保育園で予定されていた「秋の遠足」を心待ちにしていた娘。例年は芋掘りですが、今年はみかん狩りに変更され、娘は「いっぱい取ってママにも持ってくるけん!」と意気込んでいました。しかし、そんな娘に悲しい現実が待ち受けていたのです。
遠足前日にまさかの発熱
遠足の前日、私の職場に保育園から電話があり、娘が発熱したのでお迎えに来てほしいとの連絡。すぐに保育園に行くと、先生が
「お熱は37.8度でした。最近風邪ぎみの子が増えてきたから、風邪かも知れませんね」
と気の毒そうな表情で娘の荷物を渡してくれました。娘が私の姿を見つけると、堰を切ったように泣き出し、「ママ、明日の遠足は?お熱出ちゃったから行けないの?」とすがりついてきました。その小さな胸に宿る絶望感に、私は切なくて胸が張り裂けそうな思いになりました。
帰りにかかりつけの小児科で風邪薬をもらい、帰宅。娘は保育園を出てからほとんど無言で、夜になると咳がひどくなり、熱も38度に。布団に寝かせると、私の手をぎゅっと握りしめながら泣き、眠りにつきました。
翌朝も熱が下がらず、結局遠足に行けず…
翌朝、娘の熱は37.5度。咳も出ているため、やはり遠足には参加できないと判断し、保育園に欠席の連絡を入れました。分かってはいたものの、やはり落胆の表情をみせる娘。私は出してあったリュックをしまおうと思い、押し入れに手をかけた瞬間、あることを思いつきました。
「そうだ! 家の中でみかん狩りをしよう」
テーブルの上にあった新聞紙を取り、半分の大きさにハサミでカット。それを小さく丸め、セロハンテープで補強したものを10個作り、テーブルに並べました。
娘は布団の上に座ったまま、私の行動を不思議そうな顔で見つめています。私はおもちゃ箱からありったけの折り紙を探し出し、オレンジと黄色を引き抜きました。さっき丸めた新聞紙をその折り紙で包み、セロハンテープで留めて、緑のペンでヘタを描いて手作りみかんの出来上がり。それを家の中のいろいろなところに置いて、「おうちみかん狩り」の準備が完成しました。
パジャマにリュック 親子ふたりきりの「おうち遠足」
みかん作りがあまり上手ではなかったせいか、私の意図は娘に伝わってなかったようで、「おうちみかん狩り」をすることを説明。お弁当と水筒もちゃんと用意し、リュックに入れて娘に背負わせました。
パジャマ姿でリュックを背負った娘が家中を歩き回り、手作りみかんを次々とゲットしていく姿は微笑ましいものでした。隠しぎみに置いておいたみかんも含め、見事10個をスーパーの袋に入れて持ってきてくれました。
娘は満面の笑みで
「ママ、もう一回やろう」と、何度も繰り返しみかん狩りを楽しみました。リビングにレジャーシートを敷いて、二人でお弁当を食べ、私も久しぶりに遠足の気分を味わうことができました。
そのあと娘とゆっくりお昼寝。娘の熱は上がることもなく、翌々日には咳もかなり治まり登園できるようになりました。
あの日のことがよほど嬉しかったのか、娘はその後も思い出すたびに、
「遠足はね、ママとのみかん狩りが一番楽しかった」と言ってくれます。ちょっとした思いつきが娘へのサプライズプレゼントになった「おうちみかん狩り」。写真や動画としては残ってないものの、私たち親子の忘れられない大事なエピソードとなりました。
(ファンファン福岡公式ライター/Natsuki)