ほとんど怒ることがない穏やかな性格の息子。小さい頃から病気がちで背丈も小柄で、あまり積極的におしゃべりをする方でもありませんでした。そんな息子が、小学校2年生の夏休みに初めて友達と殴り合いの喧嘩をし、母親の私はそれが到底想像できずとても驚きました。その時の状況とその後明らかになった真相についてのエピソードです。
おとなしい息子が喧嘩!?
小学校2年生の夏休み、地域で開かれた「流しそうめん」のイベントに、息子と4歳の娘、そして私の3人で参加しました。子どもたちはそれぞれ好きな遊びを楽しんでおり、私はそうめんの準備に追われていました。すると、突然息子の友達が駆け込んできて、「おばちゃん、○○くんが喧嘩しとーよ!」と、息子の名前を口にしました。驚きながらも、私は急いで現場に向かいました。
現場に着くと、普段は仲良しのYくんと息子が激しくもみ合っている光景が目に飛び込んできました。息子は小柄ながらも拳を振るい、Yくんの腕に阻まれながら必死に戦っています。その顔はまるで怒りに燃える野生動物のようで、普段の穏やかな表情とは全く異なっていました。驚きのあまり私があっけにとられていたところ、Yくんのお母さんが二人を引き離し喧嘩はストップ。そこには、砂と血で汚れた顔のままふたりが座り込んでしまいました。
「一体何があったの?」その問いかけに息子は…
他のお母さんたちが水やタオルを持ち寄り、私は息子の手当てを始めました。
「一体、何があったの?」
と問いかけると、息子は口を真一文字に結び、何も話そうとしません。その姿は怒りと悲しみが入り混じっているようで、私はしばらく息子の背中をさすり続けました。Yくんも同じように沈黙したまま。周囲のママたちが「何も言いたくない時もあるよ。話せるようになったら話せばいいんやない?」と慰めてくれたことで、ようやく二人は流しそうめんに参加し、仲直りの雰囲気で終わりましたが、「何が原因だったんだろう?」と少しもやもやが残りました。
喧嘩の原因が本人以外のルートで判明
あれから10年が経ちましたが、息子からがその喧嘩の理由を話すことはありませんでした。しかし、とあるタイミングでYくんのお母さんと話す機会があり、真相が明らかになったのです。
実は、喧嘩の原因はYくんが息子の妹(当時4歳)に対して悪口を言ったことだったとのこと。普段はあまり妹に興味を示さない息子ですが、その時は妹をけなされたことに腹を立ててしまったようです。息子が妹のためにここまで怒る姿を見て、私は驚きと共に親としての嬉しさも感じました。
暴力は決して良いことではありませんが、息子の妹思いの一面を垣間見たことに感動しました。妹にとっても、将来このエピソードを知った時に、兄の優しさを実感してくれるでしょう。あの流しそうめんの出来事は、ただの喧嘩ではなく、息子の深い愛情が表れた瞬間だったのかもしれません。この体験を通じて、私は息子と娘の絆の深さを改めて感じることができました。結局、息子が喧嘩をしたのはその時の1回だけです。
(ファンファン福岡公式ライター/Natsuki)