お客の飼い猫の蚤をとって日銭を稼ぐ、江戸時代に実在した猫の“蚤とり”稼業。本作で描かれる“のみとり”とは女性に愛をご奉仕する“添寝業”のことだった…? “のみとり侍”として懸命に生きる主人公・小林寛之進を演じた阿部寛さん、原作に惚れ込んだ鶴橋康夫監督に話を伺いました。
鶴橋監督が約40年間、映画化を熱望し続けたという原作の魅力とは? 監督 原作は江戸時代を探検しているような、作家の探検記を読んでいるような感覚の作品です。よくこんなバカなことを考えるなぁと(笑)。そこが一番惹かれた点ですね。映像化したい原作を本棚に並べているんですが、「蚤とり侍」は捨てられない企画としてずっととってありました。 念願の映画化なのですね。 監督 一切、映像化できないだろうと思っていたところ、(阿部さんを指しながら)この人が見つかって。(阿部さんは)大学の後輩だから若い頃から見てきたんだけど、役者の盛りでもある今の阿部さんに「時は今だぜ」と口説いたら快諾してくれて。映画化の話がザーッと進みました。 監督の熱いラブコールを受けての寛之進役。いかがでしたか? 阿部 原作でもそうだが、武骨で世間知らずで堅い男ですよ。周りの人に救われて人間力を深めていく姿が魅力的でした。潔さや男っぽさが邪魔して、いろんなことに気後れしているところがすごく滑稽で。愛嬌のある男でした。 役作りの苦労点は? 阿部 いただいた台本が面白くて。あえて僕はそれほどコミカルに意識して芝居しないほうがいいと思いました。共演者の皆さんは鶴橋組の常連の方が多くて、皆さん監督の撮りたい映像の理解が速くて。寛之進と同じように、ただついていこうと。 阿部さんの寛之進。監督の評価は? 監督 何百点あげてもいい!阿部寛の魅力は盛り。役者としての盛り、人生の盛り。この盛りを待っていてよかったと思います。彼の人間の良さと真面目さが愚直な寛之進と重なり、愛の人でもある阿部さんありきでなんとか成立しました。面白いと好評だったら、続編作りますよ!(笑) 撮影時の雰囲気は? 阿部 皆さんが本当に監督のことを愛して、信頼していらっしゃると感じました。豊川さんは台本のキャラクターをより深い人物に変えてこられていたのですが、そこに迷いがなかった。そんな清兵衛に引っ張ってもらうのが、すごく気持ちがよかったです。
見どころは? 阿部 豊川さん演じる清兵衛と前田敦子さんが演じるおちえの夫婦のシーンかな。面白いです。あと、派手な衣装で豊川さんと二人で堂々と歩くシーンは、自信に溢れ、清々しさが感じられる大らかなシーンです。 監督 阿部さんと豊川さんのお互いに認めながらも、自分を譲らずに寄り添う2人の演技は好きでしたね。 映画『のみとり侍』 全国東宝系で公開中!
越後長岡藩のエリート侍、小林寛之進(阿部寛)。勘定方書き役として真面目な男だったが、歌会の場で藩主・牧野備前守忠清(松重豊)を怒らせてしまったことから、“のみとり侍”にされてしまう。左遷先での仕事内容は表向き“猫の蚤とり”。だがウラの顔は…。 【監督・脚本】鶴橋康夫 【出演】阿部寛 寺島しのぶ 豊川悦司 斎藤工 風間杜夫 大竹しのぶ 前田敦子 松重豊 桂文枝 (C)2018「のみとり侍」製作委員会