コロナ禍で先行きが見えない中でも、家族が増えたり、仕事が変わったり、さまざまな人生の変化はやってきます。
自分や周囲の人のためにも、お金に対する不安は解消して、資産をしっかりと確保しておきたいですよね。 でも、「貯金できない」「財産を増やしたいけれど、まず何をしていいかわからない」なんて、お金に対する苦手意識を持つ人も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は「お金を学ぼう」というオンラインコミュニティを立ち上げ、資産活用のあり方を提案する東 信史(ひがし のぶふみ)さんの元へ。資産形成への“はじめの一歩”についてアドバイスをいただきました。 こんな時だからこそ、明るく、ゆるっと “お金との付き合い方”を考えてみませんか?
東さんは以前、福岡で「福岡テンジン大学」に携わり、現在は京都府にてまちづくりや大学講師、広報など、多彩な仕事を手がけています。
もともと「働いていたらお金は勝手に貯まるだろう」というマインドの持ち主で、金融や経済の専門知識はほとんど無かったとか。
自粛生活中に「今まで興味が無かったジャンルの本を読んでみよう」と、たまたま手に取ったのが経済的自立と早期リタイアについて書かれた本でした。
そこから投資や資産運営に興味を抱き、本格的に「お金の勉強」に取り組んだのは2020年から。
同時に、お金について話せる同志をSNSで募ったところ、50名を超える人々が手を挙げたそう。こうしてオンラインコミュニティ「#お金を学ぼう」が誕生したのです。
みんなで飛び込めば怖くない!?お金ビギナー同士で学び合う「#お金を学ぼう」とは?
共通テーマを掲げて知識を増やすのではなく、参加者の皆さんがそれぞれ日々の活動やお金の悩みを発表。zoomでの勉強会や対話を重ねながら、自分なりの課題を見つけて学びを実践します。
その結果をコミュニティ内で共有することで、また新たな動きが生まれることも…。ほとんどが「お金ビギナー」だった皆さんも、3ヶ月の活動の中でそれぞれの問題を自覚し、現在は貯蓄や投資など活動の幅を広げているそうですよ。
人や社会を動かしてきた東さんならではのアプローチは、お金の付き合い方を探る上で、私たちにたくさんのヒントを与えてくれそう。
早速、ポイントを教えていただきましょう!
1.自分の資産額、すぐに出てきますか?
実際に「#お金を学ぼう」のチャンネルをのぞいてみると、家計の見直し、積立NISA攻略、保険の選び方、節税など、そのテーマは多種多様。一口にお金といっても、実にさまざまな入り口があるのです。最適な方法を探すには、自分に向き合うことが必要不可欠。
そこで、まずは銀行預金や有価証券、不動産などの資産と収入、生活費やローンなど、自分を取り巻くお金を書き出してみましょう。それまでなんとなく把握していたつもりでも、実際にデータにすると新たな発見があるはずですよ。
東さん:「僕の場合は、資産チェック表を毎月初めに記入しています。あとは月に1日だけ、予算内で新しい株式投資をする日を決めています。これらをもとに、今後25年でいくらくらいの資産があれば生きていけるかというシミュレーションも作りました。」
◉Point
【資産管理表を作ろう】
銀行預金、有価証券、不動産などの資産、ローンや生活費などの支出など、自分の周りのお金の動きをエクセルなどでデータにしてみましょう。簡単に管理できる家計簿アプリも便利ですよ。
【データは定期的にチェックしよう】
定期的にお金に触れる習慣を身につけましょう。常に資産を把握しておくと、知らずに減らしてしまうなんてことはもう起こらないはず。
2.使い道を見直して、自分をアゲるお金を増やす
自分のステータスを把握できたら、次は改善です。お金との付き合い方で一番初めに変化がみられるのは“支出”です。すぐに収入を増やすことはできませんが、支出を減らすことは今日からでも可能。そのために意識しておきたいのが、「何のために使ったお金なのか」ということ。
例えば、奮発してちょっといいランチを食べたとしても、気持ちが向上して午後の仕事を頑張ることができれば費用対効果があるのでは? 逆に、タイムセールで安い食材を買っても食べきれずに捨ててしまう場合はどうでしょう。
東さん:「お金がどう入って、どう出ていくのか。さらに、その流れが自分にとって納得のいくものであるのかを考えてみましょう。お金は使ってこそ価値を持ちます。でも、それは自分が満足できた場合。“使わせられている”と感じる支出は、無くすことができるのです。」
◉Point
【支出を見直すなら「固定費」から】
即効性を求めるなら、毎月決まった額を支払う「固定費」に注目しましょう。例えば、水道光熱費やスマホ料金などを一月分チェック。使っていないサービスやもっとお得なプランはないでしょうか?
【交際費をカットしても、コミニュケーションはカットしない】
不要不急の外出自粛中は当然ながら交際費が減少します。でも、せっかく築いた関係性まで削ると、いずれ収入につながるビジネスチャンスを逃してしまうかも。リモートの活用はもちろん、あえてアナログな手紙を送るなど、今だからこそ沁みるお付き合いを工夫しては?
