ショパン国際ピアノコンクールで入賞、鮮烈なデビューを飾ってから25年。
ますます活動の世界を広げるピアニスト宮谷理香さんがこの秋、福岡市美術館で華道とのコラボレーション「花とピアノの饗宴」に出演されます。これからの新しい挑戦、そして「現在(いま)」を語っていただきました。
お客様との共感・共振をより大切に思うようになりました。
今年はデビュー25周年ということもあり、大変多くの演奏の機会をいただいています。色々な所で多くのお客様に出会えることは本当に嬉しいですね。25年間は濃い日々でしたが、え?もう25年?という気もしています。何かをやり遂げたというよりも私自身にとっては今現在が「前奏曲」、言わば「未来への前奏曲(プレリュード)」と捉えています。
この1年半という期間は感染症予防で、演奏会が中止や延期の連続。お客様とお会いすることができなくなり、哀しい思いもしました。生活様式も随分変わりましたが、徐々に復活し、待望の再開も遂げてきたように感じています。
演奏会でお客様と同じ空気を吸って、同じ波動を感じることがとても貴重。以前に比べると、お客様との共感・共振をより大切に思うようになりました。また、お客様方も私の演奏をより感じようとされている、より深く聴こうと言ったような「前のめり」のエネルギーが伝わってくるのです。客席が能動的になり、ブラボー!とか声を出せない分、拍手がさらに大きくなり、熱さが感じられます。これは本当に嬉しいことです。
美術館で華道とのコラボレーション
私は美術館が大好きで上野の国立西洋美術館や六本木の新国立美術館は特にお気に入りの場所です。コルビジュの建築でロダンに迎えられるのは気持ちの良いものですし(国立西洋美術館のこと)、新国立美術館はスタイリッシュで中に入るまでのアプローチが期待感をふくらませてくれますから。
今回、福岡市美術館でのコンサートのご提案をいただきとても嬉しかったですね。以前コンサートで福岡にうかがった際、少し時間ができたので美術館がある大濠公園を散歩したことがあります。素晴らしいロケーションで、まさに都会のオアシスでした。また訪れることができるのは楽しみですし、そして今回は新しい試みに期待がふくらみます。
実は以前に三井倶楽部(東京)で華道家の楠目ちづさん(故人)が主宰される”いけばなむらさき会”で演奏させていただいたことがあります。美智子皇后陛下(当時)と清子内親王殿下(当時)のご臨席を賜り、お花を活けるパフォーマンスにピアノで伴奏しました。このような機会はとても貴重ですし、またこの時に着用していた加賀友禅の振袖を皇后陛下(当時)からお褒めいただけたのは忘れられない思い出の一つです。この度、西日本華道連盟の理事長で、華道家の片山健氏と共演させていただけることを大変光栄に思っておりますし、どんな舞台になるのか私自身も楽しみにしています。
前半は片山氏によるお花のデモンストレーションと講演で、私はこのデモンストレーションのパートでまずショパンを演奏します。みなさんも耳なじみのある「華麗なる円舞曲」「ノクターンNo.2」「英雄ポロネーズ」などを予定しています。片山氏の創作される華麗なお花の世界を音楽で表現していきたいですね。まさに目で見て耳で楽しむ「美」でしょうか。
後半はその片山氏の作品をご覧いただきながらソロ演奏をお届けします。少しそのプログラムについてご紹介しておきましょう。
まずバッハの「平均律クラヴィーア曲集より第1巻第1番 前奏曲とフーガ」。シンプルな祈りから始まり、ショスタコーヴィチの「前奏曲とフーガ」へ続きます。ショスタコーヴィチと聞くと交響曲などのイメージでドキっとされるかもしれませんが(どろどろ重い?笑)、この曲は本当に美しいのでご安心を(笑) プレリュードの和音だけでできているコラールのような曲、フーガはまるで教会旋法の歌のようです。そしてフランクの「前奏曲、コラールとフーガ」。これも祈りです。ラフマニノフ、ショパンと続きますが、一環してテーマは「未来への前奏曲(プレリュード)」です。
前奏曲は字の如く、何かの始まりであり、それは期待へとつながって行きます。このように期待のふくらむ企画を提案してくださったプロデューサー、関係者の皆さんに感謝しています。
