福岡の書店員さんに福岡ゆかりの本を紹介してもらうファンファン福岡の「福岡キミスイ本」シリーズ。51回目は天狼院書店「福岡天狼院」（福岡市中央区）の田中公美子さんを訪ねました。あわせて、この時期に読みたい話題の7冊を紹介します。
福岡県出身の作者が描く、福岡が舞台の恋愛小説
「もしも、私があなただったら」白石一文著
―こんにちは！ 今回田中さんが紹介されるのはどんな本でしょうか？
白石一文さんの「もしも、私があなただったら」（2020年5月文藝春秋発行、781円、税込み）です。簡単なあらすじとしては、東京の会社を辞めて福岡に戻ってきた主人公が小さなバーを経営するのですが、そこに元同僚の妻が現れる…という大人の恋愛小説です。作者が福岡県出身で、福岡市中央区周辺が舞台になっています。大名地区や大濠公園などが描かれていて、すごく身近に感じる作品です。
―この本を知ったきっかけは？
白石一文さんの作品は読んだことがなかったのですが、福岡の作家ということでお客様からオススメされたことがきっかけで手に取りました。実際にこの本を読んでみて、思ったよりも福岡のことが描かれていて驚きました。福岡県西方沖地震など実際にあった事柄も描かれているので、福岡県民が読むとリアルに想像しながら読み進められると思います。
―気に入っている場面や、印象的なセリフはありますか？
相手の女性の「あなたの子どもが産みたい」という衝撃的な対面から始まるのですが、後に主人公が「僕はこの人が好きなんだな」と気づく場面があります。どうして好きになったのか分からない“恋愛の曖昧さ”や、2人が心を通わせていく“ロマンチックさ”が絶妙に表現されているところが面白いなと思いました。もちろん恋愛の甘い要素だけでなく、ある疑念やすれ違いなど、ドキドキハラハラする点も見どころです。
―この本をどんな人にオススメしたいですか？
主人公が40代になるのですが、それよりも少し下の20代〜30代くらいの人が読んでも面白く感じるのではないかなと思います。主人公の恋は、言ってしまえばかつての元同僚の妻との不倫なので、家族がいる立場で読むとちょっと感情移入がしにくいかもしれません。また、主人公（男性）視点で語られているので、男性でも読みやすい恋愛小説だと思います。
―天狼院書店「福岡天狼院」について教えてください。
当店は2015年9月にオープンし、今年で8年を迎える書店です。主にビジネス書や自己啓発本をはじめ、小説、文芸系の書籍を取り扱っています。社長がビジネス書をよく読むので、ビジネス書の新刊を毎月入れています。また「読書会」といったイベントやカメラ・ライティング系の講座を開催しているほか、本のタイトルが隠された「秘本」の販売も行っています。
―さまざまな本がそろうほか、ユニークな取り組みをされているのですね！ 同店はカフェ利用もできるのですか？
はい。席数は約30席あり、こたつ席のほか、ゆっくりくつろげる“堕落部屋”があります。Wi-Fiやコンセントも完備しているため、ワークスペースとして利用される方も多い印象です（ワンオーダー制）。「元彼が好きだったバターチキンカレー」など、カフェメニューも充実しているのでランチ利用にもオススメです！
―本の購入に加え、“本の交換”も可能と伺いましたが…？
書籍販売とは別に「いれかえ文庫」という取り組みをしています。手持ちの本と「いれかえ文庫」の棚に置いてある気に入った本を無料で交換できるという仕組みです。文庫本であれば交換可能なので、読み終わった本などがあればぜひ持ってきてください。
―ありがとうございました。「いれかえ文庫」一度利用してみたくなりました。続いて話題の7冊を紹介します。
「もうじきたべられるぼく」【中央公論新社】
はせがわゆうじ著／1,540円（税込み）
TikTokで300万回再生された、ある子牛の動画が絵本になりました。「たべられること」を受け入れた“ぼく”が最後にしたかったこととは。あなたの「いただきます」が変わります。
「体を冷やせば健康になる」【光文社】
南雲吉則著／1,760円（税込み）
テレビなどでもおなじみの医師の新刊。38歳の時に体重80kgあったのが、67歳で適正体重に。腰痛などから解放されて50代に間違えられるほど生き生きとしているそう。若返りの秘けつは「寒さ刺激」、「空腹」、「有酸素運動」、「睡眠」と本書。寒さによる刺激で免疫力を上げた自らの実践内容が詰まった一冊です。
「日本はこうしてつくられた ３」【小学館】
安部龍太郎著／1,320円（税込み）
戦国日本を救ったのは徳川家康なのか？ 大土木工事を敢行して江戸を世界的な大都市としたのも家康の功績なのか？
直木賞作家の著者が、九州、北陸、関東の関連史跡を実際に歩きながら俯瞰する歴史紀行。「戦国最後の戦い」＝島原の乱で終結するまでの歴史を概観します。東京駅至近の八重洲で発見されたキリシタン墓など最新知見も詰まった一冊。
「怖いほど運が向いてくる！四柱推命【決定版】」【青春出版社】
水晶玉子著／1,980円（税込み）
人気占い師・ゲッターズ飯田さんも推薦！ テレビ出演でタレントを占い、次々と運命を言い当てた著者が「占いの帝王」と呼ばれる「四柱推命」をわかりやすく解説した一冊。1年ごと、10年ごとの運気の移り変わり、人生の転機とその乗り越え方、気になる人との相性など、人生に幸運を呼び込むヒントが詰まっています。
「大きな字で脳活性！川島隆太教授のらくらく脳ドリル６０日 ＶОＬ．５」【学研】
川島隆太 監修／968円（税込み）
シリーズ累計5万部突破！ 脳トレの第一人者、川島隆太教授のパズル本シリーズ最新刊。パズルを解くだけで前頭葉の血流がアップし、脳が活性化するとか。大きな字で見やすく、答えが書きやすいので無理なく毎日続けられます。間違い探し、言葉や数字のパズルなど、楽しく遊べる問題で記憶力・注意力・認知力・情報処理力をアップさせませんか？
「死に方がわからない」【双葉社】
門賀美央子著／1,815円（税込み）
「ひとりっ子親なし配偶者なし子なし」のひとり暮らしが増えている昨今、いつなんどき部屋で不幸にも亡くなってしまうという、孤独死ならぬ孤立死をしてしまうかわかりません。本書は、ボッチのみなさんがいかに部屋で腐らず、綺麗に人生を閉じるかを、実例を挙げながらユーモアあふれる文章で指南する”実用エッセイ”です。
「これ、台所でつくれます。」【農文協】
農文協 編／1,650円（税込み）
発酵ピクルスや自家製酵母を起こしてつくるパン、本場韓国のキムチ、手打ち麺でつくるラーメン、大豆から豆乳をしぼってつくる豆腐から羊腸に詰めるソーセージ、ベーコン、チーズまで家にある道具でつくれる本格的な加工食品を名人たちに教わった一冊。
いかがでしたか？ 年初めに心機一転、新しい本を開いてみては。次回もお楽しみに！
