”誕生日”は過ぎてしまったよ サ日記

 3月2日はおれの誕生日らしい。と言っても、根拠はない。十年近く前おれのことを飼い猫として迎え入れた飼い主が、勝手に「サニ」という名前を付けてくれて、それにちなんで、「3と2でサニの誕生日」と言い出しただけだ。この家に入った時点で既におれは5歳か6歳だったそうだから、ほんとうの誕生日はわからない。もしかしたら、ほんとうに3月2日なのかもしれん。そういうことにしておこう。

 何で”どこの馬の骨ともわからんかった”おれが5歳か6歳くらいと推定されるか、それは連れて行ってもらったペットクリニックの先生が、「この歯のすり減り方は・・・」と言って解説してくれたからだ。

 人間もきっと、歯の減り方でだいたいの年齢がわかるんだろう。歯の無くなった人は別にして。

 うちは人間同士でも誕生日とかに”儀式”をやらない家だから、おれもとくに何もしてもらってない。おれも特別なモノは求めない。生のえさとちゅ~るを毎日欠かさずいただければそれで満足だ。あと、良くないと言われるが、時々庭をパトロールさせてもらえればな。

 庭といえば、昨年末に「暮れの元気なごあいさつ」に来て以来、年明け1月と2月姿を見せなかったうしが今月に入って2回現れた。その確かな存在感はここの主であるおれを上回る。

 おれも獣医先生から「ふてぶてしい」と言われるが、それとはまた違った落ち着きを見せるのが、このうしだ。飼い主が病院に連れて行ってやって、耳をさくら形にして地域猫の資格を得ているが、この立派な体型とつやつやした毛並みはもしかしたら、誰かに飼われているのか。

 夫婦揃ってご挨拶しているようにも見えるが、奥のクミコ(おかあちゃんとも呼ばれる)は、だいたいうちの庭にいるから、別居しているのか。うしは出稼ぎに行ってるのか、マグロ漁船にでも乗り組んでいるのか。

 このとらは、二匹の息子だ。もう一匹いたが、姿を見なくなった。時々兄弟にえさをやって来るおばさんがいたから、その人が引き取ったのかもしれん。とらは人間が来ると足元に甘えにやって来るが、捕まえようとすると、スルリと逃げてしまうから、残れたんじゃないか。

 家の中にも興味津々なとらだ。うちのチョビとは母親はおんなじだと思うが、弟のとらの方がチョビよりからだが大きくなって怖いのか、チョビは警戒心むき出しだ。

 これはチョビでなくとらだ。夜に窓を開けてやると、少し入って来たりする。

 かといって、ゆっくりしていくわけでもなくすぐに外に出て行く。チョビおねえちゃんに遠慮しているのか。

 チョビは窓の内側からは「シャーっ」と火を噴いて威嚇するなど威勢が良いが、とらが入って来ると、おそれをなしてコソコソと隠れる。このあたりでは最弱猫だ。

 おれに頼りっぱなしだ。

 おれは外に出たときには、とらと同レベルにまで身を落としてコニュニケーションを図ることにしている。「チョビはお前のおねえちゃんだからあんまり怖がらせるなよ」。

 とらは、「わかりました」と素直だが、ほんとうは何もわかっていない気がする。

 木登りなどして、いい気なもんだ。

 あったかくなったり、すごく寒くなったりの繰り返しだが、うちの庭にも桃とか梅の花の咲く気配が出てきた。次回書くときには、そんな景色も載せられるかも。

 ということで、きょうはこのへんで、おたのしみにお待ちあれ。

※この記事内容は公開日時点での情報です。

著者情報

福岡市南区在住。サバトラ柄。熟年オス猫。雑種だが、アメショーの血が入っていると思っている。
ふてぶてしさが身上の甘え上手。
推定5歳か6歳の頃、今の飼い主宅に上がり込み飼い猫に。それ以前は不明だが、数百メートル離れた公園にいたとの不確かな情報。おととしの暮れ、孫娘のようなキジ白猫チョビが弟子入り。
世の中の動きに敏感なものの、とくに行動はしない。

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