛着がわいて自分の子供のように気になってしまう。「今年はあまり花が咲かなかった。どうしたんだろう、、」という風に植物と会話しながら活動ができるというのは多年草のおもしろいところだなと思いました。 ―参加されている方は、みなさんが活動されているところをみて自分もしてみたいと思って始められる方が多いんですか? 花栗さん 「半分はそうですね。いつもマラソンとかで大濠公園にきていて、きれいにいつも手入れしているなということで気になって、活動に参加される方もいらっしゃいます。自分でもできるのかなといってこられるんですけど、作業は覚えたら簡単なので初心者でもすぐにできるようになります。小学生の参加者もいるんですよ。」 ―そうなんですね。やはりここまできれいに整備されていて、一種類ではなく、たくさんの植物がバランスよく植えてあると気になってしまいますね。 花栗さん 「百合が咲いている時期は、大濠公園で走っている人から「百合を見るためにもう一周がんばってきます」と言ってくれる人もいて、花は走っている人の支えになっているなと思いますね。やっぱり花って人を繋ぐんですよね。大濠公園で歩いている人など全然知らない人でも、「これはなんていう名前なのですか」「どうしてこんなにきれいなんですか」などお花を通して自然にコミュニケーションが取れるようになるんです。人と人が近い距離感で話せるのは、お花の効果だと思います。 だから、高島市長の一人一花の考え方にはとても共感しています。花を通してたくさんの人とつながりあって助け合えるようになれば良いなと思っています。」 花栗さん、大濠公園ガーデニングクラブのみなさんありがとうございました。
大濠公園ガーデニングクラブの方々です。実は、取材日の前週に雨のため作業が中止した代わりに行われた活動に参加させていただきました。みなさんとてもやさしく私を迎え入れてくださり、たくさんの花の豆知識を教えていただきました。
⬆︎その花壇に何が植えているのかが携帯でQRコードをかざすと一覧で出てくるようになっているそうです。この花きれいだけど名前が分からない!というときに、すぐに花の名前を知ることができるので、花に詳しくない人も楽しむことができますね!
一人一花って何?
これまで、花に関わる方々に取材を行ってきましたが、福岡市に花があふれてきているのは、実は福岡市が取り組んでいる一人一花運動であることを知りました。 そこで、昨年の10月27日に行われた『一人一花サミット』の記者会見が福岡市動植物園にて行われるということで、私もお邪魔させていただきました。初めて記者会見という場に参加させていただくので、どのような雰囲気で行われているのか興味津々でした。 この記者会見では、「一人一花サミットオンライン」が開催されることと市内の公共の場にある「フラワーポット」を新しいものにするという二つの情報が発表されました。
―では一人一花とはいったい何なのか 高島市長がアメリカのポートランド市を訪れた際、福岡より小さいにもかかわらず、花であふれた街並みで、非常に感激を受けたことがきっかけだそうです。そこで、市民・企業・行政一人ひとりが、福岡市のありとあらゆる場所での花づくりを通じて、人のつながりや心を豊かにし、まちの魅力や価値を高める、花によるまちづくりを目指す取り組み、それが『一人一花運動』です。
今回井上さん、山下さん、花栗さんにお話を伺ってきて、何気ない日常でもお花や植物を見ることで、いやな時間を忘れられたり、心が華やかになったりとよい影響を受けているなと感じました。お花や植物を通じて人と人が自然にコミュニケーションがとれるようになる。ますます植物の魅力に惹かれる取材となりました。「花は勝手にきれいに咲いているわけではなく、きれいな花には必ず人の手が入っている」と高島市長がおっしゃっていたように、花壇一つひとつに日ごろから整備している人の想いがあるということを忘れずに過ごしていきたいと思います。 皆さんも福岡の街を歩く際は、花壇に一人一花という看板が立っていると思うので、見てみてください。 文=樋口純玲