小学生・中学生のネット依存症の割合は〇%!症状や抜け出す方法は

5歳・7歳の息子を持つママライター、永野栄里子です。

インターネットの普及は私たちの生活を快適かつ便利にしていますが、同時に「ネット依存症」という深刻な症状に悩まされる方も存在します。この傾向は大人だけでなく、小学生・中学生といった低年齢の子どもにも起こっているため、ご家庭でも注意が必要です。

今回は、小学生や中学生のネット依存症の割合、兆候やなってしまった場合に起こり得る問題、抜け出すためにご家庭で何ができるのかなどを解説します。

目次

ネット依存症とは?小学生・中学生の依存症割合

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ネット依存症は名称の通り、インターネットに依存してしまう症状を指します。まずは、ネット依存症の定義や原因、小学生や中学生のネット依存症割合について見ていきましょう。

ネット依存症の定義

医学的には、ネット依存症の定義は明確に定まっていません。あえてネット依存症を定義づけるならば「生活面や健康面よりもインターネットを優先し、インターネットの使い方や使用時間をコントロールできない状態」だといえます。

ネット依存症は大きく「ゲーム」と「その他」に分けられ、「その他」にはSNSや動画サイト、掲示板などへの依存が含まれます。ネット依存症の多くはゲームへの依存度が高く、このような傾向からネット依存症が「インターネットゲーム障害」などと呼ばれることもあるようです。

なぜネット依存症になる?

ネット依存症の大きな原因は、オンラインゲームの過剰な使用です。従来のオフラインゲームは個人的に楽しむものでしたが、現在はオンライン通信のおかげで、世界中の人とリアルタイムにプレイできるようになりました。

自宅にいながら複数人で遊べること、チャット機能や対話機能を使ってコミュニケーションを取りながらプレイできること、時間を問わず誰かがゲーム内にいることなどから、オンラインゲームを過剰に使用し、そこからネット依存症になってしまうという人が多いようです。

ゲーム以外にも、友人同士でのメッセージのやり取りや通話の習慣化が、ネット依存症につながることもあります。「会話に参加できないと仲間はずれにされる」「メッセージを無視するとグループから追い出される」など、一種の「強迫観念」により常にスマホが手放せなくなり、ネット依存症になってしまうというケースは、中高生に多く見られます。

子どものネット依存症割合

KDDIが2021年に発表した調査によると、小学生のネット依存率は2019年が10.2%、2020年が13.7%。中学生は2019年が15.3%、2020年が18.9%でした。2020年は新型コロナウイルス感染症の流行が始まり、「おうち時間」が増加した年でもあります。こうした環境も、小学生・中学生のネット依存率増加につながっているといえるでしょう。

Time & Space https://time-space.kddi.com/au-kddi/20210302/3071

ネット依存症の小学生・中学生に見られる兆候

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ネット依存症は、ある日突然深刻な症状が現れるわけではありません。小学生・中学生がいる家庭ではネット依存症の兆候を把握し、できるだけ早い段階で依存症を食い止める必要があります。

ネット依存症の兆候としてよく見られるのは、次のようなものです。

・オンラインゲームやインターネットの使用時間が以前よりも大幅に長くなった
・夜中もゲームやスマホに熱中している
・朝なかなか起きられない
・ネットに関連すること以外に、興味を示さなくなった
・ほかのことをしていても、ゲームやスマホを常に気にしている
・ネットの使用に関して注意をすると、激しく怒った様子を見せる
・ネットの利用目的・使用時間などについてうそをつくようになった
・長時間ネットを使用する前よりも、成績が下がった

当てはまるものが多いほど、ネット依存症の疑いがあるといえます。

ネット依存症になると起こる問題は?

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「何よりもネット優先の生活になってしまう」「ネットに関することで自分をコントロールできない」という時点で、ネット依存症が深刻な症状なのはわかるでしょう。実際、ネット依存症はさまざまな問題を引き起こす可能性があるものです。

ネット依存症が引き起こす問題

ネット依存症になると、ネット中心の生活により心身の健康が損なわれます。食事や睡眠よりもネットを優先することで、栄養不足や体力・骨密度などの低下、睡眠障害が起こる可能性が高まります。

栄養や睡眠が足りないことやネットの世界に依存しすぎることによる、精神面への影響も深刻です。感情のコントロールがうまくできなくなり、周囲に攻撃的な言動をするようになったり、現実と向き合うことや社会と関わることが面倒になったりと、生活に支障を来すケースは少なくありません。

食欲不振、不眠、無気力などはうつ病とも似た症状で、自ら命を絶ってしまう恐れがあるような状態に陥ってしまう場合もあります。

ネット依存症は、身体にもダメージを与えます。スマホやパソコン、ゲーム機器の長時間の操作は、手指の腱鞘炎を引き起こすこともあるでしょう。また、画面を見続けるのは眼精疲労や視力低下などの原因になります。

ネット依存症は社会的なトラブルにも注意!

本人の心身に多大なストレスや悪影響を及ぼすネット依存症ですが、問題はそれだけではありません。攻撃的な言動が増えることで家族関係や交友関係が悪化する、うつ状態が続き引きこもりになってしまうなど、社会的なトラブルに発展するケースもあります。

生活リズムの乱れにより朝起きられない状態が続けば学校への遅刻は増えますし、徐々に休みがちになり、不登校になる子どももいます。寝不足や無気力な状態が学業にも影響を及ぼし、成績が下がってしまう、授業についていけないことが不登校の引き金となることもあるようです。

ネット依存症は克服できる?

