小さい頃から「わーい、ママー」と笑顔で手をふっているのはウチの娘! ではなく、いつもよそのお子さんでした。なぜなら、ウチの娘が親を見つけたときは、そっぽを向き見なかったことにするからです…。そんな切ない仕打ちをする娘が、19歳になって見せた驚きの行動とは?
仲良し母娘がうらやましい!
ウチの娘は、保育園年長ぐらいのときから素っ気ないところがありました。他のお子さんは親を見つけると手をふったり、笑顔で駆け寄ったりします。
ところがウチの娘はというと、私を見つけて笑顔になるどころか、目をそらして知らないフリ。「ちょっとちょっと、確かに今、こちらを見ましたよね?」と、私の方が駆け寄りたくなることがよくありました。
自分で言うのもなんですが、見た目も言動も、ごくフツーの母親だと思うのですが…。
思えば、2歳半から独立心のある娘
思えば娘は、2歳半にして親から離れて同居の祖父母の部屋で寝ていました。ちょうど弟が生まれたタイミングで夜泣きもひどかったので、私は正直「助かる」と思いつつ、親としては申し訳なさと寂しさが入り混じった複雑な気持ちでした。
ところが当の娘は
「おやすみ〜!」と明るくサバサバしています。
また、小学生になってもテーマパークには興味がない、旅行も、スキーも、洋服も買いに行きたくない娘。
「親と出かけるより、友達と遊ぶか、家でまったりしていたい」というドライぶりでした。親などまったく眼中にない、といった様子で私はひそかに「もっと一緒にいろいろな経験をしたり、楽しんだりしたいなぁ」と思っていました。
19歳になって一人暮らしを始めると…
そんな娘も大学入学を機に一人暮らしを始めました。実家からは電車で2時間半ほど離れた、今までとは違う便利な生活環境で、勉強に、アルバイトにと充実した生活を送っているようです。
初めての夏休みに帰省したときには「たまには一緒に外食を!」と思っていたのですが、やれ友達と花火だ、お祭りだと、スケジュールはいっぱい。食事は叶わず、とうとう一人暮らし先へ帰る日となりました。
いつもは駅まで車で送り、私は車の中から電車が出たのを確認して帰っていました。でもその日は、特急列車が遅れていました。暗くなってきた田舎の小さな駅に娘を置いていくのが心配で、私も一緒にホームで待つことにしました。
「水分をとりなさいね、食べ物はちゃんと常備して…」と最後まで口うるさい私に、娘は
「わかったって!」とあきれている様子。すると、思ったより早く電車が来て、娘は無事に乗車できました。
席を見つけて荷物を置くと、電車はゆっくりと動き出します。すると次の瞬間、娘が驚くような行動に出たのです。
娘の行動に涙
娘が私の方を見て、笑顔で手をふったのです。「えー!! 手ふってる!? どうしよう、なんか恥ずかしいけど、でも返さなくちゃ」私は、驚きと照れと半信半疑と… いろんな感情が入った手を少しだけ上げて、左右にふってみました。見ると、車窓の娘は笑っています。
車に戻ると、私はしばし呆然とし、それから無性に悲しさと寂しさが込み上げてきて、泣いてしまいました。「娘はもう子どもじゃない、成長して1人の大人になったのだ」と実感したのです。
子ども時代もかわいいけれど、大人になるのもまたいい
娘は今では、高2の弟の良き相談相手になっているようです。
反抗期の息子は親には多くを語らないので、私は娘を通して情報を得たり、時には諭されたりと、本当に頼りになる存在になっています。
進級すると忙しくなると言うので、思い切って
「忙しくなる前に、母娘2人旅はどう?」とおそるおそる提案してみると…
「えぇ? …んじゃあ行くか」と快諾とはいきませんでしたが、なんとかOKしてくれました。
はじめは
「子どもが大人になるのは寂しい」と思っていましたが、こんな日が来るなんて「親子関係が成長するのもいいものだなぁ」としみじみ思うこの頃です。
そう思っていると、娘は最後にこうつけ加えました。
「ただし、ホテルの部屋は別々ね!」
…ですよね!
(ファンファン福岡公式ライター / 柴田真千子)