毎年盛り上がるバレンタインデー。好きな人に思いをはせて、手作りチョコレートにチャレンジする人も多いはず。そんなバレンタインデーですが、私には今でもどうしても忘れられない苦い思い出があります。
初めての手作りバレンタインチョコレート
あれは私がまだ中学生の頃。友人のA子とちょうど迫っていたバレンタインデーに、「お互い好きな人にチョコをあげよう」という話になりました。
これまでほとんど料理をしたことのない私は、チョコレートを手作りすることに不安がありましたが、A子と一緒ということもあり、思い切って手作りにチャレンジすることにしたのです。
バレンタインデー前日は休日だったため、A子の家でチョコレート作りをすることにしました。
その日、A子の両親は不在でしたが、チョコレート作りをすることは事前にA子の母に伝えていて、キッチンを借りることにしていました。
ワクワクした気持ちでA子の家に向かう私。しかし、このときはまだ、この後大変なことになるとは思いもしなかったのです。
火事寸前で大パニック
A子の家に到着すると、早速チョコレート作りを開始！
チョコレートを刻んでボウルに入れ、湯せんをするためにガスコンロに火をつけます。私はミトンをはめた手で鍋を押さえ、A子が溶けたチョコを混ぜていた… そのときです。
「なんか焦げ臭い？」
ふと見ると、私の左手のミトンが燃えていたのです！
熱くはありませんでしたが、ミトンから火が出ている様子に私は「やばい！」と思い、一気に血の気が引きました。
「キャー！ 火！ 火！」というA子の叫び声。私はミトンをバタバタと振り回し、消火を試みますが、ミトンからは灰色の煙が上がっています！
A子は急いで水道の蛇口をひねり、今度は
「水！」と言い、私を手招きします。人はあまりに驚くと声が出ないようで、私は無言で水道に手を突っ込みました。
「ジュウウウ…」と音を立て、鎮火するミトン。幸運にも私は火傷をしませんでしたが、黄色いミトンの手の平部分は焦げて黒くなってしまいました。
さっきまでワクワクドキドキしていた気持ちは、火とともに一瞬に消え去り、A子と私の間に何とも言えない空気が流れました。
証拠隠滅 無かったことに？！
A子 「大丈夫？」
私 「うん。大丈夫だけど、ミトン燃えちゃったね…」
そんな会話をしましたが、作業が途中だったため、私たちは急いでチョコレート作りを再開しました。 そして、無事にチョコレートを冷蔵庫に入れ、冷ましてる間に、台所の片付けをすることに。
そこにはびしょ濡れ、且つ焦げて真っ黒になってしまった憐れなミトンの姿が…。
「ごめんね。弁償するよ」と私が言うと、A子は
「大丈夫！ ミトン1つなくなってもバレないって！」と言い、紙袋に水気を絞ったミトンを入れ、ゴミ箱の奥底に捨ててしまいました。
そしてチョコレートのラッピングをし、ミトンを燃やした罪悪感を抱えたまま私は帰宅の途へつきました。
その後、A子によると、両親から特にミトンの話をされることもなく、バレていないとのこと。私はホッとしました。
違う意味でドキドキのバレンタインデー
実は、この手作りチョコレートを渡した場面を、私はよく覚えていません。
当時好きだった人にあげたことは覚えていますが、それよりもミトンが燃えたときの記憶が、それをかき消すくらいに大きかったからです。
今では笑い話になりましたが、今でも毎年バレンタインが近づくとミトンが燃え上がったときの光景が思い出されます。
これから、バレンタインデーに向けてチョコレート作りをする人はくれぐれも私のように、「違った意味でドキドキ」しないよう、火の取り扱いには十分気をつけて下さいね！
（ファンファン福岡公式ライター / おとうふ）
