その名の通り、道の両脇に美しい海が広がる「海の中道」。福岡市民にとっては、「東のリゾートエリア」として親しんでいる地域で、中心となる「国営海の中道海浜公園」は今年10月に40周年を迎えます。改めて検証してみると、全国に誇りたいポイントがたくさんあるのです。2022年春に新規オープンする「滞在型レクリエーション拠点」施設の全貌も含めて、ライターの帆足 千恵さんがレポートします。
福岡市民も自負する! 「海の中道」ここがスゴイ5
福岡市は博多湾に面してぐるりと広がっていますが、通称「海の中道 (うみのなかみち)」は、北部に位置する志賀島 (しかのしま)と本土をつなぐ砂州を指します。
志賀島といえば、国宝である『漢委奴国王 (かんのわのなのこくおう)』の金印が発見され、古来より「海神の総本社」として知られる「志賀海神社」があるなど歴史の宝庫。
市内から志賀島へ向かう道は、右は玄界灘、左手に博多湾をのぞむ定番のドライブコースでもあります。
「白砂青松 (はくしゃせいしょう)」の美しい自然はもとからあったものではなく、砂質で乾燥しやすく、長い間不毛の地であったこの地を、江戸時代から地道にクロマツの植林がすすめられたことから、築かれたもの。
1976年に固有の白砂⻘松の自然環境の保全、北部九州における広域的レクリエーションの拠点の創出等を目的として、「国営海の中道海浜公園」の事業に着手。1981年の開園以降、約540haの緑地は、福岡市のリゾート拠点として整備、発展を続けました。
今回フォーカスする「国営海の中道海浜公園」は、東西約6km,約350haととにかく広大な自然を有する公園なのです。
福岡市の天神や博多駅の都心から車やバスで30分ほど、JRや博多埠頭から船でも約20分と、手軽にアクセスできるのも魅力です。
近年は「マリンワールド海の中道」やホテル「ザ・ルイガンズ」など公園全体で年間240万人程を集客する人気のエリアで、海外からの旅行者も多く訪れています。
福岡市の西エリアで生まれ育った私にとっては、小学校の遠足や自然体験、学生のころ友達と遊びに行ったり、デートでサイクリングしたり、自分の子どもを連れて動物とふれあったり、プールで遊んだり、野外フェスで熱狂のひとときを過ごしたりと、思い出が尽きない公園なのです。
実はここ、いち早く「レクリエーション」「体験」を核にすえ、先進的な取組を行っていたパイオニア的存在でもあるのです。スタッフの方にお伺いしながら【ここがスゴイ5つのポイント】を整理してみました。
【国営海の中道海浜公園】
■住: 福岡市東区大字西戸崎18-25
■TEL: 092-603-1111
■入園料: 大人(15歳以上) 450円/シルバー(65歳以上) 210円/中学生以下 無料
https://uminaka-park.jp/
【ここがスゴイ1】一年中花がいっぱい。写真映えする絶景が楽しめる!
公園全体が芝生や林など自然の中にあり、そこで年中咲き誇る花々が一番の魅力なのです。季節の花や植物が彩るガーデンやスポットがたくさんあり、一年を通して絶えることなく、来場者を楽しませてくれます。
特に春のネモフィラは、「花の丘」を青い絨毯で埋め尽くすような圧巻の絶景。桜との共演の時期もあり、国内外から写真映えするスポットとして有名に。
コロナ禍以前は、中国や台湾など東アジアを中心に海外からの旅行者をよく見かけました。花畑を背景に楽しそうにポーズをとる人も多かった!
