「宿題やったの?!」「遊ぶ前にやる約束だよね!」「昨日ちゃんとやればよかったでしょ」…そんな声掛けを毎日していて疲れている人も多いはず。
小学1年生の最初は真面目に取り組んでいたのに、学年が上がるにつれていつのまにか宿題を適当にやっつけるようになったり、やらずに先生に怒られてしまったりという子もいますよね。本記事では、小学生の子どもが宿題をせずに困っているという方に向け、元保育士ライターが宿題をしない子の心理や、親のサポートの仕方をまとめてみました。
小学生で宿題があるのはなぜ?
ベネッセ総合研究所の学習指導基本調査によると、2006年と2015年の調査を比べると家庭学習時間に占める宿題の割合は増加しており、年々宿題の量や時間も増えてきている現状がみえます。子どもが負担に感じることもわかりますが、そもそもなぜ宿題というものがあるのでしょうか。
【参照:ベネッセ総合研究所5kihonchousa_datebook2015_all.pdf (benesse.jp)】
基礎学力を身につけるため
宿題は、学習したことを振り返り、反復練習などを通して学力を定着させるための勉強です。学校の授業内ではできない復習を家ですることで、次の授業もスムーズに行えます。
特に小学校1年生はひらがなやカタカナなど国語の基礎作りが大事な学年。何回も練習することで正しく書けるようになります。漢字や計算などの基本的な知識も反復練習することで確実に身に着けていき、その後の発展的な学習につなげていく必要があります。
家庭学習を習慣づけるため
毎日机に向かって自主的に学習する習慣を身に着けていくことで、中学生・高校生になっても家庭学習を自主的に行えるようになり、自主性や勤勉性が身についてきます。
学校によっては音読が毎日宿題にでたり、自主学習ノートの宿題などもあるでしょう。それらも、習慣付けることで自然と読解力・語彙力がついたり、子どもの自主性を伸ばしていくことができるようになります。
宿題をしない子の心理とは?
親からしたら、宿題をするのは当たり前。なぜ後で大変な思いをすることになるのにやらないのだろうと疑問にもなりますよね。しかし、子どもにも宿題をしない・したくない理由は必ずあります。子どもの気持ちに寄り添って宿題をしない理由について考えてみましょう。
宿題よりやりたいことがたくさんある!
学校から帰ってきたら、宿題よりもやりたいことが盛りだくさん! 友達と公園で遊ぶ約束をしていたり、昨日のゲームの続きがしたいなど子どもなりの理想の放課後の過ごし方があります。
もちろん、宿題はしないといけないのは分かっているものの、まずは自分のやりたいことをしてからと考えている子ども達も多いでしょう。
学校が疲れてやりたくない
特に小学校に入学したばかりの1年生に見られるのが、学校生活で疲れてしまい、勉強する余力がない子。幼稚園や保育園の生活習慣がガラっと変わり、毎日何時間も椅子に座って授業を受けるようになると大人の思っている以上に子ども達は疲れています。
少し休んでからやうと思っていて、ついつい夕飯後に寝てしまいそのまま朝に…なんてこともあるかもしれません。
習い事が忙しくて宿題までできない
学研総合研究所が2022年9月に行った「小学生の日常生活・学習に関する調査」では、習い事をしている子は全体の73%に及んでいます。1年生でも60%以上の子どもが何かしらの習い事をしており、放課後も忙しく過ごす子も多いでしょう。小学生白書Web版 学研教育総合研究所|学研 (gakken.jp)
複数の習い事をしている子や、中学受験を目指している子は、どうしても学校の宿題を後回しになってしまいがちに。
やらされている感が強い
そもそも、宿題は自主学習という名目のあるものでも、基本的に先生から強制的に出されるものですね。子どもからしたら、やらされている感が強くなり進んで学習をしようという意欲(モチベーション)があがらないという状況に。
「もうわかっているのにやりたくない」「何回もおなじ宿題をさせられてつまんない」などという気持ちをもっていて宿題をしない子もいるようです。
