股関節の痛みを「年だから」と諦めていませんか?実は加齢だけでなく遺伝や環境も影響することもあります。股関節の痛みについて諸岡整形外科病院の櫻木高秀先生にお聞きしました。
【整形外科専門医】諸岡整形外科病院 櫻木高秀先生
福岡市出身。琉球大学医学部卒業。大分赤十字病院整形外科、九州医療センター整形外科などを経て2022年より「諸岡整形外科病院」勤務。骨折などの一般外傷、四肢関節疾患など外科的治療だけでなく、リハビリや薬による治療など患者のニーズに応える親身な医療を心がける。
骨盤の臼蓋が浅く、大腿骨頭の被りが浅い
じっとしていると痛くないのに動き始めると痛む、階段の昇り降りが辛いなどの股関節の痛みを「年だから」と諦めていませんか。
当院の統計では、股関節の痛みに悩まされている方の約9割は「変形性股関節症」患者で、さらにその中の8割は「臼蓋形成不全」と呼ばれる生まれつきの骨の形(関節の屋根)が浅い疾患をお持ちです。荷重部が狭いため負荷(体重)がかかり、関節のクッションである軟骨がすり減ることで変形性股関節症の発生リスクが高まります。
特に日本人女性に多く、患者数は男性の5~6倍。原因は遺伝を始め、出産などの要因から、抱っこ紐やおくるみで幼児期の股関節の発育を妨げる環境(発育性股関節形成不全)も影響があるといわれています。
耐用年数が延びた人工関節 新手術技法で歩きを取り戻す
変形性股関節症の症状は、股関節だけでなく「臀部や太もも」に痛みが出ることもあります。病院を受診される方の多くは50代頃から症状がみられており、高齢になるほど外科的手術が必要なほど進行している事が多いです。「家族が早く症状に気づき受診させること」が重要です。
治療は体重コントロールや股関節の周囲筋を鍛えるなどの運動療法やリハビリ、生活環境を洋式(ベッドや椅子)に変えるなどの保存療法から、変形が進んでいる場合は人工関節置換術などの外科的手術となります。
人工関節で最も注意しなければならないのは合併症を起こしやすい「脱臼」。そこで関節包靱帯を切らず、温存しながら人工股関節に置換する「CPPアプローチ」という技法なら脱臼しにくく、術後の回復も早いのが特長です。以前は人工関節の耐用年数は10年~15年といわれており、高齢になってから手術する方がほとんどでしたが、今は若い方も手術に踏み切るほど耐用年数が延びています。
もちろん自分の関節を温存できることが一番です。違和感があれば早期診断・早期診療で「自分で動ける」喜びを感じましょう。