その他、「フラワーミュージアム」や「バラ園」「シンフォニーガーデン」など植物好き、ガーデンニング好きな人にはたまらないスポットが各所にあるのです。
コロナ禍で不自由な生活を余儀なくされるなかで、自然の中で緑や花に癒やされることを痛感した人も多いはず。ここでは緑に囲まれてのんびりと贅沢な時間を過ごせます。
そして、ここ3年ほど注目を浴びているのがコキア。8月には人間の膝以上にのびて、まんまるもふもふに成長し、秋、10月下旬ころには真っ赤に紅葉します。コスモスなどの秋の花との共演もみられます。
【フラワースポット】
■料金: 入園料に含まれます
https://uminaka-park.jp/enjoy_flower/detail.php
【ここがスゴイ2】「体験」を提供するパイオニア、豊富な体験メニュー
今でこそ、観光や旅行の目玉として「体験 (アクティビティ)」が注目されていますが、この公園は開園当初から「レクリエーション」としてさまざまな「体験」を提供してきました。
特に、広い園内の移動手段でもあるサイクリングはぜひ体験したいところ。サイクリングコースはなんと12kmもあるそうです。
1,700台あるレンタル自転車は、目的やレベルに応じてさまざまなタイプがあり、休日はすべて貸し出されることもある人気ぶりです。
私の友人も「学生の頃にいった二人乗りのタンデム自転車が楽しかった!」と30数年前を振り返ります。
クロスカントリー日本選手権が開催されることでも知られていますが、ランニングコースもあり、パターゴルフやディスクゴルフ (フライングディスクを使用し、バスケット型のゴールに入れて競うスポーツ)などスポーツアクティビティも充実!
セグウェイでのガイドツアーや電動キックボードの利用を行っていました。
その他「木工体験」「収穫体験」など子ども・ファミリー向けだけでなく、身近な自然や野生動物について体験などを通じて楽しみながらわかりやすく学んでもらう「環境学習プログラム」など、学びの体験もできるのです。
【おすすめ体験メニュー】
■サイクリング体験: 大人(15歳以上) 500円~/小人(中学生以下) 300円~
https://uminaka-park.jp/cycling/
■ディスクゴルフ体験: 入園料に含まれます
https://uminaka-park.jp/event/event631.html
【ここがスゴイ3】約50種類の動物と触れ合える「動物の森」
私が大学生のころだから30数年前、この公園に行く楽しみのひとつは、「カピバラ」に会えることでした。
世界で一番大きなネズミともいわれている「カピバラ」は、当時他の動物園にもあまりいなくて珍しく、のんびりとした雰囲気が大好きでした。幼い息子も好きになるように足繁く連れて行ったこともいい思い出です。
その頃から変わらず、「動物の森」では約50種類・500頭の動物たちと触れ合える自然動物園をコンセプトに、自然な状態での動物たちのかわいい姿を身近に感じることができます。
【動物の森エリア】
■料金: 入園料に含まれます
https://uminaka-park.jp/animal/
【ここがスゴイ4】ボランティア体験で「海の中道」の自然を学ぶ
【ここがスゴイ2】で「学びの体験がある」と書きましたが、ここではボランティア活動を通じて、たくさんの学びの体験ができるのです。
年間を通して登録した個人が参加できるのが「うみなかフレンズ」。
「フラワーボランティア」や「バラフレンズ」「ZOOボランティア」など9つのグループがあり、約150名が登録されているとのこと。
私が取材にうかがった日は、フラワーボランティアの活動の真っ最中。
午前中は園芸家の先生の指導を受けながら、花壇の草花の植え替えなどの作業を熱心に行っておられました。広大な公園の花々の管理は、やはり地域の方たちの協力が不可欠!
