娘が2歳のクリスマス。母子2人暮らしの私達が、ショッピングモールへイルミネーションを見に行った時の事です。テンションが上がって走り回る娘。必死に止めようとする私。こうなると連れて帰るのに一苦労することは目に見えていました。私が「もうおしまい!」娘の左腕を掴んだ時です。確かに腕の奥で「カクン」と鳴ったような…。
ぶら下がった左腕…
「イタイー!」
娘は周囲の人も振り返るほど大泣き! 抱き上げたものの「腕が抜けた!?」と内心ハラハラ。保育士歴10年の私は、「あの程度で腕は抜けない」という自信と
「踊っていただけで抜けた」という友人の言葉が頭をグルグル巡っていました。泣き疲れて眠る娘を見て無事を願うばかりでした。
ところが起きた娘はご機嫌で、プレゼントを選んで食事も完食しました。が、左腕は動きません…。左側にお気に入りの人形を置いても右手で取るし、テーブルに左腕を乗せても気付けば下ろしている。機嫌はいいけれど、ぶら下がる左腕がやはり気になり、夜間救急へ行く事にしました。
クリスマスにごめんね。不安と罪悪感
混み合ってる院内。看護師さんが娘の腕を上げ下げし、離します。左腕は、ぶらーん…。首をかしげる看護師さんに、娘は無反応のままです。看護師さんは
「痛がらないのにねぇ… 先生に診てもらおうか。先生ちょっと口悪いんだよね。大きいし泣いちゃうかな!?」と言いました。
楽しかったクリスマス。「プレゼントを選んでご飯を食べて… でもずっと痛かったんだね。しまいにはお医者さんを見てきっと大泣きさせてしまう… 娘よごめんね」私の胸は罪悪感でいっぱいでした。
大きな男性医師を目の前に、娘がとった行動
診察室には、大柄・裸足にスリッパ・強面の男性医師がいました。
「どれ! どこ?」と強めの口調で娘の左腕をとり、ねじって曲げて伸ばして… まだ人見知りの残る娘は、泣きも笑いもせず“無”の状態です。
「大丈夫そうだけど?」と言って医師は引き出しを開け、あるものを娘に差し出しました。
すると! それまで“無”だった娘が「はっ!」という顔をして、とっさに左手を出し、しっかり受け取ったじゃないですか!
看護師さんも笑って
「なーんだ」と一言。人形を見ても、ご飯を目の前にしても動かなかったのに、左腕を動かしたのは、なんてことない“動物のシール”でした。
医師は
「もし抜けたとしても一瞬だね。どこも抜けてなかったから」と一言。唖然としていた私に
「はいはい、もう帰ってー」と言いました。
「お騒がせしました。」と頭を下げ
「シール!」とご機嫌の娘を連れて診察室を後にしました。きっと私は、トナカイの鼻のように赤くなっていたでしょう。
腕が動かなかった原因は?
そう… 娘は女優のような演技力の持ち主なのです!
以前も2回ほど
「足がイタイ」と訴え、動けなくなったことがありました。最初はとても心配しましたが、途中で気付いたのは「しびれただけ?」ということ。両脇を抱え立たせても、「大丈夫」と思えるまで頑に動かない娘。私は、別名“ビビリ”とも呼んでいます。
まさか今回も名演技だったとは…。最終的に、無心になっているところに、シールが出てきて思わず腕を伸ばしてしまい、女優の魔法がとけた娘。帰りの車の中でも
「センセイ! シール!」と喜んで顔や左腕に貼って遊んでいました。
あんなに心配したのに! ごめんねって罪悪感でいっぱいだったのにー!
こうなったら、ぶれずに演じきる根性を生かして立派な女優になってくれ! と、2歳児の将来を願う母でした。
(ファンファン福岡公式ライター / ちょこまま)