「連絡帳やノートをみてもなんて書いてあるか分からない」「テストで字が汚くてバツにされた」など、子どもの字の書き方に頭を悩ます親も多いのではないでしょうか。元保育士ライターもわが子の字が雑で悩んでいる一人です。
字は一度書き方のクセがついて定着してしまうとなかなか治りません。できるなら子どもが小学生のうちに綺麗な字を書けるようになってほしいというのが親心ですよね。習字や硬筆を習わなくても自宅で簡単に実践できる綺麗な字の書き方のコツや練習方法を調べてみました。
「字が汚い」は子どもの学習の悩み第1位!
小学生から高校生の受験・学習指導を行う臨海セミナーが2022年5月に実施した子どもの生活・学習に関する意識調査アンケート企画によると、「お子様の学習に関する悩みはありますか?」という問いに対し、小学生の親の悩みの第1位が「字が汚い」(35%)ことでした。
第2位はノートの使い方(25.4%)、第3位が周りの子と比べて我が子の学力がどの程度かわからない(25.3%)という結果に中学生の親のアンケートでも子どもの字が汚いという悩みは第3位にあがっており、多くの親が悩んでいることが分かります。
字が汚いままだと大人になった時に困るのではないかと心配している親も多いのでしょう。
【参照:結果発表 <小学生・学習編>|りんかいso・Re・na!|塾・学習塾 臨海セミナー (rinkaiseminar.co.jp)】
書道や硬筆を習っている小学生も多い
子どもの字が汚くて悩んでいるという親の中には、子どもに書道を習わせている家庭も。学研総合研究所が2022年9月に行った「小学生の日常生活・学習に関する調査」では、習い事をしている子は75%に及び、習字や硬筆を習っている子は全体の7位(7.3%)という結果が公表されています。
学年が上がるにつれて習字よりも中学受験にむけた進学塾や、通信教育など勉強の習い事をする子がふえており、字の綺麗さも重視したいものの、学力の向上にどうしても比重をおかなければならないという家庭も多いようです。
【参照:小学生白書Web版 学研教育総合研究所|学研 (gakken.jp)】
子どもの字が汚くなる原因とは?
「丁寧に書こうね」と何度言っても治らない子どもの字。どうして字が綺麗に書けないのでしょうか。字の上手さは遺伝によるものか環境要因によるものかなどははっきりとされていませんがいくつか考えられる原因もあります。
運筆が苦手
手先が苦手な子は運筆がうまくできずに、まっすぐ書く・はらう・ハネルなどの文字の基本から上手にできない場合があります。字のバランス感覚が身についていないと、自分の字のどこか良くないのか、お手本と比べても分からないという子も。
丁寧に書くのが面倒だと思っている
小学校中学年から高学年位の子どもに多いのは、きちんとかけば上手に書けるのにめんどくさがって適当な字になっている子ども。宿題を早く終わらせたい・早く遊びたいなどの理由から急いで書くことが習慣づいてしまい、そのうち“自分が読めればいいし”という気持ちになりどんどん雑な文字になってしまいます。
テストや作文、大事な場面では綺麗な字を書ける子は、基本的なバランス力や文字の書き順などは身についているので意識をただせば上達しやすいともいえます。
姿勢が悪い
文字を綺麗に書くには、正しい姿勢で正しい鉛筆の持ち方で書くのが大切ですが、姿勢が悪かったり、鉛筆の持ち方が間違っていると文字のバランスも崩れやすくなっていきます。
字が汚いことで起こるデメリット
小学生のうちは、字が綺麗にかけなくても子ども自身で困ることが少ない為、綺麗にかかなきゃという意識が持ちにくいですよね。子どもの字が汚いままだと、学生時代、大人になってどんなデメリットが発生するでしょうか。
入試やテストで減点される
国語のテストでは、字が汚いと減点になったりバツにされてしまうこともあります。特に、漢字はとめ・はね・はらいなどの細かい部分も採点に入ることもあるので、適当な字で慣れているとテストの点数が下がってしまう恐れもあります。
また、算数の計算では自分が雑に書いたことで0か6か、1か7かを見間違えてしまい計算間違いにつながってしまうこともあるでしょう。答案用紙の数字が汚いと採点する先生側もどっちの数字が分からずバツになることも。
これらは受験勉強にも直接的に影響をもたらします。もったいないミスが合否の運命を分けてしますことにもなりかねません。
社会に出てマイナスの印象を与える
就職活動を始めると、履歴書やエントリーシートを提出することになります。PCでのやりとりが多くなり直筆で何かを提出する場面が減っているとはいえ、文字を書かなければならない大事なシーンも沢山あります。
文字が綺麗な人と大人になっても子どものような字体の人ではどちらが好印象を持たれるでしょうか。やはり前者のほうが、きちんとした人・仕事も丁寧な人と見受けられますよね。
冠婚葬祭などでご祝儀を渡す際も基本は筆ペンで自分で書きます。字が汚いとそのような大切な場面で自分が恥ずかしい思いをすることにもなりかねません。
将来子どもに教えられない
字が汚いまま大人になり、父や母になった時、正しい文字の書き方を子どもに教えられるでしょうか。「パパだって汚いじゃん」「ママも子どもみたいな字だね」などと言われたら顔がたちませんね。
