日本人の約2人に1人は何らかの「がん」に罹っている現代、手術(外科治療)、抗がん剤などを使う化学療法(薬物療法)、エックス線、ガンマ線や粒子線などを直接がん細胞に照射する放射線療法が、主な治療法です。中でも化学療法はがん治療を大きく変え、他の治療法を併用することで治療成績を上げています。しかし一方で、強い副作用が患者にとって大きな負担になっています。そんながん治療の現状に関して、「ふじ養生クリニック福岡」の藤本勝洋先生にお聞きしました。
ふじ養生クリニック福岡 院長 藤本勝洋 先生
神奈川県出身。福岡大学医学部卒業。福岡大学病院、名古屋市立大学関連医療施設、その他県内市中医療施設などを経て2012年ふじ養生クリニック福岡開業。がん治療のスペシャリストとして県内外各地から来院される多数のがん患者の治療を行い、福岡大学医学部非常勤講師として後進の指導にもあたる。
低用量の薬剤で副作用を抑えた、薬理に基づくがん治療
抗がん剤はその機序から、がん細胞だけでなく正常細胞も少なからず叩いてしまい、副作用に悩まされてしまう側面もあることはご存じと思います。 しかし研究が進み、増殖や転移するがん細胞の特定分子を狙って働きを抑える、「分子標的薬」が次々と登場しています。副作用がまったくないわけではありませんが、正常細胞へのダメージが少なく、従来の抗がん剤に比べると、体への負担は少なくなっています。 また、手術、抗がん剤、放射線治療に続く、がん治療の4つ目の切り札として注目されている免疫療法の分野では、「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる新しいタイプの抗体薬(ニボルマブ、アテゾリズマブなど)も広く使用されはじめ、その効果が実証されています。 このように、がん治療の分野は日々進歩しています。それでもいわゆる標準治療にも限界があり、その限界に達すると「もう、うちではやれる治療がないのでホスピスをご紹介します」と言われてしまうこともしばしばです。 ですが、この「治療方法はもうありません」の一言だけで「治療をあきらめる必要はない」と私は考えています。「絶対治ります」だと嘘になりますが、「治療法がありません」というのも真実ではありません。 「このがんに対してこの薬」ではなく「薬の数だけがん治療はある」と考え、今までの経験と知識をもとに患者一人ひとりの病状に向き合い紐解いて、合う薬を選び、「薬と生体の相互作用」である「薬理」に基づき抗がん剤の効果をより高める。これが当院の治療スタイルです。 体にどう作用するか「薬理」を考慮して薬を選択し、適切な投薬スケジュールで治療することで、薬は驚くほど低用量で済み、多くの抗がん剤治療患者が苦しむ副作用を最小限に抑えながら治療を続けることができるのです。
がん治療をあきらめない! 余命6か月と言われたステージ4で2年生存例
当クリニックには、別の医療機関でがん診断を受けた方やもう治療できないと言われた方などが、県内外各地から来られます。 ステージ4のすい臓がんで、長くて半年と余命宣告された会社経営者Aさんは、「入院はできればしたくない、経営者としてすべきことがまだある、自分の生き方に合う治療がしたい」と来院。願いは「ご飯が食べられて、倦怠感なく、ぎりぎりまで仕事ができること」でした。 Aさんは、当初の日常生活動作レベルが比較的良好でPS(パフォーマンスステイタス)‐1の「軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが歩行や軽労働、座業はできる」状態でした。抗がん剤治療を受けなら、見た目も変わらず生活の質を落とさず、半年どころか2年間にわたり維持しました。その治療頻度は、2時間半の抗がん剤点滴治療を3週間に1度と、仕事に支障なく行えました。 このように、標準治療のガイドラインはあくまでも参考と踏まえた上で、患者一人ひとりに合った治療を見つけられるかどうかが私たちの治療の基本です。この基本に立脚して治療を行うと、日常の50%以上を寝たきりで過ごしていたPS‐3、4の方々が起き上がれる程に回復する場合もあります。治療方法がないと言われた方でも、治癒と言えるほどの寛解例も少ないながら認められます。 治療環境のポイントは設備や医療施設の規模ではなく、寄り添う心です。患者はネガティブになりがちですが「がん患者は2人に1人」「戦っているのは自分だけじゃない」と希望になるメッセージを送りながら、一人ひとりに最善の治療を日々模索しています。
ふじ養生クリニック福岡の特徴
<からだにやさしいがん治療 まずは納得いくまで病状を知ること> 子育てや仕事などで「入院していられない」という方が望む、「自分らしい生き方ができる治療」のため、薬理に基づいた低用量の抗がん剤治療など、生活の質を保てる体にやさしいがん治療。まずは患者として納得いくまで病について知り、治療について学ぶことが大切です。当院では特に、はじめての患者さんへの説明とヒアリングを大切にしており、時には2 時間に及ぶこともあります。 <薬理に基づくがん治療> 使用薬剤の用量、スケジュールを調整し、副作用をできる限り抑えます。日常生活に支障がない治療を行い、がん細胞が住みにくい環境を作ります。 <対象となるがん> ● 脳腫瘍 ● 頭頸部がん(甲状腺がん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がんなど) ● 肺がん ● 乳がん ● 食道がん ● 胃がん ● GIST(消化管間質腫瘍) ● 十二指腸乳頭部がん ● 肝細胞がん ● 胆嚢がん ● 胆管がん ● 膵がん ● 腹膜がん ● 前立腺がん ● 膀胱がん ● 尿管がん ● 腎盂がん ● 大腸がん(結腸・S 状結腸・直腸) ● 子宮頚がん ● 子宮体がん ● 卵巣がん ● 各種肉腫など ※治療対象は基本的に固形がんを対象にしています。 ※白血病などの血液がんは基本的に治療対象外ですが、状況によって相談に応じます。 ※標準治療から外れる治療法は自由診療となります。