昆虫が好きな子どもたちにとっては、カブトムシはかっこよくて憧れの昆虫。しかし、昆虫が大の苦手な私にとっては、子どもたちが連れてくる昆虫に四苦八苦。そんなある日恐れていた大事件が! カブトムシvs母の奮闘エピソードです。
例年になくカブトムシが多い夏
長男が保育園の年長、次男が年中、三男が未満児の時でした。子どもたちが通っている保育園には裏山があり、初夏になると朝早く登園した子どもたちが、こぞってカブトムシやクワガタを探すのが恒例です。この年は例年になくカブトムシが多いとあって、うちの息子たちも大興奮。
夕方、保育園へ子どもたちを迎えに行くと、長男の両手に乗った2匹のカブトムシが。
あの黒々としたボディとテカリ、わさわさと手足を動かす動作が、私はどうしても苦手です。
顔をしかめている私に、長男から直球の一言。
「お母ちゃんがカブトムシ嫌いなのはわかってる。でも今日はぜったいに連れて帰る!」と、断固して譲らない様子の息子。
これまでも、家でカブトムシを飼いたいという息子を、何とか阻止してきたのですが、友だちも家で飼っているのに、どうしてうちだけだめなの? という言葉に、いよいよ私が折れることに。
「カブトムシの世話はぜったいに手伝わないよ」と長男に伝えると、
「やったあ!! やっと家で飼える!!」と歓声があがりました。こうして2匹のカブトムシがわが家にやってきました。
息子の思いつきで決めた名前「タロウとミサトのいえ」と書かれた、お菓子の空き箱で作ったカブトムシの家は、玄関の靴棚の上に置かれました。
息子は約束どおり、土が乾かないようにスプレーをかけたり、エサのゼリーをあげたりと、せっせとカブトムシの世話をしました。
その様子を見て、(カブトムシはやっぱり苦手だけど、こんなに喜んで世話をするなら、もっと早く飼うことを許してあげればよかったかな)と思った矢先。
大事件勃発
朝起きてすぐ、カブトムシの様子を見た長男がぽつり。
息子:「あれ? ミサトがおらんよ」
私:「え? いま何て言った?」
息子「だから、1匹どっか行っちゃったかも。あ、箱の横がやぶれてるから、ここから逃げたんだ!」
私:「まじか…。ってことは、ミサトは家の中のどこかにいるってこと!?」と、思わず声が裏返り、
「早く、早くミサトを見つけて〜!!」と叫びながら、キョロキョロと家の中を挙動不審の私。
脱走したミサトの行方を、家族総出で探すものの一向に見つかりません。ミサトが外に逃げていることを一心に祈りつつも、家の中で生息していたら、と考えると、寝ても覚めても生きた心地がしない私でした。
ミサト脱走から3日目の夜
それから3日経った夕食後、家族でテレビを見ていると突然、居間の電気傘の上から、「バタバタバタ」という羽音とともに、黒い物体が飛んできたのです!! 私はあまりの恐怖に声も出ませんでした。すると、すかさず子どもたちの歓声が。
「あ、ミサトだ! おかえり!」
部屋の壁にとまったミサトを、長男が捕まえました。「カブトムシが頭上から突然飛んでくる」という、あまりの恐怖に卒倒しそうになりながらも、これでやっと家の中で落ち着いて過ごせることに、心から安堵しました。
この事件以降、きちんとふたの閉まる大きな水槽を購入し、玄関の外で飼うことになりました。息子たちは、その後もカブトムシ捕りに熱中し、気がつけば水槽はもう一つ増え… この夏、総勢20匹まで増えたのでした。
ここまでくると、昆虫嫌いの私もさすがに見慣れてきましたが、もちろん世話はすべて子どもの仕事。ちなみに名前は、オスは全てタロウ、メスは全てミサト。
夏のおわりに
連日の猛暑で永遠に続くかと思われた夏の空にも、ようやく秋の気配を感じるようになった頃です。
保育園の先生が、カブトムシは夏の終わり頃、土の中に子どもを産み、死んでしまうことを子どもたちに伝えてくれました。
次の日、保育園へ向かう長男は、水槽を抱えていました。
「タロウとミサトは、山に帰すのが一番しあわせだとおもう」あれほどかわいがった20匹ものタロウとミサトは、子どもたちの手で山へ帰っていきました。そんな子どもたちの姿に、カブトムシ(嫌ってごめん)のおかげで子どもたちの成長を感じた夏でした。
(ファンファン福岡公式ライター/モモ☆タロー)