子どもがいよいよ小学校へ入学!時間にゆとりができることもあり、新たに仕事を始めようと考えている人や、より仕事に専念したいと思っているママも多いのではないでしょうか。しかし、ちょっと気をつけてほしいのがいわゆる「小1の壁」というものです。
小1の壁とは、小学校での学童保育時間が十分に確保されず子どもの放課後や夏休みのケアが困難になる問題。親の負担が増えたり、育児と仕事の両立に悩む親御さんもいるでしょう。
また、入学後の子ども自身のストレスなども問題に。親子で楽しいスクールライフを送れるようにするにはどうしたらのでしょうか。元保育士が小1の壁の原因から、対策方法まで考えてみました。
小1の壁とは?
小1の壁とは、保育園時代に比べて小学校入学後の学童保育時間が短縮することによる子どものケアと親の負担問題。保護者が共働きの場合、小学校入学後は放課後児童クラブという学童保育や児童クラブで放課後の時間を過ごすようになります。
この放課後児童クラブの開所時間が保育所よりも短くなると、子どもを今までのように預けることができなくなり仕事に支障をきたしたり、家事や仕事の両立が困難になる場合がでてきてしまうのです。
小1の壁は保育時間の減少だけでなく、子どもの宿題をみたり、提出物や書類のチェックなどの親の負担が増えることも悩みの一つになっています。
放課後児童クラブについて
小学校へ入学後子どもたちが過ごす放課後児童クラブとは、児童福祉法における第6条の3第2項における「放課後児童健全育成事業」の通称。学校の敷地内や児童館に隣接されている学童保育のような公設公営型と、民間企業に運営を委託している公設民営型があります。どちらも主に共働き家庭等の小学生に遊びや生活の場を提供して、健全な育成を図る施設です。
この放課後児童クラブの利用可能時間などをめぐり仕事と子育ての両立が困難になってしまう問題【小1の壁】が起きているのです。
小1の壁の原因
1. 保育時間の短縮
一般的な認可保育園では、月120時間の就労をしている場合、通常保育時間が朝8時30分から16時30分に設定しています。保護者の就労状況によっては延長保育をお願いすることができ、朝7時から夜は19時頃まで保育が行われています。私立保育園などではさらに夜遅くまで預かってもらえる保育園もあり、急な残業や保護者のシフトに合わせて臨機応変に子どもを預けることができました。
一方、小学校の場合、朝の登校時間は8時。放課後は、授業終了後から19時までが学童保育時間とされており場合によっては保育時間が減少してしまうことに。
また、小学校に入ると行事や学級閉鎖などで学童保育が閉鎖されてしまうことも多々あり、共働き世代のお子さんの居場所がなくなってしまうのです。
2. 学童保育に入れない?!
小学校や児童館などで運営している放課後学童クラブを利用するには、入学前に所定の手続きが必要です。申請時期は大体入学前年の11月から12月ごろ。登録には時間もかかるので後回しにしていると4月から利用できないという事態にも。利用するには入所要件を満たすことを証明する書類(就労証明書等)が必要。
例えば、千葉県市川市の放課後保育クラブの申請には保護者及び同居者が以下の要件を満たす必要があります。
1. 就労の場合 就労日数が月15日(目安として週4日)以上で、帰宅が15時以降となること
2. 出産・疾病・障がい・通学・介護等の場合 左記事由により、放課後保育ができないこと(参照:市川市放課後保育クラブ | 市川市公式Webサイト (ichikawa.lg.jp))
これまで短時間パートなどで保育所やこども園の延長保育を利用していた場合、この条件に当てはまらずに学童自体が利用できなくなる可能性もあるのです。
3. 学校との連携や宿題管理の負担増
小学校に入ると、これまでなかった宿題や提出物の管理に追われるように。特に1年生は、勉強のペースになれるまではちょっとした宿題にもかなりの時間を要するように。音読を聞いてあげたり、算数の計算のサポートも家事の合間にしなければなりません。
小学校は親の出番が少ないといわれていますが、PTAや学年の役員になると、平日でも保護者の集まりがある場合も。先生や周囲の保護者との連携で仕事との両立が難しくなるのも小1の壁の原因の一つです。
保育園時代には送り迎え時に保護者と保育士で子供の様子を共有できましたが、小学校では先生に会えるのも年に数回。ちょっとしたことで質問しずらいという点もありますね。
小1の壁にぶち当たるのは親だけじゃない!?
