言葉を覚え始めたころの子どもの言い間違いはとってもかわいくて、耳にするとつい笑顔になってしまいますね。もちろん、わが家の息子にも言い間違いがたくさんあります。中でも抱腹絶倒だったのが、保育園のクリスマス劇のときのエピソードです。
みんなが楽しみにしているクリスマス劇
息子の保育園では、クリスマス劇は毎年の恒例行事でした。それはイエス・キリストが馬小屋で誕生する日を劇にしたもの。そこにはマリアやヨセフ、3人の博士や羊飼いなどが登場します。
劇に参加するのは年少クラスから。「羊」や「お星さま」などのいわゆるチョイ役だけど立派に参加します。主要なキャラクターは年長の園児が担当。小さな年少さんたちはその頃から間近で年長さんの演技を見て、
「いつかはあの役をしたいな〜!」と憧れを募らせるようです。
親も、年々メインキャラクターを担当するようになっていく子どもたちを見て、
「ここまで大きくなったんだ!」と成長具合に改めて感動します。クリスマス劇はそれぞれみんなが楽しみにしている特別な行事でした。
大きくなったらなりたい、憧れの◯◯
年少の息子は「羊」役。「羊飼い」の飼う羊の群れの中の1頭で、セリフがあるわけではありません。でも、羊の耳仕様のモコモコなカチューシャとふわふわのシッポをつけた姿はとてもかわいらしかったです。
もちろん彼も例外ではなく、年長さんの演技を見て、「この役をしたい!」と思うものがあったようです。クリスマス劇の練習が始まったその日の夕方、保育園に私が迎えに行くと、駆け寄ってきて興奮気味に言いました。
「ぼくね、大きくなったらヘンタイになりたいの!」と… いきなり衝撃の告白をされた私は
「へ?」と一瞬理解ができませんでした。そのあと、続けて彼が言ったのは
「ヘンタイの1番えらい人はヘンタイチョウなの!」
「ヘンタイ」とは一体何だ?
ここでやっと理解ができました。息子は「兵隊」になりたいんだ。兵隊役の甲冑風の衣装や槍に惹かれたようでした。
でも「兵隊」を「ヘンタイ」と言い間違っている! 「兵隊になりたい」が言えず「変態になりたい」になってしまっている!
真顔で必死に「いかに自分は”変態”になりたいか」を主張する息子がおもしろすぎて、かわいすぎて。もう少し楽しみたいと、敢えて訂正をせずに、そのままにしておいたのでした。
すると翌日、先生が笑いながらこんな話を教えてくれました。同じ年少クラスのこうたろう君は、人数調整で兵隊役に大抜擢されたそうです。それが自分のことのように嬉しかった息子は、こうたろう君のお母さんが迎えにきたときに、誰より早く駆け寄って意気揚々と伝えました。
「こうたろう君はヘンタイなんだよ!」と…
こうたろう君のお母さん、かなりびっくりされたそうで。そりゃ、そうですよね。いきなりわが子を変態呼ばわりされたら… 「これはいかん。人様にご迷惑をおかけしてしまう!」と思い、泣く泣く息子の言い間違いを訂正したのでした。
一方、息子は自分の間違いに気づいておらず「お母さん、何を言ってるの?」とでも言いたそうなキョトンとした表情で聞いていました。
年長になった息子の役は
年少のとき羊役だった息子は年中時には「羊飼い」になり、年長のときにはもちろん「兵隊」と言え誇らしげな表情で「兵隊長」を立派に演じました。何年経ってもクスっと笑ってしまうとっても大切な言い間違いの思い出です。
(ファンファン福岡公式ライター/鶴野 ふみ)