娘が幼い頃、私は体調を崩してしまい娘を近所の保育園に預けていました。当時娘は2歳で、イヤイヤ期真っただ中。朝の忙しい時間に始まるイヤイヤに、いつもうんざりしていました。ですが一回だけ、思わずほっこりしてしまったイヤイヤがあったのです。
イヤイヤ期 娘の扱いに悩む日々
赤ちゃんの頃から、娘は
「あまり手のかからない子ね」と言われていました。ですが、近所の祖父母宅へ行けば
「おうちへ帰らない」と言ったり、眠たいはずなのに
「寝ない」と言っていつまでも起きていたり。それなりにイヤイヤ期はあり、私は娘の相手に疲れていました。初めての子というのもあり、成長を喜ぶ半面、どう相手にしたらいいか分からなくなってイライラしていたのだと思います。
夫は育児に協力的でしたが、朝の支度はいつもバタバタ。保育園の送迎は夫が担当でした。急いで娘の支度を整えていましたが、そういうときに限ってイヤイヤを言い出すのです。
「これ! パジャマ(で行く)!」
「パン いや!」
「わんわん~(テレビを見たいと大泣き)」
こんなやり取りが毎日のように続き、いったいこのイヤイヤ期はいつ終わりを迎えるのかと、夫も私も出口のない迷路に迷い込んだような気持ちでいました。
思わぬところでイヤイヤ発動! でもつい笑ってしまって…
その日も、いつも通り娘の支度をしていました。ただ、いつもは嫌がる着替えや朝ごはんがすんなり終わったので
「今日はあんまりイヤイヤ言わないねぇ」と夫と話していました。
夫と手を繋いでアパートの階段を降りていく娘を、玄関から見送りながら、「子どもって突然成長するんだなぁ」と、のんきに考えていたときでした。
娘が突然ぴたっと歩くのをやめたのです。その視線の先には娘の三輪車が…。
そして突然、
「三輪車 きこきこする~!」と、言い出したのです! 保育園が大好きな娘は、家を出るといつもにこにこしながら登園していました。このタイミングで
「三輪車 きこきこする!」と言い出したのは初めてでした。
登園時間が迫っていましたので、夫が
「保育園行こう! 先生が待っているよ」と何とか気を引こうとするも、全く効果はありません。娘は
「いや! 三輪車 きこきこする~」と地団駄を踏みながら泣き出してしまいました。
朝の支度がスムーズに終わったのは何だったのか、と一瞬ため息を吐きたくなりました。ですが、舌足らずな話し方で一生懸命
「きこきこする~」と言う姿や、起きてから家を出るまでイヤイヤせずに頑張っていたのかなと思うと、可愛くて、夫も私もつい笑ってしまったのでした。
娘の可愛いイヤイヤにほっこりした私たちは、
「そうだよな、三輪車乗りたいよな」
「帰ってきたら一緒に乗ろうね」と、娘の気持ちを否定せず、寄り添う声掛けをすることが出来ました。
残念ながら泣き止んでくれませんでしたが、車に乗った娘に
「いってらっしゃい!」と手を振ると、
「三輪車、きこきこする~」と言いながら手を振り返してくれました。これもまた可愛かったです。
今ではしっかりしたお姉ちゃん
あの小さかった娘も今年10歳になります。幼い時期ならではの舌足らずな物言いや言い間違いもすっかりなくなり、今では2人の弟がいるしっかり者のお姉ちゃんです。
大好きでたくさん遊んだ三輪車は、その後3歳違いの弟が乗り、今は、今年1歳になる二人目の弟が乗っています。娘に、「三輪車、きこきこする~って泣いていたんだよ」と話しても覚えてないですが、親の私たちにとっては忘れられない大切な思い出です。
(ファンファン福岡公式ライター/すずとふくみみ)