義理の実家へ、初めての帰省…。嫁の立場としては何かと気を使うものですよね。 でも、受け入れる側の義理の実家でも、思わぬところで気遣いをしてくれていたのです…。
結婚して初めての帰省
夫と結婚後、初めて義理の実家に泊まりがけで帰省したときのことです。その日の昼食は、夫の兄弟や親戚たちも集まって一緒に食事をするとのことで、私も少々緊張していました。
夫の実家に到着し、くつろぐ夫をよそに一人で荷解きをしていると、早速義母から声がかかりました。お手伝いか?!と、腕まくりする勢いで居間へ駆けつけると、既にお寿司屋さんの豪勢な仕出し料理が並んでいたのでした。
「あ、好きなところに座ってねー」 意気込んでいた分、私はちょっと拍子抜けしながらも席に付きました。でも、今日はみんなで食事会だから、次頑張ればいいか。そんな風に考えているうちに参加者全員が集まってきて、食事会がスタートしました。
私も「嫁として」お酌をしたり、お茶を汲んだり、とにかく何か手伝いをしなくては…! と思うのですが、義母はやんわりと制止。私の帰省が初めてということもあって、おもてなしをしてくれているんだなぁ… と、その好意に甘えることにしました。
そして、その日の夕方。親戚たちが帰宅して、家族だけになると、義父は携帯を取り出しながら言いました。
「今日はみんなでレストランに食べに行こう!」 有無を言わせず、義父はその場でレストランを予約し、夕食はみんなそろって外食。ご馳走が続いて嬉しい反面、「こんなに気を遣わなくてもいいのにな…」と、思っていました。
そして、翌朝。朝食は義母が評判のパン屋さんでわざわざ購入してきてくれたお店のパン。もちろん、用意してくれた食事はどれもとっても美味しいのですが、なんだかちょっと複雑な気持ちに。
義母の真意は
義実家への滞在2日目も、初日と同じような状況で、食事は仕出し&外食オンリー。ここまでくると、「結婚しているのに、私はまだお客さん?」と他人行儀にも感じてしまいます。
でも、これには義母なりの理由があったのです。 実は義母は、昔から料理が大の苦手。義母の子育て中も、料理と言えば、予め下ごしらえがしてあるものやお惣菜をフル活用していたのだそう。
そんな状況なのに、自分一人ならともかく親戚が集まるとなると、何を作ればいいか分からないし、メニューが決まったとしても作れる自信もない。唯一の得意料理のカレーもさすがに滞在中、毎食出す訳にもいかないし…。
義母は散々悩んだ挙句、慣れないことをするよりは、美味しいと分かっている料理で喜んでもらった方が良いに決まってる!という結論に至り、手料理でのおもてなしをしなかったそうです。
「だって、これがホントの私だから、偽っても仕方ないしね」 そう言って肩をすくめる義母は、なんだかとってもチャーミングに見えました。 そんな義母が唯一得意だというカレーの作り方をいつか教えてもらおうと思っていた私ですが、そんな機会もないまま、義母は突然他界。結局、私は義母の味を引き継ぐことはできませんでした。
でも、お盆などで義実家に人が集まるたび、料理が苦手だという義母なりの心遣いを今も懐かしく思い出してしまうのでした。
(ファンファン福岡一般ライター)