子どもにネット依存症の兆候が見られる、明らかにネット依存症だと感じた場合、家族は「克服できるのか」「元通りの生活ができるのか」と不安に思うでしょう。ネット依存症の克服・症状の改善は可能ですが、子どもだけの力ではできません。

現在の情勢で、家庭内でネット環境を完全に排除するのはほぼ不可能です。そこでネット依存症の克服には、ネットの利用時間を減らす、依存するコンテンツのみを排除するといった行動が求められます。家庭内でのネット利用については、家族の協力や理解が必要です。

また、医療機関での検査や治療を受ける場合もあるため、特に保護者は子どもがネット依存症から抜け出すためのアクションを、積極的に起こす立場にあるといえます。

小学生・中学生がネット依存症から抜け出すために、家庭でできること

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小学生・中学生のネット依存症は、その後の人生にも大きく関わる可能性があるため、できるだけ早い段階で克服・改善することが大切です。ネット依存症から抜け出すために、家庭ではどういったことを実行していくとよいのでしょうか。

家庭内での会話を増やし、子どもを理解する

子どもがネットに費やす時間が増え、家庭内での会話が減ったと感じる場合には、会話を増やす努力をしましょう。子どもは「叱られたくない」「いやなことをいわれたくない」という気持ちから、会話を好まない場合があります。ネットに関する注意や勉強・学校の話ばかりにならないよう、挨拶から始めるのがおすすめです。

「おはよう」や「おやすみ」、「いただきます」「ありがとう」など、当たり前だと思われるやりとりが自然にできるようになったら、ネットの使い方や今後について少しずつ話し合うとよいでしょう。

子どもを理解することも、ネット依存症を克服するためには重要です。いくらコミュニケーションが取れるようになっても、よくわからないまま「ネットはよくない」と話しても、子どもは心を閉ざしてしまいます。ネットで何をしているのか、なぜ熱中しているのかを理解すれば、「ネットとうまく付き合っていく方法」を一緒に考えることができます。

第三者とのコミュニケーションの場を作る

ネット依存症から不登校、引きこもりになってしまうと、ネットの世界だけでしか他者と関われません。現実での交流をしない時間が長くなると、感覚や感情が繊細になり、より他人と関わるのが難しくなることもあります。

家族でのコミュニケーションが取れるようになったら、第三者と関わる場を作ることも、ネット依存症克服には必要です。近所の方や保護者の友人など、親しい大人から始めるのもよいでしょう。徐々にその人数を増やしていけば、学校へ行く、教室に入る、同級生とコミュニケーションを取るといった行動も、段階的にできるようになっていきます。

好きなことを一緒に見つける

ゲームやSNSなど、没頭しすぎてしまうものへの熱量を下げるには、その次に好きなこと、興味のあることを作るのが最も有効です。ネット依存症になるとそのほかのことに無気力になりがちですが、趣味や習い事などを新たに始めたことが、ネット依存症を抜け出すきっかけになったという声も少なくありません。

これまで触れてこなかったものに興味を持てるような環境を家族が提供し、趣味や習い事を一緒に見つければ、子どもの「好きなこと」を理解できます。一緒に取り組んで、子どもの「好き」を共有するのも、コミュニケーションの方法としておすすめです。

インターネットの使い方を共に見直す

ネット依存症から抜け出すには、インターネットの使い方を改めて見直し、ルールを決める必要があります。しかし、「ネットは1時間まで」「22時を過ぎたら終わり」などと、いきなり一方的なルールを押しつけても、症状の改善は期待できません。

大きなゴールは「ネット依存症の克服」ですが、そのためには小さな目標を1つひとつクリアしていくことも重要です。いきなり厳しいルールを強いるのではなく、「朝きちんと起きられる時間に寝よう」「それは何時だろう」と子どもと話し合いながら、クリアできる小さなゴールを決めましょう。ルールを決める際は、ぜひ家族のインターネットの使い方も見直してみてください。

家族・本人の相談や治療の場を見つける

ネット依存の症状が比較的軽ければ容易に克服できる場合もありますが、重度のネット依存症を克服するのは、決して簡単なことではありません。家族が相談できる場所を見つけること、子どもの状態によっては治療を行っている施設や医療機関に頼ることも必要です。

自治体や非営利団体など、ネット依存症に関する相談を受け付けている窓口は多く存在します。知識のある第三者に話を聞いてもらうことは、家族の精神的な負担の軽減にもつながるでしょう。

治療に関しては、都道府県や政令指定都市の精神保健福祉センター、メンタルクリニックなどで対応しています。家族はもちろん、子ども自身も「克服したいのにできない」という苦しい思いにできるだけ悩まされないよう、必要に応じて相談や治療も検討してください。

ネット依存症は克服できる!家庭での会話を増やし徐々に改善を

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現実の生活よりもネットの世界を優先し、のめり込んでしまうネット依存症は、さまざまな問題を引き起こします。小学生・中学生のネット依存症は増加傾向にありますが、相談しながらルールを決めてネットの使い方を考えるだけでも、予防や改善につながります。

家庭内でのコミュニケーションを大切に、上手にネットと付き合っていきましょう。

【参考】
Allight EDUCATION https://allight.org/internet-addiction-7hints/
東洋経済ONLINE https://toyokeizai.net/articles/-/462372

※この記事内容は公開日時点での情報です。

著者情報

大学・大学院にて日本語学を専攻し、修了後は日本語学校に非常勤講師として勤務。2018年よりウェブライターに転身し、さまざまなメディアで記事を手がける。2人の子を持つ「ママライター」として、日々育児に仕事に奮闘中。

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