これは5歳娘のやさしい神対応で、おじさんが見事撃退されたエピソードです。ある日、娘と行ったスーパーは混雑している時間帯でした。長いレジの列に私と娘がならんでいると、急に私たちの前に入ってきたおじさん。悪びれもしない態度にあきらめかけたときでした…。
混雑するレジ
一通り買い物を終え、レジに目をやるとどのレジも5~6人は並んでいる混雑ぶりでした。そのうちの1つの列の最後尾に並び、順番を待っていたときでした。他の列のまわりで、大声で話すおじさんが目に留まりました。
60代くらいでジャージを着崩し、いかにも不機嫌そうな顔のおじさん。そのおじさんは他の列で50代くらいの女性に
「ここはあいてるか?」と聞き、女性に
「並んでますが」とすごまれてチッと舌打ち。そして次の列に行き
「急いでるんだが」と20代くらいの若い男性の前に横入りしようとするものの
「みんな並んでますよ」と男性に言われ言われまた舌打ち。
割り込むおじさん
「嫌なかんじだな」と思いつつ、もうすぐ会計の順番が来る私たちのところへ来ないことを願っていました。しかし、いよいよ私たちの列の近くまで来たおじさん。おもむろにレジ横の棚を見始めました。話しかけてこなかったことに安堵しつつ、注意して見ていたそのときです。
前の人が進んだ瞬間に、サッと私たちの前に入り込んだのです。何も言わずに当たり前のように横入りをしたおじさんに、私も娘もびっくりして思わず顔を見合わせました。
怖そうな人でしたが、娘の前で何も言わないわけにいかないと思い
「すみません、並んでますよ」と声をかけました。するとおじさんは無視。私はめげずに
「あの、後ろ見てください。皆さん並んで待ってるんですよ」と言うとおじさんは振り向きました。
そして自分のカゴを私たちのカゴに突きつけ
「どっちの方が多い?俺これだけだから」と、強い口調で言い捨ててまた前を向いてしまいました。意味の分からない理由に驚き、「相手にするだけ無駄かもしれない…」と思ったそのときでした。
撃退! 娘の言葉でみんなの視線がつき刺さる
娘が
「いいんだよ、ママ」と私に言いました。
「じゅんばんこができない子もいるよ。仕方ないよ。今できなくても、これからできるようになるといいねって、先生はいつも言ってくれるよ。これからに期待してあげようよ!」とキラキラした顔で私に言ったのです。
多くの人がそのおじさんを直視せずとも注目している中だったので、娘が放った言葉も多くの人に届いたようでした。娘の言葉を聞いて周りはクスクスと小さく笑う人や、思わず吹き出して口をおさえる人も。レジの店員さんにも聞こえたようで、レジ打ち中にも関わらず顔を横に向けて肩を震わせていました。
娘の発言にヒヤヒヤしながら、
「そ、そうねぇ…」と曖昧に返事をしながらおじさんを見ると、おじさんは明らかに恥ずかしかった様子。ばつの悪そうな顔をして、顔が赤くなっていました。それでもそのまま乱暴にレジに進んだおじさんですが、結局は店員さんに
「申し訳ありませんが、みなさん並んでいらっしゃいますので。列の最後に並びなおしてください」と言われ撃沈。
「もういい!」とそのままカゴをレジに置いて、何も買わずにお店を出て行ってしまいました。ドカドカと大股で歩いていったおじさんの背中には、多くの人の視線が突き刺さっていました。
私たちのレジの番になってカゴをおくと、レジのおねえさんが
「じゅんばんこができて偉いね」と声をかけてくれました。そう言われて娘は
「できるよ! もうおねえさんだもん!」と元気に答え、レジのお姉さんは含みありげに
「そうだよねぇ?」と笑っていました。
娘の言葉に、おじさんが直接の危害を加えてこなかったのは幸いでした。娘のまっすぐな言葉に撃退された、横入りのおじさん。きちんとおじさんに注意してくれ、娘を褒めてくれたレジのおねえさんの対応もありがたかったなと思います。
(ファンファン福岡公式ライター/K)