【エコな暮らしで支出をオフ】
ペットボトルの代わりに水筒を活用するなど、ゴミを減らす行動は節約も実現できます。地球にも自分にも優しい使い方を目指しましょう。
【そのムダ遣い、“自己投資”かも】
食費や趣味のお金、交際費などは、ただの散財と我慢を続けると後々のフラストレーションにつながることも…。「自己投資」と考えて、自分の満足感を引き出すのも続けるコツです。
3.お金のことを話し合える仲間を作ろう
自分の資産にじっくり向き合うほど、ついつい悪い方ばかりに目を向けてしまいます。「こうしなきゃ、ああしなきゃ」と焦る前に、ちょっとクールダウン。おしゃべり感覚で身近にいる人とお金についての悩みや考えを話してみましょう。
◉Point
【お金について話せる“マネフレ”を作る】
気軽におしゃべりする感覚で、自分が持っているお金のギモンや悩みを相談する仲間を作りましょう。他者に説明することで、自分の中の不安が明確化して、解決すべき課題が見えてくるはず。
【会話の中で気になったポイントを調べてみる】
お金についての課題が見えてきたら、自分で掘り下げて調べてみましょう。その情報を再び仲間と共有することで、さらに意見が集まり、思ってもみなかったアイデアが飛び出すかも。
【お互いの活動をチェックしてモチベーションUP!】
単独だと息切れしてしまうことも仲間がいれば頑張れるもの。長いお付き合いになる“お金”の問題は、時に他者の視点を借りながら柔軟に取り組むのが継続の秘訣です。
東さん:「コミュニティでも、最初は具体的な資産形成や老後に対するお悩みが多かったんです。
でも、普通の人は投資したからといって、『もう働かなくていいや』なんてことはないでしょう。会話を続けるうちに、もっと目の前にある“自分が豊かになるためのお金の使い方”について真剣に考えるようになったんですよ。
いろんな視点が集まって分かち合うことで、本当に必要な課題がクッキリ見えてきたんです。」
4.投資にチャレンジ!長期的な少額投資+○○投資で資産UP
さあ、今までの動きは言ってみれば準備運動。次はいよいよ“お金を増やす”方法を考えてみましょう。
とはいえ、投資にはリスクも付きもの。初心者には、「つみたてNISA」などの少額投資をおすすめされることが多いのですが…。
◉Point
【まずは少額で投資を体験しよう】
スマホで1株から買える証券やワンコイン以下など、少額の金融投資もどんどん登場しています。ローリスクローリターンなのですぐに増収はできませんが、入門編にはぴったりです。
【老後に向けた資産として続けよう】
銀行預金以外の積立先として、「つみたてNISA」なども考えてみては。非課税の期間が長いので、コツコツ貯めれば働けなくなった時の安心材料に。
https://fanfunfukuoka.nishinippon.co.jp/1264503
【短期的な収入につながるのは“自己投資”】
勉強したり、見聞を広げたり、人との関係性を作ったり、自分のために時間とお金を使うことで活躍の幅が広がる。これも一種の投資です。
東さんは、お金の勉強を進める中で、自分のためにお金を使うよりも、周りの人や地域のために使った方が気持ちが豊かになると気づいたそう。今ではこんな投資も始めています。
東さん:「公共施設や商品開発など、地域の課題を投資という形で応援する“社会的投資”も始めました。リターンが多いわけではないですが、誰かの役に立っているということがモチベーションにもつながるんです。」
https://www.psinvestment.co.jp/news/kumamoto_session/
実際に、東さんの資産が増えた要因の多くは、事業収入、つまり仕事の数が増えたことが一番大きいそうです。マネーハックから自分の成長や仕事の幅を広げることにつながるとすれば、続ける価値は十分にあると思いませんか?
自分の動きが反映されて、資産データの中に成果が生まれると、東さんのように続けることができるようになります。そう、お金との付き合い方で一番大切なのは、“楽しむ”という気持ちです。
あなたが今まで頑張ってきた証でもある資産を無駄なく生かすために、まずは今まで提案した1〜4のステップに挑戦してみてはいかがでしょう。
東さん:「お金に苦手意識を持つ人は、気軽に話せる場所を持つだけでもだいぶ変わると思います。『こうしなきゃいけない』というよりは、『ちょっと考えてみようかな』ぐらいで十分。義務として考えずに自分に正直に取り組んでみてください。」
東 信史(ひがし のぶふみ)
まちとしごと総合研究所 代表組合員
1985年生まれ。京都在住。大学卒業後、リクルートにてスクール事業の広報・経営戦略に関する企画営業に従事。同時に、NPO法人福岡テンジン大学などで授業づくりのコーディネーターとして活動。
2013年に転職し、きょうとNPOセンターに参画し住民主体のまちづくり活動を進めるプログラム運営を経て、2015年より、これからの豊かさを再構築するとともに地域に新たな生業を創り出すことを目的とした「有限責任事業組合まちとしごと総合研究所」を設立。
対話の場づくりに関わり、まちづくりをはじめ、観光や福祉、食、医療など、様々な分野でファシリテーションの実践に取り組んでいる。
文=大内理加