午後からは園芸家の先生によるガーデンニング講座を開催されて、さらに学びを深めていました。
その他、家族や友達で参加できる「ファミリーボランティア」では、「ゼロからの森づくり」をコンセプトに植樹活動などたくさんの活動が開催されています。
また、県外の方も取り組むことができるのが「企業・団体等ボランティア」。特にSDGsに取り組む企業・団体の活動を応援するということで、公園の維持管理などを体験し、学び、チームビルディングにも活用できます。興味がある方はぜひ問合せを。
福岡のワーケーションのプログラムとしても紹介されています
【ボランティア体験】
■料金: 入園料に含まれます
https://uminaka-park.jp/nature/
【ここがスゴイ5】2022年春グランドオープン!「パーク・ツーリズム」の全容
本公園では、さらなる魅力向上のために2019年に公募設置管理制度(Park-PFI)を活用して民間事業者を公募。
2020年に三菱地所株式会社を代表法人とした計4社の連合が、「海の中道海浜公園官民連携推進事業」を担う民間事業者 に選定、2021年に計画認定され、2022年3月に新たな拠点をオープン予定です。
日本でここでしかない取組がいっぱいの新たな公園整備について、三菱地所の「都市開発部主事 駒井知礼さん」と「都市開発部 TAN TINGSHENさん」にお聞きしました。
Q. 新しい拠点のコンセプトと概要について教えてください。
TANさん:「コンセプトは『公園そのものが旅の目的地となる“パーク・ツーリズム”』です。
手がけている公園の東側エリアは大規模な施設がなく、利用者数も比較的少ないところ。あらゆる世代が楽しめるさまざまなコンテンツや空間体験を用意して、公園という日常の空間で『非日常感』も体感できるように計画しています。
4種のユニークな宿泊施設やレストラン、博多湾を一望できる浴場棟や九州最大級のアスレチックタワーをオープン、海浜エリアではカヌーやSUP、 ホーストレッキングなど多様なアクティビティが楽しめます。」
Q. 公園そのものの魅力と、来年オープンする拠点の魅力ポイントを教えてください。
駒井さん:「都心部からこんなに近いところに広大な公園があるのはそれだけで魅力的だと思っていました。
今回充実させる宿泊施設は、博多湾の美しい眺望を楽しめる球体テント、ヴィラ、テントの外でのアウトドアリビング、シーサイドキャビンの4つ。
特に、球体テントは今回オリジナルで作成したもので、完全球体型という形状は日本でここが初めてだと思います。10人ぐらいは入れそうな位とても大きいのですが、よくある半円形ではなく、まるで球が浮いているような感じで、写真映えもします。
福岡市内で、これまでにないグランピング体験を楽しんでください。」
Q.「地域との連携」を表明されていますが、具体的にはどんなこことをお考えですか。
TANさん:「ホーストレッキングなどのアクティビティは、公園の周辺地域の方と連携した取り組みを考えています。
公園に訪れた人々が地域の魅力に出逢うきっかけを作りたいと思い、地元企業に食材を提供いただくことや、地元シェフとのコラボ企画なども考えています。
今回の整備によって、これまで以上に多くの方に来園していただき、そのエネルギーを地域に還元することを目指しています。」
駒井さん:「この地域ならではの『フェス』や『マルシェ』をやってみたいですね。
志賀島や近くの漁港、サイクリング、マリンスポーツなど、この地域を存分に生かした取り組みを、一緒に連携しながら進めていきたいです。」
2022年3月のグランドオープンが待ち遠しい滞在型レクリエーション拠点。「今までにない、ワクワクする体験をお届けするので期待してください!」との力強いメッセージもいただきました。
【グランドオープン情報】
https://www.mec.co.jp/j/news/archives/mec210517_parkpfi.pdf
ここにしかない施設へ。パイオニアは、進化し続ける
今までは身近で手軽に楽しんでいたこの公園が、実は「体験」やボランティアを通して、自然や環境をはじめとした「学び」の場であることも実感しました。
また、日帰りのイメージが強かったけれど、来年春の拠点オープンにより、宿泊して長期滞在できることで、もっと深く魅力を体感できると思うと心躍ります。日本のなかでもここにしかない、福岡市民の自慢のスポットになりそう。
グランドオープンの際は、取材レポートします!
本当は「マリンワールド海の中道」も、九州の海を体験できるなどじっくり紹介したいところ。このエリア全域の情報が発信されている「うみなかたび」を読むと、うみなかの自然の中にいるような心地よい気分になります。
https://uminakatabi.com/
やはり、ここは福岡市の宝のエリア。状況にあわせて、ゆっくり楽しんでみてください。(#202110)
文=帆足 千恵
※緊急事態宣言中の営業日・営業時間については必ずご確認のうえ、ご来場ください
【国営海の中道海浜公園】
■住: 福岡市東区大字西戸崎18-25
■TEL: 092-603-1111
https://uminaka-park.jp/
【マリンワールド海の中道】
■住: 福岡市東区大字西戸崎18-28
■TEL: 092-603-0400
https://marine-world.jp/