日本では40歳以上の女性の約半数が尿失禁の経験があるといわれています。しかし泌尿器という性質上、診察が恥ずかしいと感じ受診諦めている人もいるのではないでしょうか。尿失禁の原因や診察について薬院ひ尿器科の宮崎啓成先生にお聞きしました。
【泌尿器科専門医】薬院ひ尿器科 宮崎啓成先生
福岡市出身。川崎医科大学卒業。九州大学泌尿器科入局後、原三信病院、九州医療センター、福岡赤十字病院などで研鑽を重ね、2020年薬院ひ尿器科理事長就任。腎尿路結石、前立腺肥大症に対して「最小侵襲治療」をモットーに、患者に寄り添う医療を目指している。
尿もれに悩むことで日々の活動量が低下し、衰えが加速する可能性も
くしゃみをしたり荷物を持ち上げたりしただけで尿が漏れてしまう、排尿が終わったつもりで下着を上げたら染み出してしまうなど、尿失禁は「自分の意志とは関係なく尿がもれてしまう状態のこと」で、日本では40歳以上の女性の約半数が尿失禁の経験があるといわれています。
尿失禁自体は病気ではありませんが、尿もれすることで外出や運動がおっくうになるなどQOLが著しく下がるため「おしっこの違和感」を持ったら、専門医の早期受診をおすすめしています。
しかし、泌尿器という性質上「診察が恥ずかしい」という患者側の戸惑いや「もう年だから」というあきらめからか、女性の受診率はなんと約5%という低さで推移し、問題となっています。
尿失禁の診察は問診がメイン 服薬で穏やかに改善を目指す
尿失禁は大きく4つに分類されます。女性の尿失禁の中で最も多く、お腹に力が入った時に尿が漏れてしまう「腹圧性尿失禁」。特に原因がないのに膀胱が勝手に収縮し、急な尿意で漏らしてしまう「切迫性尿失禁」で過活動膀胱といわれています。これらが二大尿失禁として患者のほとんどを占めています。他に、尿を出したいが出せない、出したくないが漏れてしまう排尿障害「溢流性尿失禁」、運動機能の低下や認知症が原因でトイレに間に合わないタイプの尿失禁「機能性尿失禁」など多岐に及びます。
尿失禁の治療は、丁寧な問診や尿検査を行い、腹圧性尿失禁と診断された場合、当院では女性医師が視診などの後に検査を行います。自由診療となりますが、手術や入院などが不要で、妊娠を希望していても治療可能なレーザー治療(1回99,000円・税込)も選択肢としてあります。切迫性尿失禁の場合、視診は必要なく、患者に合う薬の処方で症状の違和感に対処していきます。
泌尿器科だからと治療をためらったり身構えたりせず、例えば当院のように外科・内科それぞれを担当できる女性医師がいる病院を探すなど、受診へ一歩踏み出していただくことで日々の暮らしをより良くできると考えます。