『お母さんのお腹の中にいたときの記憶』“胎内記憶”をご存じですか? 信じる・信じないあると思いますが、研究によると生まれてきた子の3人に1人の割合で胎内記憶が残っているというデータもあるそうです。実際に私も、長男のときに「これは胎内記憶だ!」と言い切れる出来事を体験しました! 今回はそんなエピソードをご紹介します。
おしゃべりな長男
胎内記憶を話したのは、当時3歳前の長男。
長男は言葉を話すのが早く、2歳過ぎでペラペラしゃべり、お話をすることが大好きな子でした。
胎内記憶がある子がいるという話は何となく知っていて、わが子も話してくれたら素敵だなぁと考えたことはありましたが、忙しい毎日の中ではそんなことはすっかり忘れていました。
その日もいつも通りの生活をしていて、19時半頃、お風呂に入っていたときのこと。
頭や身体を洗い、湯船に浸かっているときに、私は何気なく歌を歌ったんです。なんの歌だったかも覚えていないほど、無意識でした。すると、バシャバシャと遊んでいた長男が言いました。
「僕がママのお腹にいたときも、歌ってたよね」急に言われて、思わずポカンとしてしまいました。
でも思い返せば、確かに長男を妊娠中、のんびりとお風呂に入りながら毎日のように童謡を歌っていたんです。頭の中に、忘れかけていた“胎内記憶”という言葉が浮かびました。同時に、『胎内記憶を話してくれるのは一度だけ』という噂を思い出します。
なんでも、話すことで記憶が薄れて忘れてしまうことが多いのだとか。
心の準備ができていないまま突然の胎内記憶を聞くチャンスに、焦る気持ちを押さえドキドキしながら息子に聞いてみました。
突然話しだした胎内記憶
「ママのお腹の中にいたときのこと覚えてるの?」
「うん!」長男は元気よく答えます。
「お腹の中って、どんなところ?」言葉を選びながら、息子に問いかけました。
「あのねー温かいの! ぷーかぷーかって浮いてた!」膝を曲げ伸ばししながら、上下に動いてプカプカを表現する長男に驚きを隠せません。
「そうなんだ! どんな格好で、プカプカ~って浮いてたの?」
「えっと、こう!」そういって長男は、膝を抱えながら、息を止めてお風呂の中に浮かびました。
その姿は、雑誌に出てくるお腹の中の赤ちゃんのイラストそのもの! とてもびっくりして、言葉を失います。胎内記憶って、本当にあるんだ…!
私の声と気持ちは赤ちゃんに届いていた
「あと、ママの声とパパの声もする」と長男はニコニコ。
「そうなんだ! さっき、ママがお歌を歌っていたって言ってたけど、他にも何か聞こえた?」
「パパがお話してた! あとー…」少し首を傾げ、悩んだような表情をしてから、こんなことを言ったのです。
「ママがね、『まだ、生まれて来ないでね。まだ生まれて来ないでね。まーだだよ♪』って言ってた」
私は一瞬で体中に鳥肌が立ち、思わずボロボロと涙が溢れました。そして、不思議そうな表情をしている長男を抱きしめました。
実は私は、妊娠中に切迫早産になってしまい、正産期に入るまで寝たきりの絶対安静でした。子宮口が柔らかく常に開きかけ、医師からは「赤ちゃんの頭も触れるくらい下がっている」と言われ、とても怖い思いをしました。
くしゃみや咳もできるだけしないという指示の他、刺激で張ってしまうかもしれないからお腹を撫でるのも禁止。これから先どうなるか不安な中
「まだ生まれて来ないでね。まだ生まれて来ないでね。まーだだよ。“もういいよ”って言ったら出ておいで!」と話しかけていたんです。
全部、聞こえていて、一緒にお腹の中で頑張ってくれていたんだなと思い、長男のことがもっと愛おしくなりました。
忘れてしまった長男
その後、何回か聞いてみたものの話すことはなく、胎内記憶の話は後にも先にもこのときしか聞くことができませんでした。
それでも、私の声と気持ちが長男に届いていたことを知れたのは忘れられない思い出です。
胎内記憶は「子どもが空想で話す」「絵本に影響されているだけ」と信じない派もいる中、長男からの話を聞いた私は、完全に『信じる派』になったのはいうまでもありません。
「まだ生まれて来ないでね」を守ってくれた長男は、今でも私の話を素直に受け入れる優しい子です!
(ファンファン福岡公式ライター/さとう なつこ)