公開間近! 話題の「ジョジョ・ラビット」を見てきた

 第44回トロント国際映画祭(2019年)で観客賞を受賞し、第77回ゴールデングローブ賞(2020年)の主要2部門、作品賞(ミュージカル・コメディ部門)と主演男優賞(ローマン・グリフィン・デイビス)にノミネートされている話題作「ジョジョ・ラビット」が1月17日(金)に公開されます。

 「マイティ・ソー バトルロイヤル」などのタイカ・ワイティティ監督がメガホンを取り、第2次世界大戦下のドイツを舞台に、ヒトラーを空想上の友達に持つ少年の日常を描いたヒューマンドラマで、公開前から話題になっている今作。

出典:(c) 2019 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC

 子どもであるがゆえに純粋で、洗脳めいたプロパガンダを信じきり、かのアドルフ・ヒトラーに心の底から憧れるジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)は、強く優しい母・ロージー(スカーレット・ヨハンソン)と2人暮らし。

 青少年集団・ヒトラーユーゲントの訓練にいそしむ毎日でしたが、本来は心優しい少年のジョジョは「殺せ」と言われたウサギを殺すことができず、「ジョジョ・ラビット」という、本人にとっては不名誉なあだ名を付けられます。

 そんなジョジョをいつも励ましてくれるのは空想上の友達(イマジナリーフレンド)のヒトラー(タイカ・ワイティティ)。「ウサギは勇敢でずる賢く強い」と、泣きじゃくるジョジョを激励します。

出典:http://www.foxmovies-jp.com/jojorabbit/

 少年の心を写す鏡でもある、イマジナリーフレンドのヒトラーに勇気づけられながら兵士を目指し訓練するジョジョでしたが、そんな中、ジョジョは母と暮らす家にユダヤ人の少女・エルサ(トーマシン・マッケンジー)がかくまわれていることに気付きます。ここから物語は大きく変化を起こします。

 過去何度も映画で描かれてきた「ナチス」を、ともすれば不謹慎とも言われかねないほどユーモアを持ってポップに描かれた今作。

 フィクションだと分かっていても、要所に散りばめられた歴史上の出来事が物語に説得力を持たせ、スクリーンから目が離せなくなりました。

出典:http://www.foxmovies-jp.com/jojorabbit/

 物語の前半、ジョジョの目を通して見る空想のヒトラーは優しく勇敢で、どんな時も励ましてくれるすばらしい人に思えますが、中盤以降エルサと出会い、自分で感じたことを大切にするようになったジョジョとヒトラーの関係性は変化していき「ジョジョの心情の変化を表現するために空想のヒトラーは必要だったんだな」とハッとしました。

 スカーレット・ヨハンソン演じる母親の性格がとにかくすばらしく、セリフのひとつひとつがじわりと染みます。戦時下の厳しい状況でも笑顔を絶やさずダンスを踊る彼女がジョジョへ伝えようとする全ての言葉は、現在の不安定な世界情勢で生きていく上で心に刻みたいメッセージばかりです。

 人を愛する尊さ、戦争のおろかさ、どんな時でも豊かな気持ちでいることの大切さなどが、テンポよく描かれ、「これは単なる戦争の内情を伝える映画ではない。どんな時代も大切なのは愛を持って生きることが大事なんだな」と思いました。  エンドロールの直前で引用されるオーストリアの詩人R・M・リルケの一遍の詩「すべてを経験せよ 美も恐怖も生き続けよ 絶望が最後ではない」にこの映画の全てが詰まっていると思います。

 一見、戦争への風刺めいたユーモアをきかせたハートフルコメディーに見えますが、困難の中にあっても輝く希望と生きる喜びをビートルズ、デビット・ボウイ、トム・ウェイツらの名曲にのせ力強くうたい上げた今作。笑って泣ける作品です。ぜひ劇場で味わってください。

映画「ジョジョ・ラビット」  1月17日(金)全国ロードショー  (C)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation & TSG Entertainment Finance LLC

映画「ジョジョ・ラビット」公式サイト

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