子育て中、冬になると心配になってくるのが『胃腸炎』。特に感染力の強いウイルス性の胃腸炎は、子ども同士であっという間に伝染して、突然嘔吐や下痢、発熱などの症状が現れます。娘が初めて胃腸炎にかかったのは、そろそろ2歳の誕生日を迎えようとしていた冬。嘔吐の症状が出たのはなんと… 自宅近くのコンビニのなかでした。
元気いっぱいの娘
当時、私は会社員。いわゆる事業所内保育所に預けていたので、徒歩と電車合わせて片道30分の距離を娘と通勤していました。そろそろ2歳になろうという娘を抱っこ紐で連れて行くのは非常に大変でした。しかし、歩くにしては徒歩の距離が長く、朝のラッシュの時間帯には周囲に気を遣わせてしまうため、ベビーカーではなく抱っこ紐を利用するようにしていました。
もうすぐ冬がやってこようという頃。「保育園で胃腸炎が流行りはじめた」というのは、娘のクラスの先生から聞いていました。
しかし娘は普段から健康体で、よく食べよく排泄もし、嘔吐や下痢などとも無縁でした。そのため、「うちの子は大丈夫かも」と安易に考えてしまっていたのは否めません。このときはまだ、子どもの胃腸炎の感染力の強さや、如実に現れる症状について、あまりよくわかっていなかったのです。
コンビニで買い物
いつも通り保育園を終え、いつも通り電車に乗って最寄り駅で降り、いつも通りの帰り道。私は駅から家の間にあるコンビニで、翌日に食べる食パンを買うことにしました。
抱っこ紐の娘の様子もいつも通り。ただ、ちょっとだけ大人しいような感じもありました。普段なら、電車のなかの景色についてあれこれ言葉を発するのですが、それが少なかったというか…。しかし私は「まぁでもそういう日もあるだろう」と、まったく気に留めませんでした。
コンビニに着いて、パン売り場の手前に差しかかったときです。抱っこ紐のなかの娘が、背もたれに体重をかけるように天井を仰いで… 次の瞬間、静かに嘔吐し始めました。
娘が急に吐いた!
「えっ? もしかして?」と思ったときにはもう遅かったのです。吐瀉物はあっと言う間に娘の上着や抱っこ紐、私のコートを汚していきました。
こうなってはもう、買い物どころではありません。娘の顔は紙のように真っ白になっているから心配だし、私も娘も吐瀉物で汚れているし…。予測不能の出来事に私の頭も真っ白になりました。でも、そのまま売り場の近くに突っ立っているわけにもいきません。
私はレジにいた男性店員さんに声をかけました。
「すみません、子どもが急に嘔吐してしまったんですが…」するとその男性店員さんは
「あっ、そうなんですね」と言い、テキパキと手近にあったおしぼりやペーパータオルなどを使って、吐瀉物の除去を手伝ってくれた上に、アルコールや除菌スプレーなどを駆使して衣服も消毒してくれました。
自分の家族ならまだしも、他人の吐瀉物の処理を嫌な顔ひとつせず行ってくれたコンビニ店員さんに、何度も謝罪と感謝をお伝えし、自宅に帰りました。
後日も神対応
すぐに娘を連れ病院を受診し、やはりウイルス性の胃腸炎だったことがわかりました。幸いにも2、3日ほど安静にしていたらすぐに治ったのでよかったですが、タイミングが少し違えば電車の中で… という場合もあり得たわけで、ゾッとしますね。
それ以降、私はオムツ処理用の厚手のビニール袋と除菌用ウェットティッシュをかかさず持ち歩くようになりました。言わずもがな、突然の嘔吐に備えて、です。
後日、私は娘と一緒にそのコンビニへ菓子折りを持ってお礼に行きました。対応してくださったのは件の男性店員さんの奥さまでしたが、そのときもにこやかに
「いえいえ、大丈夫ですよ!」
「逆にお気遣いありがとうございます!」とおっしゃってくださり、「買いものの際はここのコンビニに貢献しよう!」と心に誓うのでした。
コンビニの店員さんの、ありがたい神対応。私も誰かがピンチなとき、そっと手を差し伸べられる人でいたいな、と思った出来事でした。
(ファンファン福岡公式ライター/にしふみえ)