吃音(きつおん)の障がいがある息子。小学校に入ってから自覚をし始めて、悩んでいる様子が見られるように。ある日「今度生まれる時はスラスラ話せる人になりたい」と泣きだしたのです。わかってあげられない苦しみに悩んだエピソードを聞いてください。
吃音に気付いた保育園時代
息子は、生まれつき吃音の障がいがあります。
吃音とは、以前は“どもり”といわれていた症状で、話し言葉がすんなりと出ない発話障がいのひとつです。吃音に特徴的な症状は以下の3つがあります。
連発:「か、か、からす」など同じ言葉を続けて発音する
伸発:「かーーらす」など最初の言葉を伸ばして発音する
難発:「… からす」など言葉が出ずに詰まってしまう
息子は難発の症状が年少の頃から目立ち始め、発達支援センターや吃音専門の病院にお世話になりました。症状としては重く、小学校入学までに症状が軽減されなければ、一生付き合うことになるかもしれないと診断されたのです。
小学校入学後も、息子の症状は変わりませんでした。担任の先生や学校側には対応方法をお伝えし、吃音が原因のトラブルに関しては、厳しく対応してもらっていたのですが…。やはり子ども同士のからかいは避けることはできませんでした。
それでも息子は頑張って登校していましたが、4年生になったある日、プツンと心の糸が切れてしまったのです。
泣きながら息子が言った言葉
その日の朝はなかなか準備をしませんでした。
「どうしたの?」と声をかけると、息子は泣きながら
「もう学校に行きたくない」と言い出しました。言葉を詰まらせて真っ赤な顔をしながら
「今度生まれてくるときはスラスラ話せる人になりたい」と言うのです。
「みんなみたいに言いたいことをスラスラ話してみたい」と…。
親としては、息子の吃音を受け入れ、
「今のままで良い」
「あなたの個性なんだ」と言い続けてきていました。
でも息子には本人にしかわからない苦しさ・悲しさ・生きづらさがあったのだ、と思い知らされた気持ちでした。息子の本当の気持ちはわかってあげられていなかったのかもしれないと、親子で泣きました。
息子はなかなか泣き止むことはなく、今までどんなことがあったのか、どんな気持ちだったのかを話してくれました。
「言葉が詰まって息が苦しい」
「言うことを最後まで聞いてくれない」
「吃音のことをわかっている先生とわかっていない先生がいる」
「どうして治らない病気なのか」…
吃音を自覚しだした頃から心の中に合ったモヤモヤを、全て吐き出した息子でしたが、学校は休みました。家にいても好きなゲームもやらず、ぼーっとしている様子。
息子の周囲には支援教室の先生や、かかりつけの医師もいました。それでも息子にとっては「治らない病気」「自分は人より劣っている」という気持ちがコンプレックスになり「話すこと」に不安を持つようになってしまったようです。
親子二人三脚で
吃音は、発症後8割の人は自然に治り、残りの2割の人は症状が固定され、特効薬も治療法も確立されていないと言われます。息子は年齢的に症状が固定されている状況。これから長い人生、吃音と共に生きていくことになるでしょう。治らないのなら、親子で向き合い、うまく付き合っていくしかありません。
息子は今、学校には行けない状態です。支援教室の先生などにアドバイスをもらいながら、学校復帰への道を探しています。吃音への理解が進み、少しでも吃音者が生きやすい世の中になることを祈りながら、息子に同じ涙を流させない親でありたいと思っています。
(ファンファン福岡公式ライター/きなこ)