急性胃腸炎で夕食の片付けができないまま寝込んでしまった私。シンクの汚れた食器を見て「洗わないの?」と3歳の息子が夫に尋ねると、「洗い物はママの仕事だよ」と驚きの答えが!? 時代遅れなダメ夫を改心させたのは、息子の優しすぎる一言でした。
突然の体調不良
ある日曜の夜、家族3人で家で夕食を楽しんだ後のことです。何かにあたったのか、私だけ激しい腹痛に襲われ、下痢と嘔吐を繰り返しました。
波のように引いては返す激痛にうめきながら、トイレとベッドを行き来する私を見て、3歳の息子は一大事と悟ったのでしょう。
「救急車、救急車! パパ救急車呼ばなくていいの!?」と大騒ぎしています。
それに比べ、夫は冷静なもの。
「救急車、呼ぶほどじゃないでしょ」と、私を気遣うでもなく、寝室の隣のリビングでテレビを見て大笑いしています。
洗い物はママの仕事!?
そのときです。
「パパ、お皿洗わないの?」と息子の声が聞こえました。
いつもなら、食後すぐに私が洗い物をしてしまうのですが、今日は片付ける間もなく体調が急変したので、食べ終わった食器は食卓から下げたまま。キッチンシンクには汚れた食器があふれかえっています。
手が荒れるからと、洗い物などしたこともない夫が、何と答えるだろう…?
私はふすま越しに聞き耳を立てていました。
「洗い物はママの仕事だよ」
聞こえてきたのは、信じられない答え。いえ、ワンオペ家事が当然のわが家では、予想通りといってもいいでしょう。でも、この非常事態でそれを言うか!? と思うと、悲しくて情けなくて、怒りがふつふつと湧いてきました。
ダメ夫を改心させた息子の一言
痛みと怒りで震えていると、半べそをかきながら訴える息子の声が聞こえてきました。
「でも、ママはお腹が痛いんだから、お皿なんか洗えないよ。ママ、死んじゃうよ! パパがお皿洗ってよ!」しくしくと泣き出す息子。絶句する夫。
しばらくして
「仕方ないな…」と夫が重い腰を上げる気配がすると、食器を洗う音がしてきました。黙って様子を伺っていた私でしたが、わが子の必死さに感動の涙があふれて止まりません。
キッチンに立つ父の姿が珍しいのか、息子は泣くのをやめ、洗い物に励む夫にまとわりついているようです。洗い物が終わり水道の蛇口をキュッと締める音が聞こえると、
「パパ、お皿きれいになったね!」と息子の嬉しそうな声が聞こえてきました。
こんな小さな子でさえ、ママが大変なときは代わりにパパがやるのが当たり前だということを、誰に教わるでもなく、ちゃんとわかっているのです。夫の心ない言葉に屈せず、やさしい気持ちでダメな父親を改心させた息子を、私は誇らしく思いました。
手荒れは名誉の勲章
それから3日間、食事も摂れずに寝込んだ私。その間、自分と息子の2人分の食事を作り、洗い物をした夫。ようやく起き上がれるようになった私の前にやってきて、おもむろに両手のひらを広げ、目の前に差し出しました。洗剤にかぶれやすい夫の手は、ところどころ皮がむけて赤くなっています。
少し洗い物したくらいで、嫌みったらしく見せに来るな!
これが私の本音でしたが、息子に諭されて3日間、大嫌いな食器洗いをし続けた夫にとっては、名誉の勲章です。
「ハイハイ、洗い物で手が荒れちゃったのね、やればできるじゃない」と言ってあげると、ウンウンとうなずきながら去っていくのでした。
親は子を育ててあげているのではなく、子どもとともに成長するものなんですね。人として当たり前のやさしさを、3歳の息子に学んだ出来事でした。
(ファンファン福岡公式ライター / 繭子)