子育てをしているとつい、心無い言葉をかけてしまうこともありますよね。しかし、勢いに任せた一言がきっかけで、大変な事態になってしまうかもしれません。今回は、息子たちが家出をし、警察に保護されてしまった体験をご紹介します。
なくなった前髪
当時私は4年生と2年生の息子を育てるシングルマザーで、慌ただしい毎日。ある日、仕事から帰った私は長男の顔を見てびっくり! 朝は眉毛の下まであった前髪が、まるで昭和の子どものように根本からないのです。
「その前髪どうしたの!?」
「わかんない…」長男は俯きました。
自分で失敗した? いじめの可能性も!? とパニックです…
「自分で切った?」
「わかんない」
「お友達に切られちゃった?」言葉を選びながら言うと、長男は言いました。
「次男がやった」再び、びっくり。
「え! 喧嘩!?」
「…」
食い違う意見
今度は次男を呼び、聞きます。
「やってないってば」不貞腐れた様子から、嘘ついてる? と感じます。その後いくら話しても暗い表情のまま
「やった」
「やってない」で話になりません。20時半を過ぎ、夕飯も作れずイライラ。
「最後に聞くね。正直に言ってくれたら怒らないよ」そう前置きをし、
「前髪がなくなったのはどうして?」と聞きました。
「次男がやった」
「やってない」
「… もう、知らない!!」思わず強い口調で言い、その場を離れました。
離婚後、一緒にいる時間が激減。一日2時間しか会話ができず学校から注意を受けましたが、自分なりに一生懸命でした。しかし今回嘘をつかれ、話し合いでも解決できず心が折れてしまいました。
母子家庭は目が行き届かない? 離婚は間違ってた? そう考えると涙が止まりません。
消えた息子達
急いで夕飯を作り、息子たちを呼んでも返事がありません。部屋に向かうと… 2人ともいないのです。
玄関を見ると靴がない! 家出!? 血の気が引きました。慌てて公園や学校、コンビニなどを探しましたが、いません。
時間は刻々と過ぎ、22時半。1人で探すことに限界を感じ、警察に通報。すると、すぐに3人の警察官が自宅に駆けつけてくれました。同時に20名程で捜索を開始したそうです。
あらかたの事情聴取が終わると、警察は私を落ち着かせるために雑談をしてくれました。少し気持ちが落ち着き30分程経った頃、警察官の携帯が鳴りました。
子どもたちが見つかった連絡です! よかった…。安心して涙が溢れます。
2人は家から5分の飲食店の駐車場で、植木の側に座っていたそう。急いで向かうと、長男と次男が気まずそうに待っていました。
家出の理由を聞くと、
「知らない! って言ってたし、もうお世話してもらえないよね」と2人で相談し家出をすることにしたそう。発端となった前髪は、長男が自分で切って大失敗。その直前に兄弟喧嘩をしたため、つい次男のせいにしてしまったようです。原因は、2人で散らかしたリビングの片付けを、次男が全くやらなかったこと。自分が原因の喧嘩の後だったので次男は不貞腐れた態度だったのでした。
命は一つしかない
何度も謝り、お礼を言う私の元に1人の警察官が。
「僕たちは子どもの家出を何度も捜索しています。そして、“冷たくなって”戻ってきた経験もしています。『命は一つしかない』こと、決して忘れないでください」何かを思い出しているかのように悲しそうに、でも真っ直ぐな目でした。
その言葉は重く、すぐに見つかったことは幸運だったのだと感じました。息子たちは、多くの人が心配し、探してくれたことに感謝し、後先考えず家出をしてはいけないことを学んだようです。
子育て中は、イライラしてしまうことも泣きたくなることもありますが、勢いに任せて言った言葉が取り返しのつかない事態にならないよう、言葉には責任を持たなければいけないと痛感しました。
週末、長男の前髪を直してもらいに美容院へ。美容師さんは嫌な顔一つせず
「元がいいからなんでも似合うね!」なんて言いながら整えてくれました。帰り道、口を尖らせながら長男がぽつりと言いました。
「もっと簡単に切れると思ったのに」
酷い状態だった前髪を思い出し思わず吹き出しました。そして、子育ては本当に大変だけど、楽しいなと感じたのでした。
(ファンファン福岡公式ライター/さとう なつこ)