「自己有用感」は子ども達の自信につながる大切な要素。小さいうちから親の関わり方や適切な声掛けで高められるようサポートする必要がありますが、日本の子ども達は自己有用感が低いことが問題視されています。今回はこの自己有用感について元保育士ライターが調べてみました。
自己有用感ってなに?
文部科学省の国立教育政策研究所によると自己有用感とは、「他人の役に立った」「他人に喜んでもらえた」等、自分と他者との関係を自他共に肯定的に受け入れられることで生まれる評価のこと。誰かに必要とされることで得られる満足感を意味します。
例えば、クラスで一番足が速くリレーの選手に選ばれた子がいます。その子がクラスメイトから褒められたり奨励をうけ“クラスのみんなの期待に応えたい”と思う気持ちのことです。
ただ単に足が速い自分をほめたいという感情ではなく、足の速さを認められたことでみんなのために頑張りたいのというのが自己有用感といえます。この自己有用感は、社会性の基礎になる重要なものです。
自己肯定感と自己有用感の違い
自己有用感は初めて聞いたという人でも「自己肯定感」という言葉は知っている人も多いのではないでしょうか。自己肯定感は自分自身を認めてあげる・自分そのものに対する感情・評価のこと。第三者は関係なく自分の存在意義を肯定できるもののことです。
つまり、自己有用感が「他者からの自分に対する評価」だとすると自己肯定感は「自分自身に対する自分の評価」という違いがあります。
自己有用感の低下が問題に
自己有用感も自己肯定感も自信をつけたり、社会性を養うためには欠かせない要素。しかし、日本ではこの二つの要素が子どもの時期から低下してしまっていると問題になっています。
平成25年に文部科学省が行った「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」によると、日本の高校生は諸外国の高校生に比べて自己肯定感が低いことが分かりました。
アンケートの中には自己有用感につながる『私は人の役に立っていないと思う』という質問に対しても、「そう思う・どちらかというとそう思う」と回答した割合が合わせて47%以上にのぼっています。これはスウェーデンやドイツに比べると倍以上の割合になっています。
日本人の自己肯定感が低い原因としては、古くから規律や協調性を重んじてきた学校教育、謙虚で真面目な性格の子が多いというのも一因にありそうですね。
参照:資料3-2 自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子供を育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上(教育再生実行会議第十次提言本文・参考資料)(2/2) (mext.go.jp)
自己有用感の高い子・低い子
自己有用感の低下が心配されている現在、自己有用感の高い子と低い子ではどのような特徴があるのでしょうか。自分の子どもや親自身がどちらに当てはまっているかチェックしてみるのもよいでしょう。
自己有用感の高い子の特徴
自己有用感が高い子は以下の特徴がみられることがあります。
人と関わることが好き
誰かから褒められたり必要とされた経験がある子は、友達や仲間を大事にして積極的に自分から交流をもつことが多くなります。自分がされて嬉しかったこと、助かったことを今度はお友達にもしてあげたいという思いから、思いやりのある対応ができるようになります。
行動力・チャレンジ精神が旺盛
自己有用感が強い子は、積極的にクラスの行事や委員会などにも参加する子が多いようです。自分でやってみよう!クラスの代表になって頑張ってみたい!という気持ちも大きくなりチャレンジ精神も旺盛です。
失敗してもあきらめず、立ち直る力もある
たとえ頑張ったことがうまくいかなくても、あきらめずに粘り強く努力する力があります。落ち込んだ時にも「もう自分なんてだめた」と自分自身を卑下することなく、何がダメだったのか、次はどうすればよくなるかなどを考えて立ち直ることもできるでしょう。
人のために頑張ることができる
自主性だけでなく協調性があるのも自己有用感が高い子の特徴。クラスメイトや部活仲間と力を合わせて目標に向かって頑張ることができます。人に感謝されたことのある経験から、誰かのために頑張るという気持ちが自然と身に付き、自分と同じくらい相手のことも大切にできます。
自己有用感が低い子の特徴
他者からのきちんと評価されず、心が満足した経験のない自己有用感が低い子は以下の特徴がみられます。
いつも失敗を恐れ、消極的になってしまう
自己有用感が低い子は、自信がないので「失敗したらどうしよう」「どうせうまくいかない」と何事にも消極的になってしまいがち。やりたいことでも結果につながらないと思うと、頑張る気持ちがうせてしまったりあきらめてしまうこともあるでしょう。
期待されるのが苦手
自分が人の役に立っているという認識を得られないまま成長していくと、誰かに期待されることにたいしての経験もない為、クラスで目立ったり期待されること自体が苦手になります。
交友関係がせまく社交的でない
自己有用感が低いと、人の役に立ったり助け合いの気持ちが芽生えないため、社交性も低くなりやすいでしょう。友達を自分から作るのが苦手な面もあり、自然と交友関係も狭まってしまいます。
人と比較したり劣等感が強い
自分に自信がない子・褒められた経験などが少ない子は劣等感が強く、他者を自分を比べて自分を卑下してしまうことも多いです。相手の長所を認めていても自分はそんなことできないなどと比べてしまい、より自信をなくしてしまいます。
自己肯定感が低いのが子どもだけではないかも?!
