双子の息子たちが1歳を過ぎた頃の話です。私が少しでも離れると泣き出してしまい、ひとりで寝ることができない双子たち。育休復帰を目前に、私は藁にもすがる思いで「ねんねトレーニング(ネントレ)」にチャレンジすることにしたのですが…。
全然寝ない双子
職場復帰を前に、私はある重大な問題を抱えていました。それは「双子が、私の腕枕でしか寝ることができない」というもの。寝るときは私が両腕を広げ、その上に双子の頭をひとつずつ乗せた後、手のひらでおしりをトントンします。そうすると双子は寝てくれるのですが、その後そっと腕を外して起き上がると、10分も経たないうちに必ず泣きながら起きてくるのです。
職場復帰まであと1カ月… 私は困り果てました。家事をすることもできず、寝不足、しかも腕は筋肉痛、とまさに三重苦の状態だったのです。
なんとかこの状況を打破しようと、私は「ねんねトレーニング」に挑戦することを決意しました。ねんねトレーニング、略してネントレとは、赤ちゃんがひとり寝できるように訓練するというものです。
簡単に説明すると、安全な場所に赤ちゃんを寝かせ、おやすみと声かけして部屋を去っていき、一定時間をおいてから様子を見に行きます。その後、様子を見に行く間隔を段々と空けながら繰り返していくと… そのうちひとり寝できるようになる、というものです。
本やネットなどの情報によってやり方は様々でしたが、ひとまず「双子の安全が確保できるやり方でやってみよう」と思いました。
ネントレ開始! ところが…
いよいよネントレ初日。20時頃、寝室に息子たちを誘導すると、いつものように絵本の読み聞かせをします。絵本を読み終えると電気を消し、「おやすみなさい」と声掛けをしました。そして、そっと部屋を後にしました。
私が部屋の扉を閉めるや否や、双子は泣き出しました! 急いで別室に移動し、タイマーをセットし、ネントレのために設置したベビーモニターを覗き込みます。すると画面に、ベビーサークルの柵を握りしめ、並んで絶叫する双子の姿が映し出されます。
悲壮感漂う姿に、私は大きく動揺しました。今すぐ駆け寄って抱きしめてあげたいという衝動に駆られます。しかしグッとこらえ、私はタイマーが鳴るのを待ちました。たった数分のことですが、人生で最も長い時間に感じました。
タイマーが鳴ると、私は双子のもとへ飛んで行って2人を抱きしめます。でも、再び「おやすみなさい」と言って断腸の思いで部屋を去ります。双子は再度泣き出し、私はまたタイマーを握りしめながらモニターを覗きました。
あまりの罪悪感に、私はネントレを始めたことを後悔しました。
「お互いこんなにつらいなら、ネントレなんてするんじゃなかった!」しかし、このままでは私の寝不足や筋肉痛は改善されません。
「もう少し、もう少しだけやってみよう」心の中で双子に詫びながら、私はネントレを続行しました。
それから約2時間後、双子はやっと眠ることができました。
ついにネントレ成功
それから約2週間、私はネントレを繰り返しました。精神的ダメージはとても大きく、双子より私の方が泣いてしまうほどでした。
しかしある日、ついに双子が1回も泣くことなく、ひとり寝をすることができたのです! 「おやすみ」と声をかけると、途端に横たわり、そのまま目を瞑って寝てくれました。努力が報われた瞬間でした。
「途中でやめなくて良かった! がんばってくれて本当にありがとう」
私は涙を流しながら、モニター越しに寝ている息子たちに感謝したのでした。
その後、私は5時間以上の睡眠を確保することができるようになり、無事に職場復帰することができました。
双子は寝つきが良くなったことで睡眠の質が上がり、日中に眠くてグズることもなくなりました。こうして、わが家は久々の「安眠」を得ることができたのです。
実はその約1年後、双子は病気で寝込んだのをきっかけにひとり寝をやめてしまい、4歳となった今は、私と3人で川の字で寝ています。しかし、ネントレのおかげなのか、ひとり寝をやめても双子の寝つきが悪くなることはありませんでした。
色々あったねんねトレーニングですが、今では良い思い出となり、チャレンジして良かったと心から思っています。
(ファンファン福岡公式ライター / はやしグラタン)