明治生まれの祖母のちょっと怖くて不思議な思い出をまとめた連載「祖母が語った不思議な話」終了時に多くの方からいただいた「続きが読みたい」の声にお応えした第2シリーズです。
小学一年生の冬のこと。
岡山に住む祖母の叔母が亡くなった。
ちょっとした風邪から肺炎になり、そのまま衰弱したのが原因とのことだった。
葬儀から戻った祖母は普段着に着替えるとほっと息をついた。
「おそうしき、どうだった?」
「急なことだったけど、皆そんなに悲しんではいなかったよ」
「そうなの?」
「全然苦しまなかったらしくてね。最期を看取った私のいとこにが言うには、いよいよ危ないというとき叔母は半身を起こして『ああハナが来た』と言って少し笑うと、そのまま亡くなったんだって」
「ハナ?」
「叔母が昔飼っていて、とても可愛がっていた猫」
「へえ」
「亡くなる二カ月ほど前に私がお見舞いに行ったのを覚えているかい?」
「うん。お土産にきび団子もらったから」
「そうだったね(笑)。あのとき叔母は調子が良くてね。昔の事をいろいろ話したんだけど、突然『そうだ、今のうちに誰にも言ったことがない話をしておこう』と不思議な話を聞かせてくれたんだよ」
「え? ふしぎな話? 聞きたい!」
それではとうなづき、祖母は話し始めた。
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終戦から五年が経ち、ようやく暮らしも落ち着いて来た冬のお昼どき。
叔母は孫が小学校から帰ってくるのを待っていた。
朝から雪がちらつくとても寒い日で、たまらず少しだけと炬燵で横になった。
うとうとしはじめたとき、「母ちゃん」といいながら小さな体がもぐりこみ背中にくっついてきた。
「あぁ、孫が帰って来たんだ。母親と間違っている…」と思ったが、眠気に勝てず背中に温かさを感じながらそのまま横になっていた。
「ただいま!」
玄関の開く音とその声に飛び起きた。
孫の声だ…するとここにいるのは?
そろそろと炬燵布団をめくると、見た事も無い三毛猫が安心し切ったように眠っていた。
猫は「ハナ」と名付けられその日から家族に加わった。
それから天に還る日まで長い長い歳月を叔母と一緒に過ごした。
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「ふしぎだね…おばさんはなぜだれにも話さなかったのかな?」
「『他の人に言うとハナがどこかに行ってしまいそうで、誰にもこの話はしなかった。もうハナもいないし私も生きているうちにと思ってね』と言っていたよ」
「…なんだか分かるような気がするな」
「そうかい。叔母はハナに再会できて幸せに逝ったんだろうね」
「うん。きっとむかえに来たんだね」
「あ、そうだ」と話し終えた祖母はお土産を取り出した。
やっぱりきび団子だった。
チョコ太郎より
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