学生時代、夏休みの恒例といえば海水浴でした。祖父母宅がある、海がきれいな某県で毎年楽しんでいたのですが、お盆明けの海水浴へ行った年に痛い目を見ることに…。今もトラウマになっているエピソードをお話します。
初めてお盆開けの海へ行くことに
幼少期から高校生まで、夏休みはお盆前後に10日間ほど母方の祖父母宅で過ごすのが恒例でした。祖父母宅は海から徒歩数分の場所にあり、車で約20分足を伸ばせば海がきれいな海水浴場もあります。祖父母も母も車を運転しないので、お盆前に車で帰省する叔父の運転で海水浴場へ行っていました。
当時は海なし県に住んでおり、この海水浴は海と触れ合える貴重な機会。私と弟2人は、毎年とても楽しみにしていました。母の地元では「波の流れが変わるから、お盆以降の海は行かない方がいい」と言われているそうで、海水浴はお盆前に行くのが恒例でした。
ところが私が中1の夏休み、仕事の都合で叔父の帰省がお盆の最終日になってしまったのです。母は、お盆明けに海水浴へ行くか今年は諦めるかを迷っている様子。母から
「行きたい?」と聞かれた私たち姉弟は、力強く
「行きたい!!」と返事をします。私たちの熱意が伝わり、初めてお盆明けの海へ行くことになりました。
突然の痛みの正体は?!
叔父は予定通りお盆の最終日に帰省し、翌日はいよいよ海水浴です。母、叔父、私たち3姉弟の5人で出発。そして到着してまずびっくり! いつもは20組ほど泳いでいる海水浴場なのに誰もいないのです。
貸し切り状態の海にテンションが上がった私たちは、さっそく海に入ります。約5m間隔で横に広がり、各々が気ままに泳いでいたのですが…。
約20分後、私は右側の首から背中にかけて、思いきり噛みつかれたような痛みに襲われました。
「痛い痛いっ!!」と声を上げながら肩を見ると、直径20cmほどの丸くて平たい、透明の物体が肩にくっついています。
驚きと恐怖で声が出ないまま、水風船のようにぶよっとした物体を肩から引きはがし、砂浜へと逃げます。この物体がクラゲだと気が付いたのは、砂浜にたどり着いてからでした。海から出ると、海水の塩分と日射しの熱が合わさり、大きな火傷を負ったようにヒリヒリと痛む首から背中。痛さで泣きそうになりながらしゃがみ込んだ私を追い、他の4人も砂浜へ上がってきました。
「どうしたの?」と問いかけられ、背中を指さすと全員が顔をしかめ
「うわっ! 痛そう…」と言います。自分では見えなかったのですが、聞けばかなりひどい状態のよう。首の下半分から背中にかけて、ムチで叩かれたような跡で長さ約30cmの傷が3本。さらに背中の右半分には、針でひっかかれたような約10cmほどの傷が30本ほどできていたのです。
母と叔父いわく、ムチのような傷は肩に乗った大きなクラゲで、針のような傷は別の小さなクラゲに刺されたのだろう、とのこと。
私以外はというと、弟1人も足首にひっかかれたような傷が5本ほどありましたが、痛みはほとんどなかったそう。他の3人は無傷でした。
クラゲのいる海に再び入るのは危険ということで、そのまま帰ることに。楽しみにしていた海水浴は散々な結果となり、30分ほどで終わってしまいました。
トラウマになった私
帰ってからも、火傷のようなヒリヒリした痛みは続いていました。他の症状はなく、病院がお盆休み中だったので家で様子をみます。翌日、鏡越しに背中を確認すると、ムチのような傷はミミズ腫れに。さらに痛々しい見た目になったものの、痛みは半減していました。
3日後には痛みがなくなりひと安心。しかし傷跡はなかなか消えず、夏休み明けにたくさんのクラスメイトから
「首どうしたの?」と驚かれ、恥ずかしく思いながらも理由を説明しました。
約1カ月後に傷跡は消えましたが、クラゲへの恐怖心は今も残ったままです。刺されるまでは水族館でクラゲが泳ぐ姿を見て楽しんでいたのに、以降はクラゲを見ると鳥肌が立つように。刺された時の痛みとぶよっとした感覚、そしてヒリヒリした激痛を思い出すのです。
「お盆以降の海は行かない方がいい」という言葉を、身をもって痛感した私。お盆明けの海水浴には二度と行かない! と固く誓っています。
(ファンファン福岡公式ライター/坂 真琴)