食事も買い物も、なんと、おさい銭まで!? スマートフォンを使ったキャッシュレス決済が広がっています。福岡市内の“スマホ決済”最新事情を探ってみました。
★屋台で使えます 福岡市の名物・屋台。クレジットカードが使えるお店を上回るペースで、スマホ決済できるお店が増えているんです。市によると、2月末時点でスマホ決済を導入している屋台は33店あります。 天神に店を出す「博多っ子純情屋台 喜柳」は昨年9月以降、スマホ決済の「楽天ペイ」や「LINE(ライン)ペイ」を導入し、現在は売上高の1割程度がスマホ決済で支払われているといいます。店内に貼ってあるQRコードを客がスマホで読み込んで支払額を打ち込み、決済が完了した画面を店員に見せるスタイル。車長(店長)の迎敬之さんは「料理の手を止めなくていいし、お金を触らないから手を洗う必要もなくて楽!」と言います。 福岡市は今年3月まで、スマホ決済の導入やPRをサポートする「キャッシュレス実証実験」を実施。市によると、導入している屋台のほとんどが今後もスマホ決済を続けるそうです。
★施設全体で使えるように 福岡市内の百貨店や商業施設では2年ほど前から、主に中国人向けのスマホ決済「支付宝(アリペイ)」「微信支付(ウィーチャットペイ)」が使えるようになってきていましたが、日本人向けのスマホ決済も導入されつつあります。 博多区の商業施設「博多リバレインモール by TAKASHIMAYA」は昨年9月、九州の商業施設として初めて楽天ペイとLINEぺイを導入。施設内の一部を除く約60店で使えます。施設によると、当初は飲食店での支払いが中心だったといいますが徐々に物販にも波及しているとか。売上高全体に占めるスマホ決済額の割合はまだ1%未満と低いものの、広がりを見せているようです。博多阪急も昨年9月にLINEペイなどを導入しています。
★個人店や商店街でも拡大中 博多川端商店街(博多区)を歩いていると、さまざまな店の店先にスマホ決済の案内が掲げられています。「みどりや仏壇店」では昨年の秋以降に3種類のスマホ決済を導入。これまでの利用実績はまだ数件と少ないながら、注目される機会が増えたといい、吉川和毅社長は「スマホ決済はいずれ広がるはず。早めに導入するメリットはあると思います」と話していました。
★完全キャッシュレスの店も ドラッグストア「ドラッグ新生堂」の香椎駅前店(東区)は、現金での決済は扱わず、スマホ決済などさまざまな電子決済に対応する「完全キャッシュレスの店」として昨年10月にオープンしました(※)。会計の時間が早く、閉店後に現金の誤差を確認する業務などの時間が大幅に減少。店員に余裕が生まれ、現金の人をプリペイドカードへのチャージ機に案内するなど、接客の時間に充てられているといいます。 ※ 同店は4月から現金の取り扱いを始めました。
★より手軽に野球観戦 福岡 ヤフオク!ドーム(中央区)では3月2日から、チケットやグッズ、観客席でのビールの購入などでペイペイが使えるように。財布を持って行かなくても、手軽に野球観戦が楽しめそうですね。
★おさい銭やおみくじもスマホで 東区香住ケ丘の妙法寺福岡分院では、おさい銭やおみくじもスマホで決済できます。納めたい金額を伝えると、お寺側がタブレットに金額を打ち込んでQRコードを表示。自分のスマホで読み込めば完了です。同院は禅の体験ができることもあって外国人観光客や若者が多く、台湾の観光客から「スマホ決済は使えませんか」と尋ねられたのが導入のきっかけ。院代の清水日勢さんは「時代に合わせることで“開かれたお寺”と思ってもらえたら」と話していました。
あなたは知ってる? スマホ決済ってどんなもの? ひと言で“スマホ決済”といっても、楽天ペイ、LINEペイ、ペイペイ、オリガミペイ、ふくおかフィナンシャルグループ(福岡市)が展開するYOKA!Pay(よかペイ)など多くのサービスがあります。
<博多リバレインモール by TAKASHIMAYAの場合> ※ 会計をする前に、自分のスマホに利用したいスマホ決済のアプリをダウンロードし、お金を払える状態にしておく。 ①レジでどのスマホ決済サービスで払うかを伝え、店のスタッフが決済専用端末の画面上でそのサービスを選択 。 ②店のスタッフが端末に金額を入力。 ③スマホに表示されるQRコードを示し、店のスタッフが端末で読み込んだら完了! ※ 使用する端末や読み取り方法などは、店舗やサービスによって異なります。 スマホ決済が広がっている理由の一つが、お得なキャンペーン。ペイペイは昨年12月、総額100億円を利用者に還元するという破格のキャンペーンを実施し、現在も第2弾を展開中。LINEペイは昨年9~11月、福岡市の屋台で決済額の半額を還元するキャンペーンを実施しました。今回取材したお店では「その時に一番お得なスマホ決済サービスが選ばれます」との声が。皆さん、しっかりチェックしているんですね。 <COLUMN> 日本のキャッシュレス決済比率は高くない 福岡市内でも広がりを見せるスマホ決済。「やっぱり現金がいい」「個人情報が漏れそうで心配」といった声も聞かれますが、日本のキャッシュレス決済比率は2015年時点で18%と韓国(89%)や中国(60%)と比べても低く(経済産業省調べ)、政府が普及を後押ししようとしていることもあって、この熱はまだ続きそうです。 ただ、決済の種類が増えすぎると、消費者や店舗側の混乱を招きかねません。スマホ決済の種類が違っても同じQRコードが使えるように規格を統一しようとする動きもあり、より便利なサービスになっていくことが期待されます。