IT関連サービスを提供する「air chair(エアチェアー)」(福岡市)は、スマートフォン用アプリを使ってフリーの美容師と店内の空席を有効活用したい美容室とをつなぐサービスの提供を福岡市を中心に始めた。美容業界は長時間労働などから店舗で働く美容師の離職率が高く、人手不足に悩む店が増えている。新サービスで美容室の経営支援とともに、美容師の新しい働き方も後押しする狙いだ。
社名と同名のアプリ「air chair」を開発して、2018年12月に本格的にサービスを始めた。現在、福岡市を中心に約30店の美容室と約190人の美容師が登録している。美容師免許を持つが、結婚や出産を機に美容室を辞めた人や、別の仕事をする人が副業として活用しているという。
利用する際、美容師はアプリ上に掲載された美容室の中から利用する店舗を選び、利用希望日と時間帯を選択。美容師が予約した店舗で客を迎え、カットやカラーなどの施術を行う。施術料金は美容師が自由に設定できる。 エアチェアーを利用する福岡市のフリーの美容師吉野まどかさん(35)は、ブライダルのヘアメークも手掛けたいと、約14年半勤めた美容室を昨夏辞めた。今は美容室を借りてカットなどを行い、合間にブライダルの仕事をこなす。「以前は拘束時間が長かったが、今は自分のペースで仕事ができる」と吉野さん。 一方、場所を貸している福岡市中央区の美容室「GLIM hair」のオーナー村吉忠さん(36)は「美容師の採用が厳しい中、空いた席の有効活用になる。店を利用してくれた美容師の中から実力がある人がいれば、いずれ採用したい」と期待を込める。 美容師は利用料金として、各店舗が設定する金額(30分300円~、1時間から利用可)を美容室に支払う。エアチェアーはマッチング手数料として、美容師から1回当たり300円、美容室から1時間当たり100円をもらう。手数料を低く設定することで、美容師の手取りが減らないよう工夫したという。 エアチェアーの安部虎長CEOは「今夏までに福岡県内や東京で100店舗、1,000人の登録を目指す。美容師の働き方の選択肢を増やすサービスにしたい」と話す。 =2019/06/06 西日本新聞=