初めての妊娠・出産は、わからないことだらけ。何をするにも、常に不安がつきまといました。案外まわりのほうが冷静で、さらに過剰に反応してしまうことも…。特に心配性が爆発した妊娠後期の私は、夫から悲しい称号を与えられてしまいました。
「つわりは病気ではないから」に絶望…
10年前、初めて妊娠した私。早々につわりが始まり、吐き続ける毎日に「こんなにつらいものなのか」と落ち込みました。
気持ち悪い、でもお腹はすく、料理をする気にはなれず、カップ麺をすする。食べ終わると「なんて体に悪いものを食べてしまったのか!」と罪悪感が襲ってくる… 相当、参っていたのだと思います。
夫の母親は看護師をしているため、つわりがヒドイ中でできることや食べ物のアドバイスを聞こうと連絡。しかし
「つわりは病気ではないよ。気にしなくていいし、もっと動かないと!」と言われてしまいました。
「心配しなくても大丈夫だよ」という意味だったのでしょうが、解決策を期待していた私には、見放されたような気がして「誰もわかってくれない」と絶望的でした。
夫にとっても、本当に大変な日々だったと思います。夫が好きな柔軟剤の香りが受け付けず、洗濯はほったらかし。朝は起きるとすぐに吐き気でトイレにこもってしまうので、夫は何も言わず朝食と自分の弁当の用意をして、静かに家を出て行く。仕事から帰っても、朝と同じ姿でげっそりしている私を刺激しないよう、簡単な家事を済ませてくれました。
唯一、つわりが落ち着いていた妊娠中期の数カ月間は、できる限りの家事をこなし、料理も夫の好きなものを作るように。それでも、妊娠中は「しんどい」記憶のほうが多いです。
夜中に起こし続けて1カ月。とうとう信じてもらえず…
そんな不安定な日々を送っていたので、妊娠後期も相変わらず、心配ばかりしていた私。
予定日の1カ月前からは、寝ているとき、どうにも股のあたりがムズムズした感覚があり、気になるのです。出産は8月だったため、暑い中で仕事に行き、買い物に行き、家事をして、すっかり疲れきって寝ている夫を揺り起こし
「破水したかもしれない」
「陣痛の間隔を測って」と、毎晩のように繰り返していました。
「もうこれは絶対に生まれる!」と、夜中に助産院を開けてもらったことも…。
はじめは
「それは大変! とにかく様子を見ようか」と、積極的に動いてくれていた夫も、さすがに毎晩となると
「え? また? これは違うでしょ?」と、だんだん面倒くさそうな対応になっていきました。
そして、予定日を1週間過ぎた夜。明らかに今までのムズムズとは違う、下着がびっしょりと濡れている感覚に飛び起き
「破水した!」と、夫に声をかけると
「またか… 嘘はいいから」と、まさかのスルー!
1カ月間、毎晩言い続けた結果、本当に破水したときに見向きもされない「オオカミ少年」になっていたのです。
お互い、当時の恨みは残ったまま
「俺は何回も『だまされて』きた。もう知らない」と冷たい言葉を言い放ち、一度は寝ようとした夫。しかし、大きな水たまりができたシーツに気づくと、ようやく本当に破水したのだと理解したようです。
そこから助産院に向かい、7時間後には、無事出産を終えました。出産中の記憶はほとんどありませんが、やはりかわいいわが子に出会えた喜びは、何にも代えがたいものでした。愛おしそうにわが子を眺める夫の姿にも、感動したことを覚えています。
ただ、当時の恨みはお互いにあり…
「毎晩起こされて最悪だった」
「心配性すぎる」と、振り返る夫に
「あのとき、無視したよね!?」
「お父さんは、あなたが生まれそうなのに、寝ていた」と、子どもにチクる私。
今となっては笑い話ですが、「オオカミ少年」にされた心の傷は、まだまだ癒えそうにありません。
(ファンファン福岡公式ライター/ふわずみ みか)