息子の幼稚園の新人先生は失敗してしまうことがありますが、ひたむきで一生懸命。ところが指導係の先輩先生が新人先生に厳しすぎて、子どもたちや保護者の前でも𠮟りつける場面もありました。そんな時、迎えた節分の行事で見せた子どもたちの優しさとは…。
幼稚園の年長スタート しっかり者サチ先生と新米リカ先生
お正月が明けてしばらくすると、スーパーには豆菓子や鬼のお面など、節分の商品が並びます。毎年、それらを目にするたび、懐かしい記憶がよみがえります。
それは、今やすっかり成長した息子が、まだ幼稚園の年長だった頃。息子の学年は2クラスで、担任は主任兼務のしっかり者サチ先生。そして隣クラスの担任は、新米ほやほやのリカ先生。
サチ先生は
「女の子は揉め事が多くて大変。その点、男の子は単純でかわいい」と、保護者たちの前でも平気で発言するような人。裏表のないハキハキした感じが私は好きでした。息子もサチ先生になつき、全体的に男の子やその親にはウケが良かったです。前述のセリフ通り、サチ先生は男の子びいきだったのかも。
新米先生を泣かせちゃった!?
新学期から数カ月が過ぎた頃。ちらほらと、サチ先生とリカ先生についての話が聞こえてくるようになりました。
「リカ先生がサチ先生に叱られて、廊下の隅で泣いているのを目撃した」
「役員の集まりで、サチ先生がリカ先生のたどたどしい説明を一方的に遮り、その後リカ先生は終始うつむいて気の毒だった…」など。
確かにリカ先生は、行事の際にモタモタしたり、子どもの誘導を間違えたり。けれど、優しいリカ先生は子どもたちに慕われており、保護者たちも、ひたむきで一生懸命な新米先生を温かく見守っていました。
サチ先生は何事も段取りが早く、子どもたちの統率も上手。そんなサチ先生が、リカ先生が失敗するたび厳しく接している様子は、次第に保護者だけでなく、子どもたちの目にも分かるほどに。
口数が少ないタイプの息子から
「リカ先生がこっちの部屋に来て、サチ先生が何か怒って、リカ先生泣きそうだったよ」と聞いた時は、胸が痛みました。
いじわるな鬼を退治する! 子どもたちの純粋な優しさとは
年が明け、やがて迎えた2月3日の節分行事。子どもたちは、色とりどりの厚紙で作った枡に豆を入れ、鬼の登場を待ち構えています。保護者も園庭でわが子の鬼退治の雄姿?! を撮影すべくスタンバイ。
いきなり、遊具の端に隠れていた赤鬼2人と青鬼2人がジャジャーンと登場。思いきり園長と副園長とサチ先生とリカ先生。バレバレの変装ですが、年少さんは怯えて泣く子続出。
さて、わが息子はと目をやると… 息子のクラスと隣のクラス、年長集団が一体となり、もちろん息子も混じってひとりの青鬼を追いかけ回しています。その青鬼は間違いなくサチ先生! 隣のママが呟きました。
「いじわるな鬼は皆で退治。子どもなりの優しさなのかな」
サチ先生はリカ先生をいじめていたわけではないと、親たちは分かっています。ただ、指導方法が厳しすぎたり、相手に伝わらないこともあります。少なくとも、純粋な子どもたちの目には、一生懸命なリカ先生を泣かせるサチ先生は、いじわるに映ったのでしょう。
赤鬼リカ先生が、青鬼サチ先生を追いかける年長集団を慌てて追いかける様子を見ながら、リカ先生がんばれ。サチ先生温かい指導を。子どもたちにはどうか、優しさや思いやりの姿をたくさん見せてやってください。と、願わずにいられなかった私。
そしてひと月後の卒園式では、別れを悲しみ大泣きするリカ先生を隣で静かにいたわるサチ先生の姿が…。子どもたちの思い、きっとサチ先生に伝わったんですね!
(ファンファン福岡公式ライター/山ナオミ)