自己有用感の高い子・低い子の特徴をみてみると、実は親自身も低いのかもしれないと思った人も多いのではないでしょうか。
親が自己有用感が低い状態で子育てをしていると、ネガティブな口癖が自然とでてしまっていて、子どもへもそれが影響している場合もあります。
自己有用感を調べていく中で、ライター自身も決して高いとは言えない状況だということに気がつきました。できれば、子どもの自己有用感を高めると同時にお母さんお父さん自身も高め合えるように意識を変えていけるとよいですね。
声掛けの仕方で変わる自己有用感の高め方
自己有用感は大人の関わり方や声掛けの仕方でも高めることができます。子どもの性格は一朝一夕で変わるものではないので、意識した関わり方を継続して続けることも大切ですね。
褒める時は具体的に
大人が子どもを褒める時によく使うのが「すごいね!」「上手だね!」などのワード。ついつい同じような言葉で褒めてしまうことが多いですが、自己有用感を高めるにはもっと具体的に褒めてあげることが大事です。何が良かったのか、どうすごいと思ったのかをきちんとつたえてあげましょう。
また、結果よりも頑張った過程を褒めてあげてるとよいでしょう。親や先生からしっかりと認められ評価されることで自信もついてきます。
大人目線で褒めるのではなく、たとえその方法が遠回りであったりしても、失敗したとしても子どもが考えてやり遂げたことを褒めてあげるとよいですね。
子どもの話をきちんと聞いてあげる
自己有用感を高めるには、子ども一人ひとりを尊重してどんな姿を受け入れてあげることが大切。学校で起きたことなどを話したがっているときは子どもの気持ちを知るチャンスです。今どんなことを頑張っているのか、悩んでいるのか、子どもの気持ちによりそって共感してあげましょう。
ついつい口を挟みたくなることもあるでしょうが、まずは最後まできちんと話を聞いてあげて受け止めてください。その上で「こんな考え方もあるよね」「それもいいけどママはこう思うな」など子どもの気持ちを認めた前提でアドバイスをするのがよいでしょう。
家庭内での役割を与える
誰かの役に立ったことが実感できるように、家庭内でもお手伝いを頼んだり、子ども達一人ひとりに役割を与えてあげるのもおすすめ。
例えば、お風呂掃除、食器の用意、お皿洗いなど担当を作るのもよいですし、兄弟姉妹で協力して行うのもあり。成功体験を積み重ねることで役に立ったという気持ちが増すので、役割や手伝いは簡単に成功するものから頼みましょう。
手伝いをお願いするときには、子どもに選択肢を与えてあげて相談しながら行うのもポイント。どんな役割があるのかを話し合うことでちいさなことでも役立つことがあることを学ぶ機会にもなります。
具体的な声掛け例
自己有用感を高めるには褒め方や声掛けの仕方が大きなポイントになります。親が言っているいつもの一言を言いかえるだけでも少しずつ子どもの自信につながっていきます。ここでは今すぐに試せる言い換えの具体例を紹介します。
勉強面
・「100点とってすごいね!」→「頑張って勉強した成果がでたね」
・「ここ間違っているよ」→「難しい問題にもチャレンジできたね」
・「字が綺麗だね」→「いつも丁寧に書けるのはあなたの良さだね」
生活面
・「手伝ってくれてありがとう」→「ママすごく助かったよ。嬉しいなありがとう」
・「友達となかよくあそびなさい」→「お友達に優しくできると楽しく遊べるよね」
・「片付けはやくしてね」→「おかたづけ上手だからおもちゃも喜んでるね」
このようなちょっとした声掛けの言い換えでもこどもが自分の良さをみつけることができ、自己有用感を高めることにつながります。誰かに役立っているという実感が持てるよう、具体的にどこが良かったかを伝えることを意識してみてください。
自己有用感が高まると自己肯定感も高くなる
誰かの役にたてた、期待されて存在意義を感じられるといいった自己有用感が高まると、やがて自分自身のこともありのままの姿を認めることができるようになり「自己肯定感」も高まっていきます。
子どもがきちんと認められる環境をつくってあげてのびのびと自信をもって何事にもチャレンジできるようサポートしてあげましょう。そして、同時に親自身も自己有用感を高めていけるように、HAPPYな親子関係を構築していけるとよいですね。あせらずゆっくりで大丈夫。今からできることを是非実践してみてくださいね。