19歳の若さでデビューして「Mommy / マミー」や「たかが世界の終わり」などの作品を手掛け、“若き天才”とも称されるカナダ出身のグザヴィエ・ドラン監督の最新映画「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」が3月13日(金)、全国で公開されます。
この作品は、ドラン監督が幼少期、憧れていたレオナルド・ディカプリオへ手紙を送った実体験に着想を得て作られたフィクションで、若くして亡くなった人気俳優と彼に憧れる少年のやり取りを描いています。
アメリカの人気俳優、ジョン・F・ドノヴァン(キット・ハリントン)がある日突然亡くなり、事故か自殺かと騒がれますが、その真実は分からぬまま。
それから10年が経ち、若手俳優のルパート・ターナーが、記者に語ったのは、11歳の頃(ジェイコブ・トレンブレイ)、ジョンと手紙のやり取りを重ねていたということ。
ルパートの記憶とともに、ジョンの死の真相について語られ、ルパートとジョン、そして周囲の人々を描き出すドラマ作品です。
顔のうぶ毛までも美しく描き出し、圧倒的な映像美で表現される、“スター”ドノヴァンの光と闇。美しさにまるで比例するかのような、悲しみや寂しさに、見ている側は胸が押しつぶされそうになります。遠い土地に住む見知らぬ子どもにだから語れたであろうジョンの孤独。
ジョンとルパートの交流を軸に、ルパートの目線で鮮やかに描かれる、母と息子(ルパート)の関係や少年の成長物語など鮮やかに描かれる人間模様は、親子関係を緻密に描いてきたドラン監督の今までの作品の集大成ともいえるのではないでしょうか。
BGMも秀逸で、序盤で流れる英国の人気歌手・アデルの曲「Rolling in the Deep」に合わせて流れる映像を見ているだけで、この映画を見る価値があったと思えます。
「マイ・プライベート・アイダホ」や「スタンド・バイ・ミー」などさまざまな映画作品のオマージュも散りばめられ、映画好きならば思わずふふっとなるシーンも。
一見ありふれたストーリーにも思えるこの作品を、“傑作”にしているのは圧倒的な映像美と監督の「映画愛」あってこそなのかもしれません。
タイトルの通り、「死」があってこそ始まる物語。「生と死」ではなく「死と生」がぴったりだと思う作品でした。
色とりどりの“愛”にあふれた映画を、ぜひ映画館で味わってみては。
ジョン・F・ドノヴァンの死と生
3月13日(金)ロードショー