5歳・7歳の息子を持つママライター、永野栄里子です。
前回、ネット依存症の多くは、「オンラインゲーム」に依存しているというお話をしましたが、ゲーム依存症は「ゲーム障がい」ともいわれ、国内だけでなく世界でも深刻な問題とされています。小学生や中学生のなかには、娯楽としてゲームを楽しむ子どもも多いなか、どのようにゲームと付き合っていけば依存症にならずに住むのでしょうか?
今回は、小学生・中学生のゲーム依存症の原因や兆候、どういった問題が起こるかなどを解説します。家庭でできる対策も知り、子どもが安心して楽しめる環境作りをしていきましょう。
ゲーム依存症とは?1日何時間やると依存症?
ゲーム依存症は「ゲーム障がい」といい、WHO(世界保健機関)でも国際疾病分類に加えられています。まずは、ゲーム依存症の定義や、何時間ゲームをすると「依存症」の部類に入るのかを確認しましょう。
ゲーム依存症の定義
ゲーム依存症は、「ゲームをする時間や意思をコントロールできず、日常生活よりもゲームを優先してしまう」状態を指します。習い事や宿題など、やるべきことがあってもゲームを優先してしまう、翌日学校があっても夜遅くまでゲームに熱中してしまうなど、それまで「当たり前」だったことができなくなるのも、ゲーム依存症の特徴です。
小学生や中学生のゲーム依存症は、ネット依存症と同じくらい深刻視されています。これは国内だけでなく世界でも同様で、WHOは2019年5月に、「ゲーム障がい」を国際疾病分類としました。
WHOが定めるゲーム障がい(ゲーム依存症)の定義には、次のようなものがあります。
・ゲーム時間などのコントロールができない
・生活上の関心事や活動よりもゲームを優先する
・問題が起きていてもゲームを続ける
・個人、家族、社会、教育、職業やほかの重要な機能分野において、著しい障害を引き起こしている
上記が12ヶ月以上続く場合、「ゲーム障がい」だと診断され、12ヶ月未満の場合も4つの症状が重症であれば、「ゲーム障がい」の診断がつくこともあるようです。
ゲーム依存症は1日何時間?
1日何時間ゲームをしていると「ゲーム依存症」とされるか、具体的な数字は示されていません。しかし、週30時間以上、1日4~5時間以上ゲームをしていると、ゲーム依存度が高まるといわれています。
2022年に長崎大学の今村明教授らが、長崎県内の小学4年生から高校3年生を対象に実施したアンケートによると、ゲーム依存症の傾向にある子どもの平日のゲーム時間は、依存度の低い子どもと同じく2時間以下が多いものの、休日になると6時間以上ゲームをするという回答が最も多かったそうです。
ゲーム依存症については、「ゲーム時間よりも、使用のコントロールができるかどうか」「生活の中心がゲームになってしまい、日常生活に悪影響が出ているか」という点も診断の観点となりますが、コントロールができない、日常生活に支障を来すというのは、やはりゲーム時間が長くなることにつながるでしょう。
小学生・中学生のゲーム依存症割合
前述の長崎大学の調査によると、ゲーム依存症に該当する可能性がある小学生は7.3%、中学生は7.5%でした。ゲーム依存症かどうかにかかわらず、新型コロナウイルス流行後は、プレイ時間や課金額が増えていることも、同研究でわかっています。
また、ゲーム依存症の可能性がある小学生・中学生は、ゲームに費やす時間や金額が多いだけでなく、インターネット依存や不登校、情緒・行動に問題を抱えるなどの特徴も見られるようです。
ゲーム依存症になるのはなぜ?原因や兆候は
深刻なゲーム依存症にならないためには、そもそもなぜゲーム依存症になるのか、ゲーム依存症になりかけているときはどういった兆候が見られるのかを理解することも大切です。ここからは、ゲーム依存症の原因と兆候について解説します。
ゲーム依存症の原因
ゲーム依存症の原因にはさまざまなものがありますが、依存してしまう原理はその他の依存症と変わりません。ゲームによる刺激で脳内にドーパミンが分泌されることで依存が形成されます。そして、前頭前野の機能が低下し、感情のコントロールができなくなるのです。
小学生や中学生は、この前頭前野がまだ発達段階なので、よりゲーム依存症になりやすいともいわれています。
環境がゲーム依存を引き起こす原因になることもあります。引きこもりや不登校、現実世界でコミュニティを形成できないことからゲームの世界に没頭するようになる、家族の関係があまりよくなく、家庭内に「居場所がない」と感じる、趣味や習い事など、やりたいことが見つからないのも、ゲームに依存する要因の1つです。
要注意!ゲーム依存症に見られる兆候
ゲーム依存症には兆候が見られます。次の8つのなかで当てはまるものが多ければ、ゲーム依存症になりかけている、すでになってしまっている可能性が高いといえます。
・ゲームをする時間が非常に長くなった
・夜遅くまでゲームをしている
・夜更かしの反動で朝起きられない
・ほかのことをしていてもゲームのことが気になっている
・ゲーム以外のことに興味を示さない
・注意(特にゲームについて)すると、感情的に怒る
・ゲームの使用についてうそをつく
・課金額が多い
兆候が見られたら、まずはゲームの時間や生活について注意をしてみましょう。もし改善されれば、大きな問題はないといえますが、注意をしても変わらない、反発するようであれば、ゲーム依存症になっていると考えられます。
ゲーム依存症はなぜ危険?特徴や問題を紹介
ゲーム時間が長く日常生活に支障を来すという時点で、ゲーム依存症がよくないものであることはわかりますが、世界でも危険視されるのは脳への影響もあるからです。ゲーム依存症の特徴、ゲーム依存症になると起こりうる問題にはどのようなものがあるのでしょうか。
ゲーム依存症に見られる特徴