小学校や幼稚園の先生になった場合は子どもにキチンと文字を教えるのが仕事にもなります。大人になってから慌てて字の矯正をするというのも難しく、苦労することも増えてしまいます。
綺麗な字の書き方のポイント5つ
では、どうしたら字が綺麗に書けるようになるのでしょうか。自宅で子どもとできる綺麗な書き方のポイントをチェックしてみましょう。
1.正しい姿勢で
字を書く時の最初の基本は、姿勢を正すこと。文字を書く時だけでなく、本を読んだり絵をかいたりするときもきちんとした姿勢で行うことで集中力も身に付き精神的にも落ち着きます。
背筋をのばす
肩の力を抜き、背筋をのばすことでつかれにくい姿勢をとることができます。また、背筋をのばすと高いところから自分を文字を見ることができるので字のバランスを整えやすくなります。椅子のせもたれ、机お腹の間はこぶし一個分あけるようにします。
足は床につける
足の裏はきちんと床につけておきましょう。安定した姿勢を保つことができ、指先に力も入りやすくなります。小学校低学年、小さな子どもは椅子と机の高さから足がつかないこともありますが、そのような時には台を置くなどして足の置き場所を作ってあげるとよいでしょう。
両腕は「ハ」の字におく
文字を書く際には、両腕を「ハ」の字になるようにつくえにおきます。こうすることで、鉛筆がもちやすくなりノートや紙も動かず安定します。
2.鉛筆の持ち方
正しい姿勢がとれたら次は鉛筆の持ち方をチェックしましょう。正しい鉛筆の持ち方は運筆のしやすさにも影響を与えます。小さいうちからキチンとした持ち方で教えてあげるとよいですね。
親指・人差し指・中指で三角形を作る
鉛筆は親指・人差し指・中指の3本で優しく持ち、鉛筆の先から見ると三角形の形をしているようにセットします。
力は入れすぎず、そっとつまむような感じでOK。力をいれすぎると指タコができたり、手も疲れて集中力が低下します。なめらかに書くには3本の指で支えるのが大事なポイント!
3.間隔やバランスを大事にする
実際に文字を書く時は、文字のバランスを整えることでグッと上手になります。例えば、漢字の「三」という字や、「美」という字は横棒のすき間を同じくらいにするとバランスが良くなります。
ひらがなやカタカナを書く際には、線と線が接するところのすき間を揃えるように意識しましょう。
漢字練習ノートなど田の形のノートは文字のバランスをとりやすいです。中心を意識して上下左右の部屋のどこから書き出すのか、どこまで伸ばすのかなどをチェックして書くと上手に書けます。
4.真似っこ上手になる
字を綺麗に書くには、綺麗な見本を真似っこするのが一番! 小さい子には、間違い探しゲームのように見本と子どもが書いた字のどこが違うかを一緒に探してみるとよいですね。間違いがみつかったら、正しい文字を見てもう一度書いてみましょう。
字が綺麗な人の文字を沢山みることも大切。脳内でイメージする字が自然と綺麗な文字になり整えやすくなります。
間違いを一気に指摘するのではなく、一つずつ確実に直していくことがポイント。ダメな部分を言われすぎたら大人だってやる気をなくしたりへこんでしましますよね。子どもならなおさらです。
5.筆順はしっかり覚える
綺麗な文字を書くには、書き順もとっても大事。書き順を覚えるのは大人も苦労したという人が多いのではないでしょうか。筆順が決まっている理由は、運筆に無駄がなく、バランスよく書けるようにするため。書き順を守ると自然に漢字を速く綺麗に書くことができます 。
書き順は大人になっても一度ついたクセが治りにくいので、漢字やひらがなを覚える小学生のうちに正しく覚えておきましょう。間違って覚えていることもあるので、新しい文字を勉強する際には、親がそばでみていてあげるとよいですね。
文字の練習を年長娘と実践してみた!
綺麗な字の書き方のポイントを学んで実際にライターの子どもと字の練習をしてみました。現在娘は幼稚園年長。幼稚園でも入学にむけてひらがなのおけいこをしています。家でも通信教育などをとりいれていますが、漢字ノートに書くのは初めてです。
1.まず最初に何も見ずに「あいうえお」をかいてもらいました(写真の一番右側)。
2.次に見本(写真中央)をみてどこが自分の字と違うのかを間違い探しします。
娘の字ははらいやはねは上手にできているのですが、文字のバランスやカーブするところが子どもらしい丸っぽくなっています。
3.最後に見本をみて、真似っこしながら「あいうえお」を練習しました。(写真左側)
ひらがなの点の向きが正しくなり、特に「お」の文字は書き出しの位置やバランスが上手にとれるようになりました。
一度だけではまた元に戻ってしまうので、現在は毎日すこしずつ練習をしています。正しい文字の書き方が習慣付くようにサポートしています。
綺麗な字を書いて心も綺麗な子に
文字の上達は一朝一夕でできることではありません。小さい頃からの積み重ねや、毎日の練習が大事になります。子どもの文字を毎日チェックするのは忙しい親にとっては大変なことかもしれませんが、新しく学ぶ字や、連絡帳などの文字はできるだけみてあげて上手に書けていたらしっかり褒めてあげましょう。
“字の乱れは心の乱れ”ともいわれています。綺麗な文字を書けるようになれば、自然と心にもゆとりが持てて子ども自身にとってもよい影響を与えてくれるでしょう。
【参考文献】
「明日からきっと自信がつくコツ きれいな字のひみつ」 青山浩之 小学館