難しいご近所付き合い。住んでいる場所だからこそ、できる限りトラブルにはなりたくないですよね。これは、わが家の向かいに住んでいた、困ったおじさんのお話。毎日出かけに必ず家から出てくるご近所のおじさんに、もやもやが止まらなかった出来事です。
駐車場に現れる近所のおじさん
マンションに夫と住み始めて約4年。息子が生まれ、3人家族になりました。特にトラブルもなく、ご近所付き合いは良好でした。
しかし、私にはどうしても好きにはなれないおじさんがいたのです。
マンションの向かいには、一軒の豪邸が建っていました。そこには60代ぐらいの小柄なおじさんが夫婦で住んでいました。おじさんはよくご近所さんと話していたので、「おしゃべり好きなおじさん」という印象でした。
私の夫は、いつもニコニコしていて人当たりの良い、誰とでも打ち解けられる社交的な性格。そんな夫は、いつの日からか、おじさんのお気に入りに。
最初は偶然かと思っていましたが、わが家がでかけようとすると待ち構えたようにおじさんが玄関の前に立っているのです。家から外を見ているのでしょうか… 毎回必ず登場するおじさんに挨拶をすると、ながい自慢話が始まります。「俺には教養も金もあるけど、あんたたちないでしょ」が口癖でした。
そのうちおじさんから
「昨日旦那は22時に帰ってきたね」
「ずっと車がないけど旦那出張?」と、聞かれるようになり、なんだか監視されているようで、私の中で徐々に憂鬱な存在になっていました。
買い物を頼まれることに
ある日の休日、家を出るといつも通りおじさんが家から出てきて
「どこに行くんだ?」と聞いてきました。夫が
「コストコです」と答えると
「それなら頼みたいものがある」と、おつかいを頼んできました。
正直少し面倒だなと思ったものの、面と向かって断ることもできません。それでいて、頼まれたものは商品名がわからないものばかり。曖昧なお買い物リストに不安を抱えながら、車でコストコに向かったのです。
指定された人気商品に関しては、難なく買えたものの、難関は記憶が曖昧なナッツのお菓子と、3万円もするミキサー。写真を携帯で見られない! と言うおじさんに、夫が電話でミキサーの特徴を伝えると、
「それじゃない! もっと大きくて野菜が砕けて…」とこれまた曖昧な説明。
結局広い店内を散々探し回ったものの、お目当てのミキサーはなく、断念することに。ようやく最後の“ナッツのお菓子”を探し始めた時には、息子のぐずりも限界。私たち夫婦もくたくたでした。
おじさんの要望に1番近そうなお菓子を購入し、自分たちの買い物もままならないまま、お買い物は終了しました。
「これはいらない!」とひと言
疲労困憊で帰宅した私たちの車が駐車場に入ると、おじさんが
「ご苦労さん」と登場。疲れていたこともあって、その偉そうな態度に少しイラッとしながらも商品を渡しました。
すると、“ナッツのお菓子”を見た瞬間
「これはいらねーや!」とひと言。いらないって? どういうこと? と驚き声が出ませんでした。
唖然とする私たち夫婦に向かって
「若いんだからこういうお菓子すきでしょ? 俺が頼んだの、これじゃねぇから食べてよ」というのです。
「私たちもそんなにナッツは食べないです…」というと、
「じゃあ配れば?」と急に他人事。
おじさん用に別会計していたレシートを渡すと、合計金額から“ナッツのお菓子”の代金を1円単位まできっちりと引いた現金を手渡してきました。そして、自分の欲しかった商品だけを手に取り、お礼も言わず家の中に入っていきました。
これにはさすがに夫も呆れた様子。手元には買う予定のなかった、大容量のナッツ。家でこのお菓子を見るたびに、怒りが湧きました。
このことをきっかけに、私は毎回おじさんがいないか確認してから家を出るように。そんな生活にとてもストレスを感じていました。
その後、2人目を妊娠したことをきっかけに、ようやく賃貸マンションから引っ越すことにしたのです。引っ越しが決まった時は、真っ先に、これからは、おじさんと顔を合わせなくていいんだ、と安堵したのを覚えています。
引っ越し先では、ご近所さんとの距離感に気をつけよう、と心に誓った出来事でした。
(ファンファン福岡公式ライター/ツナ子丸)