宿題をやる気になるための親のサポート
宿題をしない子が自主的に宿題をするようになるためには、親のサポートが大事になっていきます。環境作りや、声掛けの仕方、やる気をうみだす関わり方をチェックしておきましょう。
宿題をやる気にする動機づけ
宿題をしない子には、やる気を生み出す要因を作るお手伝いをしなければなりません。心理学ではこのやる気を生み出す要因を「動機づけ」といい、動機づけには「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の2種類があります。
内発的動機づけ
親も子も一番HAPPYなのが、内発的動機づけで宿題に対して自発的に取り組むようになること。内発的動機づけとは、「興味があって楽しいから」「やりがいを感じて意欲がでる」というような本人自身がやる気をもつことをいいます。
この内発的動機づけで行動を起こせるようになると、宿題を習慣づけることができ、一般的に長続きするといわれています。
外発的動機づけ
対して、外発的動機づけは「親や先生に言われたからやる」「毎日宿題したらご褒美が貰えるから」などの外的な要因から行う行動のこと。こちらは、仮にご褒美がもらえなくなった時にやらなくなってしまったり、先生に注意されない・チェックされないと適当になってしまうという場合も。
ただ、最初は外発的動機づけから始まったものでも、子どもが成長するにつれてテストで良い点が取れたり、自分のためになると感じると内発的動機づけつながり、宿題にやりがいを持てるようにもなります。
勉強を生活の一部にする環境作り
子どもが自然と机に向かって勉強できるような環境作りを親と一緒に行うのも大切。小学生低学年のうちは、子どもが分からないことをすぐ親に質問できるようリビングや親のいる空間で宿題をするとよいでしょう。
その際、親もTVをみたり、別の兄弟がゲームをするとどうしても気になって集中できなくなってしまいます。宿題する時間はメディアの使用は控えるなど協力してあげましょう。
親も一緒に椅子に座ってできることを
子どもが勉強をしている時は、親も隣や向かいに座って仕事や資格の勉強、書類整理など静かにできることをしてみてください。親も一緒にやることで、自分だけ勉強させられている感がなくなり親も勉強仲間の一員に。
たまには、子どもが学んでいることを質問して親が生徒、子どもが先生気分を味わってもらうなどもよいでしょう。こんなこと知ってるんだね!と尊敬の言葉を添えてあげるのもおすすめです。
宿題に取り組む姿勢をほめる
テストで良い点をとった時に褒める人は多いですが、それは宿題や日ごろの勉強の成果が形になってから褒めることになります。もちろん素晴らしいことですが、宿題をしない子にとっては先のことよりも今やった小さなことを褒めてあげてください。
「今日は自分からノートを準備したね!」「丁寧に書けてるね!」など、宿題をしたこと自体を褒めるのではなく、具体的な事柄や、宿題に向かう姿勢を褒めてあげるとやる気にもつながります。
宿題をする時間を子どもと決める
宿題はできれば毎日同じ時間にやるのが習慣づけになりやすいですが、一方的に親がその時間を設定するのではなく、子どもと一緒に時間やルールを決めるのがよいでしょう。
親は宿題をやってから外にいっていいよ。ゲームは宿題が終わってからね。と約束したくなりますが、なぜその方がよいのか、その理由を子どもが理解できるように説明してあげると納得しやすいです。
子どもが夜ご飯を食べてからにしたいというならひとまず試してみるのもあり。もしそれでルールを守れない、疲れて寝てしまうようならその時に再び子どもと時間を設定しなおすのでもよいですね。
宿題を間違えても怒らない
計算ドリルや漢字のプリントなど、宿題の丸付けを親がするという場合もあるでしょう。その際、子どもが間違えたことにたいして「どうしてできないの?」「なんどもやっているよね?」などの声掛けはNGです。
