看護師という職業に憧れる女性は多いのではないでしょうか。命を守る現場の最前線に立って働く専門職として、頼られ尊敬される存在です。
しかし、同時に過酷な職業であることは間違いありません。命の誕生や病気から立ち直る人の強さに触れる素晴らしい経験をする一方で、死にゆく命に寄り添う状況に日々、向き合うこともあります。福岡女学院看護大学には、そんな「看護師」という職業を目指して自分を磨く若き女性たちが集まっています。
学生の数だけある「看護師を目指す理由」
なぜ、看護師という職業を目指すのでしょうか。学生たちに尋ねてみると、そこにはたくさんの理由がありました。「看護師だった母に子どものころから憧れていたから」「幼い頃、通院先の病院にいた看護師さんが優しくて」「医療ドラマが好きでよく見ていた。患者さんの最も近くで支える看護師さんになりたいと思った」「小学生のころ保健の先生を見て、人の役に立つことは素敵なことだと思ったので」など。もしかしたら一つとして同じ理由はないのかもしれません。
NICUで出会った「800gの命」
そんな中、ある一人の学生が話してくれました。「高校生時代に、看護師体験で行った病院のNICU(新生児集中治療室)に800gの赤ちゃんがいました。その赤ちゃんを見たとき、私は強く『この命を救いたい』と思いました。だから、看護師を目指しています」 看護師という職業は、「命」という人間にとって最も尊い存在に寄り添い、「救う」という使命がある数少ない職業の一つです。だからこそ、その輝きに憧れ、学びたいと目指す学生が多いのでしょう。
「人にしかできない看護」を学ぶということ
看護師には当然、高い知識と技術が求められます。しかし、看護の対象となる「人」には健康レベル、生活環境、性格などの特徴があり、看護師は、その特徴に合わせて適切なケアを行うことが必要です。看護師には「人」を理解する能力も求められるのです。
福岡女学院看護大学は、人への理解に基づく「ヒューマンケアリング」の視点を重要視した教育方針を掲げています。「ヒューマンケアリング」とは、看護を受ける人々を全人的に受け止め、心を込めたケアを行うこと。また、そうすることで看護師自身も人間として成長できること。そんな深い人間理解に基づいた看護を目指しています。
近年、医療の現場にもAIの機能などが数多く活用されています。しかし、病を患い、気分も落ち込んだ「人」に思いやりあふれる言葉をかけること、また優しく背中をさすってあげること、それは「人」にしかできない“手当て”です。「人」を理解することの大切さが、そこに確かに存在しています。
キリスト教の愛の精神がはぐくむ「人」への理解
福岡女学院看護大学が実践している「人」を理解するための教育には根底に「キリスト教の精神」が貫かれています。「あなたがして欲しいように、他の人にもしなさい」という博愛の心です。その信念から、愛ある人間理解が育まれています。
まず、看護の専門知識に加えて、人文・自然・社会科学などの学びは知識と視野を広げます。例えば、必須科目となっている「人間の発達と心理」の講義は、人間の誕生から死に至るまで、人間が個体としてどのような発達をして変化を遂げ、その時々にどのような課題があるのかを考察していくものです。
毎日2限目の後のチャペル礼拝では、讃美歌を歌い、聖書の言葉を読み、多様な分野のゲストスピーカーの話を傾聴。自分を見つめ、さまざまな価値観について考える時間となります。
その他、看護大学には珍しく海外研修やグローバル化する社会で活躍する看護師を育てる「多言語医療支援コース」があること、1年次から4年次まで医療における倫理的な課題を探求する講義が設けられていることなどの特徴が挙げられます。「看護」を学びながら、多様な学びを吸収する場が提供され、「人」を理解する力が養われます。
先進的な教育で磨かれる「考える習慣」
同大学には、優れた施設も整えられています。単科大学として日本で初めて設立したシミュレーション教育センター「AI Sim(アイ シム)」では臨床現場が再現され、すべての専門領域の技術や知識の習得ができます。航空機のパイロットが実機訓練の前にフライトシミュレーターで訓練をするように、看護の現場を再現した場所で学習できるのです。
本センターの取り組みは、コロナ禍における実習代替としても注目され、文部科学省の視察や福岡県からの委託事業、テレビ取材などを受けています。また、シミュレーション教育指導者育成の各種研修会やセンターの見学なども増えているそうです。
さらに、オリジナルのデジタル教材「ミッションタウン」も、先進的な学びの方法です。がんや糖尿病などさまざまな疾患がある患者とその家族が暮らす仮想都市「ミッションタウン」で、患者それぞれの情報を得ながら病気への理解を深め、最適な看護や支援を学びます。
学生たちがこれらの設備や教材で身に付けるのは、技術や知識を超えた「気づき」です。繰り返し看護師としてのシミュレーションを行うことで、やがて「その時、私は看護師としてどうあるべきなのか」と考える習慣が身に付きます。
命に寄り添うために、磨き続ける心と技術
「看護師になりたい」と同じ目的を持って集まった同大学の学生たちですが、「どのような看護師になりたいか」と尋ねると、さまざまな答えが返ってきます。
消化器内科の看護師を目指している学生は、「患者さんの『食べる喜び』に寄り添いたい」と話します。また、「人の命を間近で見たい」と話す学生は救命救急医療の現場で働く希望を抱いています。小児科を目指す学生は、「子どもの笑顔や力を引き出したい」と目を輝かせます。
専門知識や技術を持った看護のスペシャリストの枠を超えて、一人一人の患者に向き合い課題を解決する「プロフェッショナル」を目指す姿が、そこには芽生えています。
学生たちを導く教職員たちは、学生たちの探求心に応えようと、情熱をもって取り組んでいます。教職員たちもまた、成長している大学なのです。
「救う」使命を持ち「命」を支える現場へ
福岡女学院看護大学は、開学以来10年連続・就職率100%という高い実績を誇っています。しかし、実績だけでは物語ることができない、深い人間への理解を探求していることが、この大学の教育の根幹です。それは、「人間として成長をしてこそ、看護師として輝くことができる」というメッセージであり、看護師だけでなく、あらゆる職業につながるものかもしれません。
136年間、受け継がれるキリストの教え。福岡女学院は、歴史ある女子教育の総合学園です
福岡女学院の出発点は、1885(明治18)年ごろの福岡因幡町(現在の福岡市中央区天神2丁目)の一角にあった家屋です。この年の5月に来福した米国メソジスト監督協会派のジェニー・ギール女史が、ここでキリストの福音を伝え、英和女学校(福岡女学院の前身)の初代校長となりました。以来136年、戦時下にあっても欠かすことのない礼拝は、キリスト教の教えのもと今も受け継がれています。
福岡女学院は、歴史ある女子教育を継承し、幼稚園、中学校・高等学校、大学、看護大学、大学院を擁する総合学園として発展しています。
福岡女学院看護大学
住所:福岡県古賀市千鳥1-1-7
電話:092-943-4174
提供: 学校法人 福岡女学院