今まで述べてきた小1の壁は子どもを育てる親側の問題でしたが、実は子どもにとっても大きな壁がたちはだかってしまうこともあります。
子どもが悩む小1の壁
幼稚園や保育園の小さなコミュニティーで過ごしてきた子どもたち。そこでは教育よりも基本的生活習慣を身につけたり、遊びや活動を通して社会性を学んできました。遊ぶのが大好き!体を動かしたい!という子どもたちにとっては、小学校へ入学してから始まる細かな時間割や勉強にとまどってしまう子もいるでしょう。
集中力が続かない
文部科学省の学習指導要領では1年生が受ける授業時間数は1年間で850時間。時間割にすると1コマ45分の授業を昼休みや給食を挟んで5時間目まで受けることになります。
子どもの集中力は個人差があり、何分でも座ってられます!という子もいれば10分で飽きてしまう子も。授業を受けるのが退屈に思えたり苦痛に感じるようになることも。
勉強についていけない
小学校入学後、まず勉強していくのが国語ならひらがな・カタカナ。保育園の頃から自分の名前や文字をスラスラかけていた子はスムーズに授業に参加できますが、文字を全く練習していなかった子にとってはついていくのが大変に思うでしょう。
特に、7歳くらいになると自我も芽生え、他者と自分の差を感じるようにもなり、勉強につまづいてしまうことで自信を失ってしまう子もいます。
学校や学童の行きしぶりも
このような状態が続くと、学校へ行きたくない!学童が嫌だ!と行きしぶりがでてきて、親子で悩んでしまうように。勉強だけでなく、先生との関係・クラスメイトとの友達関係などでも保育園幼稚園時代と比べて悩んでしまうこともあります。
学校行きたくない!といわれる朝。仕事もいかなけばならない親御さんにとってはどう説得すべきか、フォローも悩んでしまいますよね。
小1の壁を乗り越える方法
国が掲げる小1の壁対策
女性の社会進出、活躍にともない今や小1の壁は社会問題の一つ。国を挙げて考えていく大切な事案として、厚生労働省と文部科学省の連携のもと2019年~2023年の5年間で「新・放課後子ども総合プラン」を推進してきました。
主な内容としては、
1. 2023年度末までに計約30万人分の受け皿を整備すること。
2. 全ての小学校区で、両事業を一体的に又は連携して実施し、うち小学校内で一体型として1万箇所
以上で実施することを目指す。
3. 両事業を新たに整備等する場合には、学校施設を徹底的に活用することとし、新たに開設する放課
後児童クラブの約80%を小学校内で実施することを目指す
4. 子どもの主体性を尊重し、子どもの健全な育成を図る放課後児童クラブの役割を徹底し、子どもの
自主性、社会性等のより一層の向上を図る。
とされています。
(参照:放課後児童クラブ関連資料 (mhlw.go.jp)
今年度はこの計画の最終年。「新・放課後子ども総合プラン」の目標が達成できたのか、結果と課題を国からも提示してほしいですね。
地域の学童保育の情報収集
小1の4月から学童保育を利用したい人は、前年の秋ごろから地域の放課後児童クラブについて調べておくのがよいでしょう。まずはお子さんが通う小学校の学童クラブの申請方法。市区町村のHPなどにも掲載されていますが、分からない時には、先輩ママや通園先の保育園・こども園に相談してみるのもOK。
共働き世帯なら、それぞれの就労証明書を用意しておくとスムーズに申請が行えます。小学校の学童クラブの開所時間が仕事時間と合わないようなら、民設や民営の放課後児童クラブの利用も視野に、施設の見学などに行くのがおすすめ。場所によっては小学校から施設まで送迎してくれるところもあります。
民営の学童は開所時間が長かったりや保育内容が濃い分、費用が高いことも。どの程度負担が増えるのかも事前に確認しておくと安心です。
仕事の働き方をみなおしてみよう
1年生のうちは学校の行事などにも積極的に参加してあげたいという家庭もありますね。家庭の状況や考え方も千差万別。現在の勤務状況では、どうしても学童の時間には仕事が間に合わない場合には、お子さんが慣れるまでの間、仕事の勤務時間を減らしたり勤務形態を思い切って変えるのも小1の壁の対策になります。
在宅ワークができる場合は、在宅に切り替える。不要な残業をやめてスムーズに帰宅できるよう上司や会社に相談するのもあり。
パート勤務で就労日数が足りずに学童保育に申請できなそうな場合は、就労時間を増やすなど、減らすだけでなく時には増やす必要もでてきます。
子どもとのコミュニケーションを無理なく増やす
小1の壁に躓く子どもへのフォローも是非大切にしてほしい問題。仕事や家事に追われる中、時間も労力も足りないという親御さんもいるでしょう。兄弟がいる場合はなおさらですね。そんな時は無理のない範囲内で、子どもの自主性を見守りながら適度なフォローをしてください。
例えば、宿題や提出物のチェックは決まった時間に行うなどルーティーンの中に組み込んでみては。洗濯を畳む間に音読を聞いてあげる。食後のコーヒーを飲みながら丸付けしてあげるなどパパママの時間をうまく活用してみましょう。年上の兄弟がいる場合は、お兄ちゃんお姉ちゃんに宿題を見てもらうなども一つの方法。
ここで、注意してほしいのが適当にあしらうこと。お子さんは「ちゃんと音読聞いてくれてるかな?」「宿題できたこと褒めて欲しいな」と日々頑張っていることをきちんと親御さんに評価してほしいと思っています。
少しの時間でも手をとめて、お子さんの顔を見ながら話を聞いてあげたり、スキンシップをとって褒めてあげたり、学校の話も聞いてあげましょう。それがお子さんの自信につながり、自主性をのばし、学校への意欲にもつながります。
小1の壁を親子で乗り越えよう
小1の壁の問題は事前対策と親子間のコミュニケーションによって乗り越えられることも多々あります。親御さんも一人で悩みすぎることなく、仕事や育児との両立に疲れた時には、会社や学校、放課後児童クラブなどに相談してみましょう。地域のサービスを活用して無理なく進めてください。
子供自身が心身ともに大きく成長する6年間がスタートします。親が思っているよりもあっという間に過ぎて行ってしまいますよ。お子さんの健やかな成長をサポートしながら、是非親子で限られた小学校生活を楽しんでくださいね。