わが家には、3歳ちがいの姉弟がいます。小さい頃、弟は姉を「ねえね」と呼び、いつも後ろにくっついていました。たまに口げんかになっても、姉は得意の「口撃」でいつも負け知らず! 女王として君臨してきました。ところがある日、そんな姉弟関係が崩壊する事件が起きたのです。
「いつもの口げんか」が「取っ組み合い」に発展
姉が中学3年生、弟が小学6年生になったある日。私が夕食の準備をしていると、姉弟の言い争う声が聞こえてきました。「いつもの口げんか?」と思ったのもつかの間、姉が
「やめてよ!」と言いながら泣きわめく声が聞こえてきました。
すぐに駆けつけると、2人は取っ組み合いの状態から、蜘蛛の子を散らすようにそれぞれの部屋へ行ってしまいました。何か違和感を感じながらふと床に目をやると、なんとそこにはポタポタと血のあとがあったのです!
いつのまにか弟の腕力が勝っていた
急いで姉の部屋に行くと、手のあたりに軽い傷があるようでした。姉は
「弟がやった… もういいから出ていって!」と怒鳴ると、突っ伏して大声で泣き出してしまいました。
どうやら姉が勉強中に、弟の部屋から聞こえてくる音楽がうるさくて、注意をしたことでけんかになったようでした。
姉は受験を控え、努力がなかなか成果にあらわれない日々が続いていました。弟とのけんかをきっかけに、普段のいろいろな感情を爆発させているかのように見えました。
今度は弟の部屋に行きました。
「どんな理由があろうと、男の人が女の人に手を上げてはいけない」と諭すと
「向こうが先にやってきたから、仕方なくやり返しただけ!」と言ったきり黙ってしまいます。
いつも姉の後にくっついていた弟が、いつのまにか腕力で勝っていたとは。姉弟の関係に変化のときが来ているようでした。
弟のゲーム機が突然の故障! 原因に心当たりもなくて…
あんな大げんかをしたのに、数日後には普通に会話してた2人。私は拍子抜けというか、ホッとしてしまいました。
そんなとき弟が
「なんか、ゲームが変!」と言って私のところへ持ってきました。見ると、電源は入るものの、画面が黒いまま動きません。仕方なく修理に出すことにしました。
しばらくすると修理先から
「原因は水没なので、修理代はお客様負担になります」という電話が。
す、水没!? 弟に聞くと
「絶対に水に濡らしたことはない!」と言います。念のため姉に聞いても
「知らない」ということでした。
謎は残ったままでしたが、修理は進めることにしました。
姉が突然の告白
ゲーム機も直り、穏やかな日々が続いていました。
受験間近になって姉の成績が伸びはじめ、少し明るくなったように… 見えたのです、あの告白があるまでは。
それはいつものように、姉が塾から帰り、私が作った夜食を食べているときでした。
「この前、ゲーム機が壊れたときあったでしょ? あれ、本当は私が壊した」
「えーーー!」私はしばし呆然としました。
けんかに負けた腹いせから、皆が寝静まるのを待って弟のゲーム機をそっと持ち出し、ソフトを入れるところに、蛇口から水を入れたというのです。
「フッ、私に逆らうとこうなるんだよ」と不敵な笑みをうかべると、姉は満足そうに部屋に戻っていきました。そうです、女王はまだまだ健在だったのです!
そして私は、姉に向かって心のなかで叫びました。
「っていうか、修理の手続きやら代金やら、被害を受けたのはこっちなんですけどー!」
今ではお互いのことを話しあえる関係に
姉が高校生、弟が中学生になった今では、お互いのことを話しあえる良好な姉弟関係を築けているようです。ゲームやアニメ、恋バナなど、時間を忘れて夜中まで話している姿をよく見ます。
先日久しぶりに、「ゲーム機水浸し事件」のことを姉に話してみました。すると、
「え、そんなことあったっけ? ぜんぜん覚えてない」と言うではありませんか。
「えーーー!」私はふたたび呆然としたのでした。
(ファンファン福岡公式ライター / 柴田真千子)