福岡の書店員さんに、福岡ゆかりの本を紹介してもらうファンファン福岡の「福岡キミスイ本」シリーズ。今回でちょうど連載1年、第12回目です。福岡関連の本、まだたくさんあるらしく、ますます楽しみです! 今回は福岡市・天神の「ジュンク堂書店 福岡店」に行き、文庫担当の彌益陽子さんに話を聞きました。※2019年9月時点の情報です。
実際に福岡・薬院でカフェを営んでいた作者が福岡を舞台に描く
「終電前のちょいごはん 薬院文月のみかづきレシピ」 標野凪 著
―こんにちは。彌益さんの後ろの文庫コーナー、すごく華やかですね。 そうなんです。「ライト文芸」といって、読みやすいジャンルがあるのですが、それらの表紙はイラストなどが華やかだったり美しかったりします。
―きょうは文庫を紹介してくださるとか。 (福岡市中央区)薬院の裏通りにある小さなカフェ「文月」が舞台の物語です。タイトルは「終電前のちょいごはん 薬院文月のみかづきレシピ」(ポプラ文庫ピュアフル、680円+税)です。
―薬院の裏通り、確かにカフェがあるような場所ですね。 著者の標野凪(しめのなぎ)さんは、実際にその辺りでカフェを営まれていたらしいんですよ。数年前に東京に移られて、今は東京でカフェをされているそうですが。 ―福岡でお店をされていたとは、がぜん身近に感じます。物語は、どんな内容でしょうか。 文月は、おつまみならぬ「こつまみ」をつまみながら、本が読めて手紙が書けるというコンセプトの店で、毎月23日の「ふみの日」には便せんと封筒が用意されています。おっとりした店主と店の雰囲気にひかれて、人々は訪れます。営業は三日月が出る日から満月の日まで。つまり月の半分ほどです。
―不思議な設定ですね。 短編形式になっていて、なかなか自分の思うように仕事が進まないデザイナー、TODOリスト通りに人生を歩みたい女性、友人を失った女性、年老いた過干渉な母との関係に悩む女性など8人の話が出てきます。1人1話形式です。職業も性別も年齢もばらばらですが、共通点があるとすれば、みんな真面目なタイプ。頑張って頑張って、本当に疲れてしまった時に、この店にやって来るのです。 ―居心地のいい場所ということなんですね。 店主はちょっとミステリアスで多くを語らないし、悩み相談をがっつり受けるわけでもなく、とにかく押し付けがましくないんです。おいしい食事と飲み物をさりげなく出して、絶妙な距離で接するんですよ。最後には店主の物語もあって、お店の謎も分かります。 ―そのお店、行ってみたいです! そうですよね(笑)。登場人物の悩みのどれか一つは自分にも当てはまるかもしれないし、薬院だけでなく、天神、博多、桜坂など実際の街が頻繁に出てくるので、福岡にいる人が読めば一層身近な世界に感じられると思います。博多弁も使われていますし、どこまでが実際で、どこまでがフィクションなのか、何だか分からない感じもあります。そうそう、店主が本を買いに書店に寄る場面があるのですが、名前は出ていませんが、間違いなく当店です!(笑) ―登場人物も、福岡の実在の人をモデルにしているかもしれないですね。あれ、レシピも載っているようですね。 巻末に「こつまみ」レシピが。さすが実際にカフェをされいるだけあります。どれもカンタンでおいしそうですよ。
―こんな文庫本もあるんですね、知らなかったなあ。早速、読んでみます! 特に女性に人気で、すごく売れていますよ。読みやすいし、読んでいると自分が物語の一員になれるるような、そんな雰囲気がある福岡小説です。
※情報は2019.9.17時点のものです