福岡県久留米市の久留米シティプラザ全体を展示場に見立て、アーティストと市民が一緒に作り上げた写真を展示するプロジェクト「プラザあちこち写真館」(主催:久留米シティプラザ)がスタートしました。記念すベき第1弾のアーティストは映画「浅田家!」のモデルとなった写真家の浅田政志さん。約1年かけて作品を制作し、2025年3月に写真展「わたしとくるめ」を開催します。これに先駆け4月20日、浅田さんのワークショップとトークインベントが同館で実施されました。さらに現在、浅田さんの作品に参加できるエキストラを募集中です。写真好きの人、久留米の街が好きな人はぜひ!
プリントする大切さ伝える「わたしの1枚ワークショップ」
二宮和也さん主演で話題となった映画「浅田家!」(2020年)のモデルとしても知られる写真家・浅田政志さん。自身の家族を被写体にさまざまな職業になりきった写真集「浅田家」で日本写真界の芥川賞とも呼ばれる木村伊兵衛写真賞を受賞しています。
ワークショップの冒頭で、浅田さんは“プリントすることの大切さ”を参加者に伝えました。東日本大震災後に東北を訪れて津波に流された写真を洗浄するボランティア活動に携わり、写真を形として残す大切さを再認識したと振り返ります。「今日はこの写真を残したい、何度も見返したいと思う大切な一枚を選んでください」と呼びかけました。
今回参加したのは、家族連れや浅田さんのファンなど15組。スマートフォンやタブレット、パソコンに保存した数多くの写真の中から1枚を選んでプリントします。「自分にとって大切な1枚とは?」セレクトに悩む参加者一人一人に、浅田さんはアドバイスして回っていました。
セレクトが決まると、プリンターで2Lサイズに印刷。浅田さんが用意したオリジナル台紙に写真を貼り付けて「額装」します。参加者はプリント裏面四隅に両面テープを貼り、曲がって貼ってしまわないよう、丁寧に作業する必要があります。
台紙の裏面には、撮影時のエピソードを記入する欄も。雪が降った日に感じたこと、家族旅行の思い出、何気ない日常の瞬間などを思い思いに記していました。
額装が完成すると、「なぜこの写真を選んだのか」を発表する時間です。「自転車に乗れるようになった子どもとサイクリング。子どもの成長を感じた瞬間が映っている」「妹と一緒にとうもろこしを食べているところ。これを見て似ていると気付いた」など心温まるエピソードが披露されました。
「写真の本当の良さは見返すこと。同じ写真でも人生のいつのタイミングで見るかで見え方も変わります。プリントしたら何十年という単位で見返すことができます」と浅田さん。「12月5日はアルバムの日。毎年12月に、今年のベスト10を選んでぜひプリントしてみてください」と提案しました。
「わたしとくるめ」10の題材について参加者とトーク
後半は参加者を入れ替えてトークイベント。浅田さんの経歴や撮影エピ―ソードに、約50人が聞き入りました。写真専門学校時代の「1枚の写真で自分を表現する」という課題がきっかけとなり、家族の思い出を再現する「演出写真」を思い付いたこと、それが後に写真集「浅田家」につながったことなど。浅田さんは関連する写真を見せながら、ユーモアを交えて紹介しました。
その後は来年予定している写真展「わたしとくるめ」のために募集した10の題材(ラーメン、エツ、久留米のお酒、上履き、そろばん、病院、久留米絣、鬼夜、かっぱ、自転車)をテーマに、参加者と和気あいあいとトークセッション。小・中学生からシニアまで、たくさんのおもしろエピソードが飛び交いました。
「わたしとくるめ」被写体エキストラ募集中! 6月末まで
「わたしとくるめ」の制作に向け、市内外からたくさんのエピソードが寄せられました。「3歳でくるめラーメンデビューしたお子さんの話、入院したときにまだ小さかったわが子が添い寝してくれた話など、(写真で表現する内容は)個人的であればあるほどいいなと思います」と浅田さん。一つ一つのエピソードを浅田さんが読み、10の題材に絞り込みました。今後は、それらをもとに10枚の大きな演出写真に仕上げ、3月にシティプラザ館内に展示するという流れです。
現在、8~9月の撮影本番に向けて、久留米シティプラザでは被写体エキストラを募集しています。演出するのもシャッターを押すのも浅田さん! 楽しいことが好きな人、目立ちたい人、久留米市が好きな人など、誰でも参加できます。「誰かの心にある久留米市の一瞬をみんなで形にしていけたらなと思っています」と浅田さん。エキストラ募集は6月30日(日)までなので、お早めに♪