「人を見た目で判断してはいけない」皆さんも一度は聞いたことがあるセリフではないでしょうか? そうはいっても、見た目が怖そうな人に会うとついつい避けてしまうことが多かった私。しかし子どもが生まれてからというもの「人は見た目じゃないな…」と思うようなことが何度かありました。今回は、その中の1つでとても印象に残っているエピソードをお話しします。
眼つきがするどい強面なお兄さん
当時2歳の娘と6カ月の息子をつれて、屋内遊園地に来ていた時のことです。夕飯はどうしようかと悩んでいたら、ちょうどこの近くにラーメン屋さんがあることを思い出しました。そのラーメン屋さんが作る餃子が美味しいと義母が言っていたので、夕飯のおかずに買って帰ることにしたのです。
ラーメン屋さんに到着すると、娘とは手を繋ぎ、息子は抱っこ紐を利用して前抱っこをした状態で店内へ入りました。お店の中は中央にカウンター席、両サイドには通路を挟んでお座敷があり、細長い造りでこぢんまりとしていました。肝心のレジは入り口と真逆の奥にあり、お座敷とカウンター席の間を通り進まなければなりません。
ふと左側のお座敷に目をやると、眼つきがするどい強面なお兄さんが2人…。「絶対怖い人だ…」そう思った私は、反対の通路からレジへ向かうことにしました。
心温まる神対応…!
無事に餃子を受け取り出口へ向かおうとすると、先ほど通ってきた通路では店員さんがオーダーを取っている最中でした。通路は大人1人分のスペースしかないため、仕方なく先ほどの強面お兄さん達が座るお座敷の横を通ることに。
よちよち歩きの娘と手を繋ぎ、娘は私の一歩後ろを歩くような形で通路を進みます。すると急に、娘と繋いでいた右手がガクンと引っ張られ、同時に娘の手が離れたのです。「?」と思って後ろを振り向くと、履いていたサンダルが片方脱げ、どうしたら良いのか分からず困った顔で立ち止まっている娘がいました。
あっと思ったのもつかの間、私が動くよりも先にお座敷から手を伸ばし、サンダルを拾い上げてくれた人物が…。先ほど「絶対怖い人だ…」と思っていた、あの強面なお兄さんでした。
さらにお兄さんは私と娘の間にしゃがみ込み、
「はい」と言って娘の足元に拾ったサンダルを差し出してくれたのです。私からはお兄さんの後ろ姿しか見えませんでしたが、娘がニコニコしていたので、きっとお兄さんも優しく微笑んでいたのではないかと思います。
その後、何事もなかったかのようにお座敷へと戻った強面お兄さんに
「すみません、ありがとうございます!」と声をかけると、ペコッと頭を下げて少し恥ずかしそうに微笑んでくれました。
人は見た目じゃない!
もしもお兄さんがサンダルを拾ってくれていなかったら、狭い通路で息子を抱っこしたまましゃがみ、娘にサンダルを履かせるといった行為は大変だったと思います。
娘とまた手を繋ぎ直した私は、お兄さんに対する感謝の気持ちと、見た目で判断していたことに申し訳ない気持ちになりながらお店を後にしました。
「人は見た目じゃないな…」と思うような出来事は他にもあり、娘を連れて困っている際に、威圧感のあるおじいさんや派手な見た目の高校生に良くしてもらった経験があります。
そんな中でも、この強面お兄さんとの出来事はとても印象に残っていて、見た目重視という自分の価値観を変えるきっかけとなったのです。まだあまり喋らない娘に、何度も
「優しいお兄さんだったね〜」と話しながら、ホカホカの心で家路につきました。
(ファンファン福岡公式ライター/きゆな なみ)