「心血管疾患(狭心症・心筋梗塞)」について専門医がアドバイス【福岡輝栄会病院】

血管の動脈硬化が引き起こす疾患にはさまざまな種類があります。今回は、心臓の筋肉に酸素や栄養を送る「冠動脈」の詰まりによって起こる、狭心症や心筋梗塞について福岡輝栄会病院の大塚頼隆先生にうかがいました。

出典:西日本新聞
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【循環器専門医】福岡輝栄会病院 大塚頼隆 先生

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 医学博士。日本内科学会認定医。日本循環器学会専門医。日本心血管インターベンション治療学会専門医・代議員。日本冠疾患学会評議員・特別正会員(FJCA)。米国心臓病学会特別正会員(FACC)。ヨーロッパ心臓病学会特別正会員(FESC)。久留米大学心臓血管内科客員准教授。

突然死にも繋がりかねない「狭心症」、「心筋梗塞」。早めの治療で命を守りましょう。

生活習慣病がある人は注意。喫煙習慣や家族歴も関連

 血管の動脈硬化が引き起こす疾患にはさまざまな種類があり、脳の血管が詰まれば脳梗塞、足の血管が詰まれば閉塞性動脈硬化症を引き起こします。そのなかで、心臓の筋肉に酸素や栄養を送る「冠動脈」の詰まりによって起こるのが、狭心症や心筋梗塞です。  狭心症は、冠動脈の内側に脂肪が付着して狭くなり、心臓へ送られる血液が不足することで発生する病気です。一方、心筋梗塞が起こるのは、冠動脈の動脈硬化で狭まっている箇所に血栓が詰まり、心筋への血流を完全に塞いでしまったとき。心臓への酸素、栄養が止まるため20分もすると心筋が壊死し始めますが、壊死の程度や範囲によっては心臓機能が極度に低下し、心不全が起こりやすい状態になってしまいます。  どちらも一般的に、動脈硬化をはじめとする生活習慣病(糖尿病・高血圧症・脂質異常症など)があると発症リスクが高いと考えられます。近親者に心臓病の方がいる方や、喫煙習慣がある方も要注意。男女別では8対2で男性に起こりやすい病気ですが、高齢化の影響で女性の割合も増えています。季節的に気をつけたいのは冬場ですが、夏でも脱水をきっかけに発症することがあります。

いつもと違う胸痛や胸の違和感があれば病院へ

 典型的な症状として、狭心症・心筋梗塞ともに胸痛が挙げられます。加えて胸部圧迫感、胸部絞扼感、胸部違和感、息切れ、息苦しさ、呼吸困難が出ることも。喉の詰まった感じや左肩の痛みという形で、胸部以外の症状が出現することもあるのでご注意を。また、高齢者や糖尿病の方に多く見られる「無症候性心筋虚血」の場合、冠動脈が詰まっているにも関わらず、自覚症状がないこともあります。  狭心症では、運動すると症状が現れ、休息をとると治まることがほとんどです。ただし症状が悪化して「不安定狭心症」に進行すると、徐々に運動できる時間が短くなったり、発作の頻度が増えたり、何もしていないのに発作が起こるなど、心筋梗塞に近い状態になるため、速やかな治療が必要となります。  一方、心筋梗塞の場合は狭心症よりも症状が強く、冷や汗などを伴うことも。約半数の方には狭心症のような前兆が現れますが、あとの半分は突然起こります。

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専門医による検査を経て薬物療法や手術で治療

 まず、心電図やレントゲン、超音波などによる検査を行い、狭心症が疑われる場合は運動をしながらの検査や、「心筋シンチグラフィ」という診断精度の高い核医学分野の検査で狭心症の有無を検査します。  またはCTを追加して、冠動脈の詰まりの程度や場所を確認する場合もあります。確定診断や治療のためには、血管造影が必要ですが、近年は、血管造影の際に同時に狭心症の状態を詳しくチェックする方法もあります。患者の体への負担を軽くできるように、患者さんの状態に合わせて検査を組み合わせます。  狭心症の治療法には、症状を緩和する薬物療法、経皮的冠動脈形成術(狭窄している冠動脈を血管内から広げる内科的手術)、および冠動脈バイパス手術(狭窄している冠動脈の先に、新たに血管をつなげる外科的手術)があります。  経皮的冠動脈形成術は外科的手術に比べ低侵襲で、手首や足の付け根の血管に挿入したカテーテルを通して、風船やステント(金属製の網)で冠動脈の狭窄部を広げます。どの治療法が適しているかはケースバイケースですので、主治医とご相談を。  いち早く冠動脈の閉塞を回復させる必要がある心筋梗塞の治療法としては、速やかな治療が可能な経皮的冠動脈形成術が有用です。

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コロナ禍で運動不足だったりリモートワークが続く人は生活習慣病に特に注意を。

感染症対策は万全です発作時はためらわずに病院へ

 狭心症にならないためには、生活習慣病を早期に見つけ、必要に応じ治療を行うことが大切です。禁煙や運動も取り入れましょう。  コロナ禍によりリモートワークが広がった昨年は特に、生活習慣病が悪化するケースが見られました。感染症への懸念から通院を控える動きもあったようですが、心血管病の治療は多くの場合、一刻を争います。症状が見られたらためらわずに受診してください。

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