ポートワインはリスボンから北へ300キロほどの、ドウロ地方で作られたワインを、ドウロ川河口のポルトという港町で熟成、出荷する…世界三大酒精強化ワインのひとつです。
ドウロ地方はドウロ川とそれを覆う山々に囲まれた山奥で、山から川へ向かうダイナミックな急傾斜は一面のブドウ畑。こんなところで葡萄を栽培してワインを作るなんて、ものすごい気合と根性、思い込みと意地…イタリア人の友人がよく言うところのカルマなる物が必要なのではないかということを感じます。 ドウロは、1755年の大地震で壊滅後再建されたリスボンや、観光客であふれるポルトの町のそこそこにおしゃれ(洗練といえないところがポルトガル…)な雰囲気は微塵も感じさせないディープなポルトガルを体感出来る場所ではないでしょうか。 日本ではサントリーの創始者、鳥井信治郎氏がポートと出会い「日本でもこんな美味しいものを売り出したい」と明治40年から赤玉ポートワイン(本家から厳重注意をうけ現在は赤玉スウィートワインと改名)なる大ヒット商品を世に送り出したことが有名で、今回はそんな鳥井さんも私も大好きポートワインと、私の海外ワインショップでの悪戦苦闘とそれにより得たアレコレをお話したいと思います。 世界三大酒精強化ワインって? ①ポート…ポルトガル北部で作られます。ワインを醸造する途中でブランデーを添加してアルコール発酵を止めてしまうのでほとんど甘口に仕上がります。赤ワインベースのポートを「ルビーポート」、白ワインベースのポートを「ホワイトポート」、ルビーポートを樽で酸化熟成させたものを「トウニーポート」と言います。酒精強化ワインの中では最も軽く、気軽に飲める印象です。
②マデイラワイン…大西洋に浮かぶポルトガル領のマデイラ島でつくられます。(サッカーのクリスティアノ・ロナウドの出身地だそう)。ポートと同様に醸造の途中でブランデーを足すのですが、そこから太陽光や、温水を使用して加熱処理を加え、温かみのある懐かしい味わいに仕上げます。
③シェリー…スペイン南部アンダルシアで作られます。白ワインをベースにしたもののみで、産膜酵母という独特の酵母をワインの表面に発生させ、独特の香りを持たせます。ポートやマデイラと違い、完全にアルコール発酵が終わってからブランデーを添加するため完全な辛口につくられますが、それに甘いペドロヒメネスなどをブレンドして、甘口も作られます。
ポートの分類
葡萄の品種は トウリガ・ナショナル、 トウリガ・フランセーザ、 ティント・カン ティント・バロッカ… やっぱりあまり聞いたことのないポルトガル固有の品種から作られますね…。 普通はおそらく赤ワインの醸造途中でアルコール添加して甘口にしただけでは、腰の砕けた弱々しい甘さのワインになってしまいます。 …が、そこはパワフルポルトガル。 収穫した葡萄をラガールという槽に入れて沢山の人の足でわっしわっしと踏み潰して果汁を搾るんですね。 そうすることによって葡萄の皮や種からしっかりとポリフェノールやタンニンが果汁の中に染み出し、結果頑強でフルボディのベースとなるレッドポートができるとのこと。 前回 できた若いポートをテイスティングし… 果実味にあふれパワフルなものをルビーポートに、 そして軽く、酸化熟成に向いていそうなものはトウニーポートにするんですけども それぞれの中で、葡萄の出来のよい年からのみ作られるスペシャルヴィンテージのものや、 単一ヴィンテージのもの。複数の収穫年をブレンドするもの。 樽や瓶の中でどのくらい熟成させていくのかで、色も味わいもお値段もまったく異なっています。 日本でよく見かけるのは気軽に飲める普通のルビーポートや、最高峰といえるヴィンテージ、LBVなどでしょうか。 スタイルをランクの順に簡単に紹介いたします。 ルビータイプ ・ヴィンテージ:葡萄の出来が特に良かった年のみ作られるポートの最高峰。10年に2~3度しか作られません。 ・シングルキンタヴィンテージ:ヴィンテージの一種。ひとつの畑からとれた葡萄のみから作られるので畑の個性が前面に出ます。 ・LBT(Late Bottled Vintage):ヴィンテージに次ぐグレードのポート。 注)これら最上級の葡萄を使っているので、長期に熟成していきますし非常に香り高く、複雑な味わいで渋みと甘み酸味のバランスが取れ、他のタイプとは一線を画しています。…お値段的にも。 ・ヴィンテージキャラクター:単一年ではなく複数年のポートをブレンドして作るがスペシャルタイプ用の葡萄からのみ作られるので高品質。 ・ルビー:最も一般的に飲まれる、親しみやすく軽い甘みを持つポート。 トウニータイプ ・コリエイタ:トウニータイプのヴィンテージ。 ・熟成年数表示トウニー:複数年のポートをブレンドしてつくる、10、20、30、40年の4タイプがある。 ・トウニー:複数年のポートをブレンドして樽で熟成。渋みが穏やかで、優しい味わい。 注)トウニータイプのポートは樽で長期間熟成され、飲む直前に瓶詰めされます。リスボンのワイン店へ行っても、ポートの蔵元へ行っても、一押しはこのコリエイタや熟成年数表示トウニーでした。樽で熟成することで味わいに深みが増す…渾身の商品なんだと感じました。
ホワイトポート ・ライトドライ:アルコール度数が低く、華やかな香りを持つ。 ・ホワイトポート:すっきりした味わい。日本の酒販店にもあります。ライトドライタイプを冷蔵庫に冷やしておいて午後のお客様と楽しむのがスキです。 ポートおすすめの飲み方 ポートはシェリーやマデイラと比べて、軽やかで優しい味わいが特徴だと思います。 一番の消費国であるフランスでは「疲れを癒す」飲み物として、食後や寝る前にゆっくりと飲まれます。 同じ酒精強化ワインであるシェリーが、スペインではお祭りのお酒、アンダルシア地方限定のお酒であることに対して、ポルトガルでは、全国的にポートを飲みます。カフェで。夕食前後に。寝る前に。ホテルのウェルカムドリンクに。皆ポートを飲んでいらっしゃいました。特にカフェで美味しいお菓子とともにいただくトウニーは絶品です。
トウニーの酸化熟成による滑らかな酸味と落ち着いた渋み、優しい甘みは心と体にしみこみます。 疲れを癒す…頭をリフレッシュさせる。 まさに大人のおやつですネ☆ ワインショップでの悪戦苦闘 さて、私はワインを専門に仕事をしていますが、元来すぐに調子に乗るので海外へ行ってワインショップに入るととたんに舞い上がります。
普段からお付き合いの多い、フランスやイタリア産のワインなら働く頭も、イギリスのシングルモルトショップで、スペインのワイン専門店で・・・日本で売っているものを日本よりも高く買ってしまうという…同業の先輩方には恥ずかしくてとても言えない失敗を経験してきました。(ちなみに北ヨーロッパではアルコールの高さで酒税法が違うので、一部のお酒に関しては非常に高額です) そんな失敗も何度か繰り返すと、さすがに「これではいかん」と学ぶわけで あまり普段接することのないワインの産地へ行く時にはまず、教本を開き、気になる原産地呼称をメモしてから行くことにしています。 今回、ポルトガルへは 白ワインではエンクルザードとマルヴァージア・フィナ。 赤ワインはコラレス…なんとなく決めていきました。 お店へ入って「伝統的な造りのコラレスがほしいんだけど…」という話をきっかけに店主とどんどん話を広げていくことができますし、そこから案外なワインとのうれしい出会いをいただけたりします。 「美味しい白ワインください」とお店へ入るのと 「マルヴァージアを探してるんです。伝統的なのと、モダンなものを飲み比べたい」と入るのとでは出会うワインが違う…。 産地特産のワインはネットで調べればすぐに出てきますので、訪れる国や地域が決まればぜひ少し調べてみると楽しいと思います。 そして… ポルトガルは治安の良いところですが、やはり観光客は狙われると聞きました。 それって、たとえば、私がなれないワインショップで舞い上がってスキだらけになるのと同じで、自分の油断を悪意を持った他者に見ぬかれてしまうからではないでしょうか。海外では何があるかわかりません。 乗っていたトラムのドアが壊れて、運転手さんと近所のおじさんでこじ開けてても。
ケーキやに行って「テイクアウト」でケーキを買ったら この状態で手渡されて、チョコがどんどん垂れてきても。
「まったく想定内よ」という風情で、動揺しないようにしています。 特に私の場合は子供を連れていますので… にこにこしながらも、子供を連れたヒグマかトラぐらいの警戒オーラを出して町を歩いていると思います。 想定外のトラブル。 笑っちゃうようなアクシデント。 うっかりしたときに出会う、人の思いやり。優しさ それが旅の楽しみです。 ということで… 次回はポルトガルで覚えたおいしくて簡単ポルトガル料理をご紹介しますね☆