ゲーム依存症の特徴は、兆候と同じ部分もあります。ゲーム時間が長くなる、夜更かしや寝坊が増える、さまざまなことへの興味・関心が薄れるといったことのほかにも、以下のような特徴が見られます。
・外遊びが減る(なくなる)
・睡眠不足になる
・言動が攻撃的になる
・家族関係が悪化する
・成績が下がる
ゲームのことばかり考えてしまい、外で遊んだり勉強したりという時間がどんどんなくなっていくのも、ゲーム依存症の特徴です。また、前頭前野の機能低下により感情がうまくコントロールできないと、攻撃的な言動による家族間での衝突が増えてしまうこともあります。
ゲーム依存症は脳にも影響
ゲーム依存症で前頭前野の機能が低下すると、理性がきかなくなり、本能や感情に支配されやすくなります。ゲーム依存症の人の脳は、アルコールやギャンブルへの依存度が高い人と同じような反応を示すこともわかっており、ゲームを見ると脳に異常な反応が見られます。
「ゲームがしたい」という衝動的な欲求が押し寄せる依存状態が続けば、前頭前野の機能はどんどん低下し、ゲームへの欲求がエスカレートするので、依存している時間や期間が長ければ長いほど、脳が正常な状態を取り戻し、ゲーム依存から抜け出すのが難しくなるといえるでしょう。
ゲーム依存になると起こり得る問題
ゲーム依存症になるとさまざまな問題が生じますが、小学生・中学生にとって、最も大きな問題となるのは「不登校」でしょう。夜遅くまでゲームをして朝起きられない状態が続くと、遅刻や欠席が増え、だんだん学校に行かなくなります。
生活リズムの乱れや学習時間減少から成績が下がるのも、不登校になる原因の1つです。ゲームは室内でできるので、不登校から引きこもりになってしまうケースも少なくありません。
また、前頭前野の機能低下によって「理性」がきかないことで、ものを壊したり身近な家族に暴力を振るったりということもあるようです。こうした生活への影響だけでなく、視力低下、眼精疲労、長時間のコントローラー操作による腱鞘炎、運動不足など、身体の不調を引き起こす可能性もあります。
小学生・中学生がゲーム依存症にならないための家庭での対策
ゲーム依存症にならないためには、「ゲームを全くしない」というのも1つの方法でしょう。しかし、友達と一緒にプレイしたり話題にしたりと、ゲームはうまく活用すればコミュニケーションのツールになります。体も心も発達段階の小学生・中学生は、家庭で対策しながら上手にゲームを楽しむことが大切です。
ゲームについてのルールを決める
ゲームをする際に重要なのは、ルールを決めることです。ゲームに費やす時間やお金のことのほか、「宿題が終わってから」「勉強した分だけゲームができる」「オンライン通信は知らない人としない」など、内容は具体的にしましょう。
ルールを決める際には、子どもが納得できる内容にすることも大切です。子どもが納得できない内容では、いくらルールを決めても守ることができません。
家族での会話を増やす
家庭内での会話を増やすことは、ゲーム時間の減少につながります。また、コミュニケーションを密にすることで信頼関係が築ければ、子どもがゲームに関するルールを守っているかも確認しやすいでしょう。
親子でできる趣味を見つける
ゲーム以外に楽しめるものがあると、ゲームから離れる時間がより増えます。子どもが好きなことや習い事を始めるのもよいでしょうが、親子でできる趣味を見つければ、コミュニケーションの機会が増えて関係もよりよくなるのでおすすめです。
【小学生】ゲームの時間や内容を管理する
最近は制限機能やペアリング機能で、ゲーム時間や内容を保護者が管理できるゲームも増えています。年齢の低い小学生は、こうした機能を活用して家族がルールを守れる環境を作ってあげることも大切です。子どもにもわかりやすいよう、タイマーを使って時間を測るのもよいでしょう。
【中学生】家庭を「居心地のよい」空間にする
中学生になると、思春期ならではの悩みを抱えることもありますし、保護者が全て管理するというのは現実的ではなくなってきます。学校があまり居心地のよい場所ではないと感じる中学生も少なくなく、そのうえ自宅でも心が安まらなければ、自室に引きこもりゲームの世界に逃げたくなるのも無理はありません。
中学生のゲーム依存症を防止するには、「居心地がよい」と思える家庭の空気を作ることも大切です。干渉しすぎず、しかしコミュニケーションを大切にし、リラックスできる空間が家庭内にあると感じれば、ゲームの時間も減っていくでしょう。
小学生・中学生のゲーム依存症は増加している!正しい使い方で楽しく遊ぼう
大人も子どももなってしまう可能性があるゲーム依存症(ゲーム障がい)は、心身にさまざまな悪影響を与えます。特に、脳が発達段階の小学生・中学生は、感情やゲームの時間などのコントロールがうまくできなくなり、依存傾向に陥りやすいため注意が必要です。
小学生や中学生のゲームやインターネットへの依存は高まっています。正しい使い方やルールを家庭で話し合い、子どもが「楽しい」と思える環境や物事に取り組みながら、ゲーム依存症を予防・改善していきましょう。
【参考】
すらら https://surala.jp/home/column/psychology/7115/
https://surala.jp/home/column/psychology/7113/
https://surala.jp/home/column/psychology/6645/
NHK https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_883.html
長崎大学 https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/science/science284.html