宿題は、まさに子どもの学習の定着を図るために毎日していること。苦手な問題をできるようにしている最中なのですから、間違えても大丈夫。むしろ間違えたところをしっかりと復習することで学習が定着していくので、間違えた問題はもう一度一緒にやってみるなどのサポートをしてあげましょう。
親はどんな問題がこの子は苦手なのか、どこまでわかっていてどこからが分からないのかを宿題の丸付けをしながらチェックしてあげましょう。そして、以前できなかった問題ができるようになった時にはしっかりと褒めてあげてください。
宿題をやるメリットは、やった後に共有しよう
親の立場にたつとどうしても「早く宿題を終わらせるとその分遊べるよ」「終わったらお菓子たべられるよ」など、行動する前にやった後のメリットやご褒美を伝えてやる気を起こさせようとしがち。これは外発的動機づけとしてのサポートにはなりますが、内発的動機づけに向かせるのが難しくなります。
例えば、早く宿題が終わった子には「今日は早く終わったから沢山遊べて楽しかったね」「いつも頑張っているから計算も早くなってきているよ」など、勉強した後にメリットを伝えて共有するとよいでしょう。
実際に成功体験を積み重ねることで、自分自身で宿題をやることの大切さ・早く行動することで起こるメリットを実感できるように。これが内発的動機づけのやる気スイッチを押すサポートにもなります。
宿題をしない失敗体験も後々の成長に
宿題をしない子には、学校で怒られる前に親が叱って無理やりにでもやらせてしまう家庭も多いでしょう。しかし、無理やりやらせることでその後こども自身がやる気になるかといえば違いますよね。できるだけ子ども自身でやる気を起こさせるにはあえて宿題を忘れたまま見守るのもあり。
「一人だけ宿題を忘れて恥ずかしかった。」「テストの点が低くて悲しかった。」などの経験も成長過程にはとても大事なことです。悔しい・恥ずかしいという感情を持った後に、「じゃあどうすれば次忘れないようにできるかな?」「どうすればあと何点UPできると思う?」とよりよくなるための手段を親子で考えてみましょう。
宿題をしない子の目標設定はスモールステップで
宿題をしたくないという子に、いきなり一か月毎日忘れないように約束させたり、次のテストで90点以上とるなど大きすぎる目標を掲げるのはやめた方がよいでしょう。
・二日間頑張ってみよう→次は一週間続けてみよう
・テストであと5点UP頑張ろう→次は○点目標にしよう
など少しずつ達成可能な目標を一緒に設定してあげて、失敗体験から成功体験へとつなげていけるようにサポートしてあげましょう。
宿題の量が多いと感じたら…
宿題をしない子の中には、実際に学校から出されている量・難易度が難しく子ども自身にあっていないということも。子どもによって集中力やできることには個人差があります。小学校はクラス一律の内容の宿題を出すことが定番化していますが、どうしてもわが子には多すぎるといった場合には、担任の先生に相談するのもあり。
漢字の書き取りが10回ずつ出ているけど、5回ずつなら続けられる。音読3回でているけど、しっかりと読めたら1回でOKなど、少し量を減らしてもよいかなどの提案をしてみてもよいでしょう。
その際に、保護者と担任との間でどのくらいならできているのかなど、子どもの現状や家庭学習時の様子も共有しておくと連携がとりやすくなります。
すこしずつでも大丈夫!焦らず見守ろう
宿題をしない子がやる気になるためには時間もかかるかもしれません。親はおおらかな気持ちで、子どもの小さな“できた!”をしっかりと褒めてあげましょう。少しの声掛けの工夫・親の関わり方でも勉強に対する姿勢が変わっていきます。
勉強や宿題が嫌な時間に感じることのないよう、時にはクイズ大会やゲーム方式で一緒に楽しみながらすこしずつ学習習慣をみにつけていけるとよいですね。焦らずに見守ることも大切です。
【参考文献】
・「小学生の子がどんどん勉強するようになる 親のすごい声掛け」葉一
・「完全カラー図解 よくわかる 発達心理学」監修者 渡辺弥生 ナツメ社