ピアノの魅力。そしてピアニストって実はアスリート
ピアノという楽器は誰でも音が出せます(笑) そして、とても多彩で人間の感情を余すことなく表現できる楽器だと思っています。誰でも弾ける(音が出せる)楽器だからこそ、むしろ親しみを感じて聴いていただけるのではないかと。
それからピアニストというのはなかなかアスリートなのです。自分よりもはるかに大きな楽器をコントロールする、鳴らすのですから。日々の鍛錬(練習)はオリンピック選手に負けていませんよ(笑) 筋肉をどう使うのか、呼吸法は、集中力を高めるためには…etc 鼻息荒く(?)ピアノに向かう姿もご注目いただけると面白いかもしれません。音だけではなく、見どころでしょうか(笑)
かけがえのない唯一無二の時間
これまでの価値観が変わってきました。その人それぞれが幸せを感じる瞬間はもちろん違います。私はこれからエンパシーと言いますか、演奏を聴いてくださるお客様と一緒に過ごせる時間を大切にしたいと考えています。それぞれの方が人生を楽しむ、自分の時間を楽しむ、そんな瞬間を私のピアノで感じていただけたらこんなうれしいことはありません。
今回の「花とピアノの饗宴」は本当に特別な機会です。かけがえのない唯一無二の時間、なかなか創り出せないもの。ここにいらしてくださるお客様とかけがえのないこの時間を一緒に楽しみたいと思います。
< 宮谷理香プロフィール >
金沢市生まれ。桐朋学園大学卒業、同研究科修了。95年ショパン国際ピアノコンクール第5位入賞。第23回日本ショパン協会賞、平成27年度石川県文化奨励賞、他受賞。これまでにパリ、ウィーン、ポーランド、チェコ等でのリサイタルの他、99年ショパン没後150年演奏会(ポーランド四都市)、02年国際交流基金の派遣による演奏会(ポーランド二都市/スペイン四都市)、中国蘇州での日中友好コンサート等にも出演。ライプツィヒ弦楽四重奏団、スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団との共演を始め、リサイタル、レクチャーコンサート、室内楽、学校公演、コンクール審査等、幅広い活動を展開。全20枚のCDを発表。直近の14枚がレコード芸術特選盤。著書に「理香りんのおじゃまします!」。2017年春より「音楽の友」及び「ムジカノーヴァ」各誌にて連載。曲種を鮮やかに生かす第一級のピアニズムと冴え渡る音楽性、心に迫る演奏が熱い支持を集めている。
宮谷理香ホームページ: http://www.miyatani.jp/rika/
秋の特別アカデミー「花とピアノの饗宴」公演情報
●日時 : 2021年11月21日(日) 1st Stage 13:00開演 / 2nd Stage 16:00開演
※本公演は2回公演で内容は同じです。
●場所 : 福岡市美術館 ミュージアムホール (定員180席)
●入場料 : 全自由席 前売2,500円(税込) / 当日3,000円(税込)
●チケットのお求め : チケットポート福岡パルコ店 092-235-7223 (福岡PARCO 本館5階)
ローソンチケット http://l-tike.com/ (Lコード:83989)
●公演内容 :
第Ⅰ部 華道デモンストレーションと講演「花と私と世界旅行」
西日本華道連盟理事長 片山 健
(途中、宮谷理香氏によるショパンの演奏と共演予定)
第Ⅱ部 花とピアノが織りなす時間 / 演奏: 宮谷理香
<演奏曲目>
バッハ 平均律クラヴィーア曲集第1巻第1番 前奏曲とフーガBWV816ハ長調
ショスタコーヴィチ 24の前奏曲とフーガOp.87より第1番 前奏曲とフーガ ハ長調
フランク 前奏曲、コラールとフーガ ロ短調
ラフマニノフ 前奏曲 Op.3-2 嬰ハ短調「鐘」
ショパン 前奏曲より 第20番-24番 Op.28.20-24
※曲目は当日変更になる場合があります。
●主催 : 西日本華道連盟福岡支部 / 福岡アートミュージアムパートナーズ
●お問合せ : 西日本華道連盟事務局 (西日本新聞イベントサービス内)
電話:092-711-5491