クリスマスが近づくと、娘はサンタクロースに手紙を書きます。まだ字なんて書けないくらい小さな頃からのわが家の習慣で、そうすればクリスマスの朝、枕元にプレゼントが届くのです。 ささやかながら親も子も幸せなクリスマス。でもある年、その幸せがもう終わってしまうかと思われた出来事がありました。
何かに気づいた娘
クリスマス間近なある夜のこと、娘がまだ保育園の年中さんの頃でした。いつものように並んで布団に入り、娘を寝かしつけていると、小さな声で娘が話し出しました。
「あのね、ママ。サンタさんのことなんだけど」
「サンタさんがどうしたの?」と、私は答えました。
すると仰向けに寝ていた娘が私の方に向きなおり、真面目な顔でこう言ったのです。
「あのね、サンタさんの秘密って知ってる?」 私はドキッとしました。まさか、もう知ってしまったの? 何も答えられず、ただ娘を見つめていると、娘は声を潜めて言いました。
「あのね、保育園で聞いたんだけどね、サンタさんって本当はね…」そこまで言った娘は、あわてて自分の口を押さえました。そして
「あ、ダメだ。これは言ったらダメなんだった」と言うのです。
私の心臓はまさに早鐘のようでした。ドキドキと心音が聞こえるんじゃないかと思うほど。いつかこの日が来るのは分かっていたけれど、まさかこんなに早いとは! そういえば娘の保育園は縦割りのクラス編成。3、4、5歳児が同じクラスです。もちろんもっと年上のお兄ちゃんやお姉ちゃんのいるお友だちもいます。そりゃあ、いつか誰かから聞くだろうとは思っていたけど、もうちょっと先にしてほしかった! そんな私の気持ちなんてまるで知らず、娘はにっこり笑いました。
サンタさんって実はね…
「でもいいか。ママは特別だから」 豆電球の光にぷくぷくのほっぺを照らされてほほ笑む娘は天使のようで、さらに私の胸を締め付けます。
さようなら、かわいかった私の娘。あなたはこうやって、あっという間に大人の階段を上ってしまうのね。ママはもう少し、あなたとのサンタさんごっこを楽しんでいたかったよ。だけどこれも成長。喜ばないといけないね。だけどね、だけどママは…。
そんな私の思いをよそに、ついにその時が来ました。娘は私の耳に顔を寄せてこう告げたのです。
「サンタさんってね、本当は細いんだって」あまりにも予想外のサンタの秘密。何の反応もできなかった私に娘は得意げに教えてくれました。
保育園で読んでもらった絵本に、「サンタさんは本当は太ってなくて細いのだけど、これは内緒にしてほしい」と書いてあったと。ママは特別だから教えてあげるけど、誰にも言ったらダメだからね、と。 サンタの重大な秘密を私に託し、気持ちよさそうに寝息を立て始めた娘。そして危機を脱した私は、しばらく放心状態に陥ったのでした。
あれからずいぶんたち、娘は現在5年生。もっと重大なサンタの秘密に気付いてもおかしくはない年頃です。でもまだ気付いていないのか、気付いてないフリをしているのか。とにかくわが家は相変わらず。クリスマスの朝には、サンタさんからのプレゼントが届いています。
(ファンファン福岡公式ライター)